本日、ヤマハスタジアムにてジュビロ磐田 名波浩新監督の就任会見が行われました。出席者のコメントは以下のとおりです。
■高比良 慶朗 代表取締役社長
「みなさん、こんにちは。本日は名波新監督の就任記者会見のお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日から名波新監督に指揮を執っていただくことになりましたので、ご報告いたします。
チーム状況としては大変厳しい状況ですが、この状況を承知の上で名波さんに受けていただき、また、来年以降もチームを何とか活性化させるために、かなり長い年月がかかるかもしれませんが、彼と共にこのチームを再建していきたいと考えております」
■加藤 久 ゼネラルマネジャー
「私どもの意図としては、社長が申し上げたことを繰り返すことになりますが、1年でJ1に復帰するジュビロの今年のミッションを何としても達成するんだという意志の表れだと思っていただきたいです。もう1つはこれも社長が申し上げたように、やはりクラブを抜本的に変えていかなければいけないという認識を現場だけではなく、会社、役員会を含めて持っていると。そういう中で育成を含めてクラブをもう一度活性化させるという強い意志の表れが、名波さんへのオファーになったと考えていただきたいと思います。こういう状況で残り9試合という中で、監督を引き受けるのはかなり勇気のいることだと思いますし、泥にまみれる覚悟、ジュビロというクラブへの愛情がなければ、おそらく引き受けることはなかなか難しいと思います。そこをあえて引き受けていただいたという“男気”のようなものも私は感じていますし、クラブとして全面的にサポートしていきます。
J2という状況の中でも、たくさんの方々がジュビロに声援を送ってくださっています。監督の名波さん、強化部長の服部(年宏)さんが全盛期だったころのジュビロをもう一度取り戻すべく、再スタートを切りたいと考えています」
■名波 浩 新監督
「みなさん、こんにちは。遠路はるばるお越しいただき、本当にありがとうございます。選手としての新加入会見。そして引退会見。それから監督就任会見と、この3回の会見に全ているお方も何人かいるようで、非常に僕としては心強く思っています。
ジュビロに関しては全てのことを把握していると自負していましたが、それでも、内情、非常に厳しい状況であると昨日より強く感じました。ちょっと余談ですが、大久保練習場の近くにセブン−イレブンができていたことを知らなかったです(笑)。そういった情報も入っていない中、この職務を引き受け、どこまで立て直せるか。どこまで強いチームを作り上げられるかは未知数です。それは監督として経験がないということが第一にあると思いますが、ただ、今の選手と一緒に素晴らしいサッカー、美しいサッカーを目指してやっていきたいという気持ちが非常に強いので、みなさんそこを見守っていただけたらと思います」
■質疑応答
Q:今のチームの印象は?
●名波浩監督
「やっているサッカーがこういうサッカーだという形があまり見えない中、前半戦はやはり相手選手がジュビロというものをリスペクトし過ぎてくれたので、だいぶ勝点を拾えたと思います。しかし、やはり2順目からが苦しい状況になっているのは形が見出せないとか、リーダー不在とかいろいろな要素があると思います。昨日スタッフと話した結果、勝ちたいとか、結果が出なかった時の立て直したいという気持ちが非常に薄いのではないかと。まずはそこをくすぐらなければいけないとは思います」
Q:引退セレモニーの時に、このヤマハスタジアムに帰ってきて、サックスブルーのユニフォームを常勝軍団に導くために戻ってくるといったお話をしていましたが、今回の就任において最も心を動かしたことはなんですか?
