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【J1:第26節 川崎F vs 仙台】プレビュー:狙った結果を残すため、100%を出す試合が続く。残留を狙う仙台を迎え撃ち、勝点3を手にしたい(14.09.27)


これまでにも2ゴールまでは見てきた。昨季であれば7試合。今季も2試合で記録。ただ、川崎Fではハットトリックすることはなかった。記録を遡ると、C大阪の一員としてプレーしていた2004年に達成したのがプロでの唯一のもので、それが不思議で仕方なかった。ハットトリックの少なさについて何度か本人に聞いたことがあったが、その都度「2点取ったあと、『あいつ3点目狙ってる』と思われるのが嫌だから狙わない」などと話していて、おもしろいこだわりがあるのだと思っていた。そんな大久保嘉人が、23日に行われた第25節・大宮戦でハットトリックを決めた。チームメイトは、例えば大宮戦でJ1リーグ200試合出場を果たした田中裕介は「オレ、今日は絶対に取ると思ってました。絶対に取ると思ってました(笑)」と強調。練習でシュートを受けていた西部洋平も「練習からすごかったですし、自分でも調子がいいと話してた。今日はやってくれるかなと思ってましたが、まさか3点取るとは思いませんでした」と呆れ顔で振り返っていた。

今季のJ1でのハットトリック第1号となった大久保に話を聞くと「いつもは2点取ったらもういいかなと思って、ちょっと下がってゆっくりプレーするんですが、今日は試合中、絶対に取りに行こうとゴール前にいました」と述べて、意識して3点目を狙っていたのだと話す。そうやって狙って3ゴールを決められる理由として大きかったのが、体調の良さである。
「ずっと試合に出てたからね。ACLがあって、ワールドカップもあって、ほとんど休みがなかった。だからリフレッシュできたのが良かったです」と大久保。意図せず受けた2試合の出場停止ではあったが、結果的にそれが大久保に休息を与えた形となっていた。

前節の大宮戦では、あまりに体が動きすぎて、後半15分ごろには両足がつっていたと話すが、それでもお構いなしに金澤慎の粘り強い守備を振り切ってゴールをねじ込む3点目はまさに圧巻。中継の実況を担当していた下田恒幸氏は、3点目が決まった瞬間に思わず「すごーい!」と絶叫。そう言ってしまうだけのゴールだったが、試合後に両足がつっていた状態だったと聞いて、改めてすごさを思い知らされた。

昨季の得点王で、第25節終了時点でも、得点王争いのトップに立つ大久保は、そういう意味で「リーグ一(いち)、頼れる男」であると言っていい。ただし、3−1で勝てたこの試合を手放しで喜べないとも考える。
3点を奪った大宮戦は、3点とも大宮の守備陣系が整う前のゴールだった。例えば1点目は、大宮のパスミスをきっかけに始まったカウンターからのもの。2点目は素早いリスタートから隙を突いたもの。3点目は激しくピッチに打ち付けられた中村憲剛を心配してスタジアムが一時騒然とした直後で、大久保が一度プレーを切ったあと、大宮から返されたパスをシンプルに繋いだものだった。もちろん、これらの3得点に不満があるわけではない。ただ、マイボールの時間が長くなったあと、相手チームが守備ブロックを形成したあとにゴールを奪えていないことに一抹の不安を感じている。
その点について風間八宏監督に質問してみたが「みなさんが期待してくれて、厳しい目で見てくれるのはいいんですが、冷静に見たらそんなことはない。早い判断で抜いているだけ」と説明。ただし「それで満足ってことではない。まだまだ足りないし、もっともっとチャンスを作らないといけない」と話し、「(相手が)どういう守り方をしてくるのかではなくて、もっともっとチャンスを作らなければならない」と貪欲さを見せていた。

直接対決を終えている首位・浦和との勝点差は6のままであり、追いつき逆転するのは簡単ではない。ただ、狙ってハットトリックを決めた大久保のように「シーズンの残り9試合のすべてで勝点3を狙わなければならない」という強い気持ちを持ち、それを実行できれば可能性は出てくる。そして勝つための確率を少しでも高めるために、精度を上げて試合を進める必要がある。

そんな川崎Fが今節ホームに迎える仙台は監督交代を経験後、渡邉晋新監督の指揮のもと、残留を目標に苦しい戦いを続けている。現在の勝点は25にとどまっており14位に低迷。現在5連敗中と勝ち星を積み重ねられずにいる中、16位のC大阪が勝点23となっており、きわどい位置に立たされている。前節・鹿島戦では、上本大海と鎌田次郎がコントロールする最終ラインを高めに維持する一方、チーム全体がボールの取りどころを絞り切れておらず、簡単に最終ラインの裏を使われる傾向にあった。またDFとGKとの連携が取れていない場面も散見されており、危険な場面を自ら招いていた。鹿島戦は0−1の結果ではあったが、点差以上のピンチを招いていたのが気がかりである。

ただし、個々の選手を見ていくと、それなりにタレントが揃っており、歯車が1つでも噛み合うことで爆発力を秘めているのは間違いない。例えばボランチに入るであろう梁勇基はもちろん、サイドハーフとしてゲームを組み立てるはずの野沢拓也のテクニックにも警戒が必要だ。彼らからのパスを前線で待ち受ける赤嶺真吾やウイルソンも得点力を秘めたストライカーであり、侮ることはできない。また、優秀なキッカーを揃えたチームなだけに、ゴール前での不用意なファウルは慎まなければならないのは言うまでもない。

とは言え、前述のとおり仙台が最終ラインを高めに維持する強気の戦いをしてくれるのであれば、川崎Fにしてみれば望むところでもある。前線と中盤との連携があまり取れていない印象があり、プレスはそれほど厳しくはない。だからこそ、これをかいくぐり、ボールを前方に持ち出すことができればチャンスは広がるはずだ。大宮戦でハットトリックを決めた大久保を筆頭に、点を奪えるタレントには事欠かない川崎Fである。少しばかりけが人が出てはいるが、中村憲剛曰く「誰が出ても同じサッカーなのではなく、個々の個性を活かす土壌」ができている。何人かの入れ替わりがあるとしても、それほど大きな問題にはならないはずだ。
川崎Fは悲願の優勝に向け、全勝する意気込みで残りのシーズンを見据えつつ、目の前の試合に100%を出して臨むこととなる。相手の順位は関係なく、川崎Fにとって"勝たなければならない試合”を勝ち切ることができるのかどうか。残すわずかな戦いの日々の中、タイトルにふさわしいチームであるのかどうかが問われる試合が続くことになる。

以上

2014.09.26 Reported by 江藤高志
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