試合後の記者会見で岐阜のラモス瑠偉監督は「逆側(千葉)の選手がすごく気迫があった」と評した。そう感じさせたのは、千葉にはボールを奪ったらとにかくシンプルに前へ仕掛けようとするプレーが多かったからだろう。もちろん岐阜も前へと積極的に仕掛けてはいたが、千葉は岐阜がスカウティングした前節(第31節)よりも勝負を仕掛けることから逃げるような横パスがかなり減っていたことで、その印象が強まったはずだ。
前へのシンプルなプレーが千葉に増えたのは選手の意識付けもあるが、前節からのスタメン変更の影響も大きい。今節はダブルボランチにJ2リーグ戦のスタメンは第9節以来の佐藤勇人、今季のJ2リーグ戦初スタメンのナム スンウが入った。佐藤勇人はペナルティエリアへの飛び出しが持ち味で好調時はスルーパスを出す意識が高く、ボール扱いに独特のリズムを持つナム スンウはドリブルでボールを運ぶこともでき、積極的にミドルシュートを打つ。また、今節はトップ下にJ2リーグ戦のスタメンは第15節以来となる町田也真人が入った。町田はボールを持ち過ぎることなくダイレクトプレーでボールをさばくことができる。前述の3人は9月10日の天皇杯・ラウンド16で結果を出した選手だ。
だが、序盤に主導権を握ったのは岐阜だった。両チームともサイド攻撃が持ち味だが、特に岐阜の森勇介の攻め上がりが目立った。試合開始早々にオーバーラップでCKを得てヘニキのヘディングシュートという得点機があり、12分には森のクロスに右サイドから中に入ってきた太田圭輔が合わせる決定機があった。
しかし、サイドの攻防では岐阜が上回っていたものの、今節ではサイド深くに攻め入ることよりもシンプルに岐阜のディフェンスラインの裏のスペースを狙い続けた千葉の攻撃が15分に実る。佐藤勇人のパスをディフェンスラインの裏で受ける場面もあった山口慶が、この得点シーンではこぼれ球を拾った井出遥也からパスを受けると、ディフェンスラインの裏へパス。岐阜のマークが外れた隙を突いて飛び出し、パスを受けた町田は岐阜の守備陣とペナルティエリアに走りこんだ谷澤達也の動きを見て谷澤にパスを出す。岐阜のマークが外れてフリーになっていた谷澤がダイレクトシュートを決め、千葉が先制した。
相手の背後を突く攻撃で得点した千葉だが、この形を狙いすぎてボールを簡単に失い、岐阜に攻められる場面も多かった。また、今節のダブルボランチは「守備では中でもっと閉めて相手にアプローチをかけていくところは自分たちの課題」(佐藤勇人)というように、中盤で相手の攻撃の起点を潰し、ボールを奪う力に少し欠けていた。56分に益山司が警告2回で退場処分になり、数的不利になった分を補おうとしたか岐阜が圧力を高めると千葉が押し込まれる時間が長くなった。だが、最後までチーム全体で球際では体を張り、岐阜の高地系冶のFKなどの決定機にはGKの岡本昌弘が好守を見せて失点をゼロに抑えた。
岐阜はディフェンスラインの背後のケアは常に意識しながら、失点シーンで千葉の選手のマークが甘くなったのが響いた。シュート数は千葉の11本を上回る17本だったが、ゴールの枠を外れるものも多くて決定機は4回(後半は遠藤純輝の1回)くらい。数的不利になってから盛り返した前への推進力を終始発揮できなかったのが悔やまれる敗戦だった。
岐阜の森の攻め上がりは選手自らの判断で井出とポジションを入れ替えた谷澤が対応する修正力を見せた千葉だが、攻撃はもともと狙いの形に固執してしまう傾向が今節も出て、相手の背後を狙う形に偏って柔軟性を欠いた。カウンター攻撃のチャンスもランニングやパスのスピードと方向の判断ミスでフィニッシュまで行けないことが多かった。相手を完全に仕留める2点目、3点目を取りきる強さが試合を勝ちきる力として必要だ。
以上
2014.09.21 Reported by 赤沼圭子