●名波浩監督
「やはり社長、それから加藤さんの熱意を感じましたし、クラブが危機的状況だということは選手側から聞いていた。自分の思うところ、この磐田でずっと生活してきて、自分がプレーしていた頃のようなああいったサッカーをとか、ああいうタイトルを、とは思いませんでしたが、今いる素材をどう料理するか具体的にイメージしつつあった。実際トレーニングしてみないと、実際コミュニケーションを取ってみないと、わからない部分もあると思いますが、そっちの魅力が非常に強かったですし、引き受けた一番の要因だと思います」
Q:これからどういったサッカー、どういったコンセプトで戦っていきたいか教えてください。
●名波浩監督
「長らくこのクラブに携わっていただいているメディアのみなさんはだいたい名波がどういうサッカーをやるか、どういうイメージでやるかはおわかりだと思います。そのサッカーを目指してやりたい。ただ、先ほども言いましたが、今いる素材は我々がプレーしてきた時とは違うものがあると思いますし、その個性、性格というのも全く違う色だと思うので、そこをどういうふうに触っていくかは自分の中の課題だと思います」
Q:現状、2位との勝点差は『8』ですが、そこを縮めていくために具体的にどういったサッカーでいくというお考えでしょうか?
●名波浩監督
「具体的なものというのは戦術論なのでなかなか難しいですが、ただ、負けることが大嫌いということはプロアスリートとして当たり前のことだと思う。その気持ち自体が選手たちに浸透していない感があると、昨日スタッフと話した時にみんなが口を揃えていたので、そこはしっかり選手に伝えたいなと。それと勝点3の重みとか、90分の重みというものをもっと強く感じさせなければいけないと思います。特にJ2だと、あと一歩とかボールへの執着心というものの差がトップのクラブだろうが、22位のクラブだろうが変わりなく強いものをやってきていると思うので。上がって当然だと思ってスタートした今季を考えると、今のこの順位とか、みんなのメンタリティーはこうなっても仕方がないのかなと感じています。残り9試合でそこを徹底してやらなければいけないことと、あとは走れていないことをどうするかと。それから攻撃のところも守備のところもボールへの執着心。点を取るんだ、ゴールを守るんだという単純明快なところをきっちりできるように声かけしていきたいと思います」
Q:さきほど長いスパンでというお話がありましたが、具体的な契約期間は?
●高比良慶朗代表取締役社長
「契約期間については複数年とお答えしたほうがいいと考えています。やはりチームを再建していくためには短い状況下では非常に難しいだろうと認識していますので、監督の活躍を見ながら、それがさらに長くなるのかどうかを踏まえて十分話し合いしながら進めていきたいと思います。
(Q:となると今季の結果にかかわらず、来季も指揮を執るということでしょうか?)
それはもちろんそうです」
Q:クラブのOBの方も名波さんの監督就任を喜んでいると思いますが、そのジュビロOBのみなさんの思いをどう受け止めていますか?また、現役時代たくさんの監督と出会ってきたと思いますが、もし今、名波さんが選手だったら“名波監督”には何を求めますか?
●名波浩監督
「OBの方々で言うと、何日か前にあるレストランに中山(雅史)さんを筆頭にたくさんの方々が集まっていただき、激励していただきました。それから今日の朝の武田(修宏)さんも含めてほとんどのOBの方から電話やメールをいただき『楽しみにしている』『頑張ってくれ』ということを言っていただきました。その期待の大きさもさることながら、みんなのジュビロへの気持ちはすごく大きなものなんだと改めて感じました。
…それからなんでしたっけ?(笑)
(Q:もし今名波さんが選手だったら“名波監督”には何を求めますか?)
どうですかね…。なんだろうな…。おいおいそういった肉付けをしていくとは思いますが、現状は選手とともにチームを作り上げていく。自分の考えを100%押しつけるのではなく、選手がやりたいサッカー、やりたいイメージを大事にしたいと思います。それから個性も伸ばしていかなければいけないだろうし。もっと言えば、若手の育成も必要だろうし。その中で自分の人への対応力とかそういったものが求められると思います。サッカー選手として人を見る目というものも、どちらかというと僕はここ数年そちら側(※メディア)にいた人間だったので、ピッチの上でそれをさらに磨かなければいけないと考えています」
Q:プラス面、マイナス面を含め、今季ここまでの総括をお願いします。
●加藤久ゼネラルマネジャー
「この場で過去のことを言うと、前監督のことに触れるような気もしますが。やはりジュビロが期待されているものはなにか。今3位ですが、昔のジュビロを知らない方にとってみれば3位でいいんじゃないかという見方もあるかもわかりません。ただ、ジュビロはそういうクラブではありません。求められるものが非常に高い中、今季もスタート時にはみなさんが1位でゴールすると期待していましたし、もちろん現場もそのつもりでした。私も外から見ていたジュビロと、中に入って実際に見たジュビロというところで評価は変わっていますし、そういったものを具体的に変えていく作業は前監督のシャムスカさんが悪戦苦闘しながらやってきたと思いますが、ここへ来てチーム力が安定しなかった。その1つはチーム作りのコンセプトだったり、あるいは戦術的なベースが、これは『なかった』というより『浸透』という部分です。監督によってやり方はありますが、浸透していなかった部分はあるので、戻るところがないということは結果の不安定さにつながっていると思います。もう1つ言えば、フィジカル的な問題もあります。そういったことも含めて、選手側のクオリティーの問題点と、試合での監督の采配、メンバー起用といったものがミックスした中、期待された結果が出ていなかったと思います。特に後半戦に関しては第3コーナーから加速しなければいけないところを逆に減速してしまった。その理由は先ほどのことが全てではありませんが、そういう部分があったと。今は第4コーナーに入りましたし、そこをもう一度きっちりやらなければいけないという判断の中、やはりチームの中のことをある程度わかる方、外から突然に来た方が理解するまでに時間が経過してしまうので、ここは名波さんしかいないという判断でお願いしました。また、彼の仲間、鈴木秀人コーチが真横にいる。それから服部年宏強化部長がいる。中のことに関しても、シーズンが始まってからのことも含めて、名波監督の心強い味方になってくれると思います。我々もいろいろ苦労したことは、これは根本的にどこをどう変えることがチームの成績アップにつながるかという部分、非常に本質的な問題です。白線の内側にいる選手たちのメンタリティーの問題だったり、そういったこともずっと議論してきましたが、その中で自分が一番感じたことは、この1年でこうなったのではないなと。今までの流れの中で今のチームがあると思いますので、ここから流れを変えるための1つ“決断”をしたと理解していただければと思います」
Q:厳しい状況だと思いますが、久々の現場復帰だと思います。喜び、高揚感は? また、メディアの立場でサッカーを見つつ、指導者ライセンスを取るなど様々な経験をされたと思いますが、その経験をどう生かしていきたいですか?
●名波浩監督
「全てが初ものづくしだとは思っていませんし、ピッチに立ってどう声を掛けていこうとか、スタッフミーティングや選手ミーティングでこうしていきたい、こういったことを言っていきたいというものも、その場で頭に浮かぶと思っているので、あまり心配はしていません。心配ごとは、監督って練習場に行く時にスパイクと履いていたかなと(笑)。それを心配して、スパイクが家になかったので急遽送ってもらったりして(笑)。そういったことくらいで、なるようになるという性格なので、何とかやっていけるのではないかと。あとは先ほどから社長や加藤さんも言っていますが、サポートする周りの体制を抜群に整えていただいたと思っているので、死にものぐるいで。僕のここ最近のモットーは『死ぬまでチャレンジャー』です。平凡に生きているよりも、人生を全うできたと思えると思うので。チャレンジャーという意味でも、このタイミングで、このクラブでということで決断しました。あとはそこへ向かってやっていきたいと思います」
Q:最初にクラブからオファーを受けた時の心境は? それと、この選手のここをさらに伸ばしていきたいという部分を教えてください。
●名波浩監督
「そうですね…。僕の中の“リトル・名波”が『お前行くところはわかっているだろう』と(笑)。『愚問だろう』と言ったんじゃないですかね(笑)。
あと、選手に関しては個人名を挙げたい選手はたくさんいますが、やはりまずはプロサッカー選手として90分戦うというものを確立させてあげたいなと。それは具体的には何かと言えば、なかなかここでは言いづらいですが、これは(加藤)久さんも服部強化部長、鈴木秀人コーチ、小林稔コーチ、イッカ、ブラジル人スタッフ含めて全員でサッカーを教えてあげたいなと。サッカーってこういう考えがあるだよと。厳しい時間帯、楽しいプレーとかそういったものを教えてあげたい。ただ、それは同時に我々も教わるものはたくさんあると思います。先ほど言ったように、チームを作り上げる上で選手とそういったものを共有しながらやっていきたいと思います」
Q:今日の練習は当初非公開でしたが、公開練習にした理由は?
●名波浩監督
「それはみなさんに来ていただけると思ったからですし、見れないよりも見たほうがいいですよね? それは今後もすごいことがない限り、非公開にするつもりはありません。ワールドカップを見ていてもオランダ代表あたりはずっと公開していて、セットプレーも全部見せてくれていたので、その必要はないかなと。それからメディアのみなさんもそうですし、サポーターのみなさんからもそうですが、選手たちは見られているという緊張感は感じると思いますし、見られていると感じながらプレーしてほしいと思います」
Q:サポーターへメッセージをお願いします。
●名波浩監督
「一体となり、今後チームが右肩上がりでレベルも順位も上がっていけるように頑張っていきたいと思います。その一体感というのは選手はもちろんフロント、サポーターが三位一体とならないと、と思いますし、少しの綻びでも相手に足元をすくわれる要因になると思います。実際、今の湘南だったり、J1の浦和だったり、J3の金沢だったりトップにいるクラブというのは三位一体感を表に出していると思いますし、それをお互いに感じながら、お互いにどうすればチームが強くなるかと思いながらやっていると思う。そういった思いは出してほしいなと。後押ししてほしいと思います」
Q:ジュビロはいわゆる黄金時代がありましたが、その後は衰退していた部分もあったと思います。このジュビロを名波さんはどのようにご覧になっていましたか?
●名波浩監督
「当時、タイトルはたくさん取っていたかもしれませんが、黄金時代と呼んでいただいたのは周りの方の判断であって、決して僕自身、やっている選手自身が強いとは思っていなかったわけですよね。2001年、2002年あたりは年間3敗。服部強化部長がよく言っていたのは『3敗“も”してしまった』と。そういうのが我々の持っていたメンタリティーだったと思います。勝つのは当然ですが、タイトルに対しては僕は固執しているわけではなく、現役時代から言っていましたが、常に優勝争いをするチーム。そういう意味ではJ2でまだ自動昇格の可能性が残っているし、少しの可能性があるのであれば、そこに手を伸ばして常にぶらさがっていられるようなチーム作りをしていきたいなと。それから社長がおっしゃった中長期的な考えでいくと、一番上のカテゴリーでいい結果、いい順位にずっといたいと思います。
それからこのクラブから移籍していった山田大記のような、将来性のある選手はまだまだたくさんいます。海外に出ていってほしいですし、代表選手がい続けなければいけないクラブだと思います。そういったことも含めて考えてやっていきたいと思います」
Q:フランス・ワールドカップに出たメンバーの中では、名波さんが山口素弘さん、秋田豊さん、相馬直樹さんに続いて監督になりました。このことについては?
●名波浩監督
「あのフランスのメンバーもほとんどの方から電話やメールをしていただき、その思いというか、我々の世代が出ていかなければいけないという思いを非常に強く感じました。彼らの思いも背負いながらと。それから現在監督やっている方々も勝負の世界にやっと入ってきたかと言っていただいたので、負けないように、そして自分らしさを出せるようにやっていきたいと思います」
以上
※後ほど質疑応答を追加します。