対福岡戦に燃える男の闘志が伝わったバトル オブ 九州だった。
古巣との対戦に燃える末吉隼也を先発に起用し、伊藤大介とのインサイドハーフを選択した田坂和昭監督。その胸の内は「コンディションが良かったし、この試合に懸ける意気込みがあった」というものだった。戦術的にも、相手のキーマンに挙げていた中原秀人をマークさせ、前線へのパスの供給を遮断する役割もあった。
前半15分に林容平が伊藤のパスを受け、一人で切れ込み先制し幸先の良いスタートとなったが、アンカーの横の広大なスペースを使われ守る時間が長かった。ただ、それは想定内であって、どんなに攻撃されようと中央をしっかり固め弾き返した。
1点リードで迎えた後半途中に、システムを4−1−4−1から4−2−3−1に変更し、末吉をトップ下で起用する。「プロになってはじめてプレーしたポジション」(末吉)だったが、田坂監督に「変にポジションのことを考えるな。お前の良さはアプローチの早さと前に出て行くパワーだ」と指示され、迷いはなかった。1トップの伊佐耕平とともに前線からプレッシャーをかける。この2人のアグレッシブなプレーに導かれるように、最終ラインが高い位置をとり、狙いとしたショートカウンターが次々に発動した。58分には敵陣で伊佐がボールを奪い、こぼれ球を拾ったダニエルが持ち込み追加点を挙げる。その3分後にはペナルティエリア内で相手DFのクリアミスを拾った末吉がクロスを上げ、林が逆サイドから飛び込みゴールを決め勝負は決した。
試合後、「自分自身、決定的な場面で得点できなかった。5点、6点取れた試合だった」と末吉は反省の弁を口にしたが、「次につながる試合になった」と笑みを浮かべた。
大分は15試合ぶりの完封勝利で、新加入のダニエルがチームにフィットし、デビュー戦でゴールを決めるおまけつき。指揮官の采配もシステムをズバリ的中し、勢いに乗るにはこれ以上ない勝ち方をした。2年前に劇的な昇格を果たしたミラクルを起す薫りが漂い始めた。
一方、勝てばプレーオフ圏内6位に浮上する可能性のあった福岡だが、「負けるべくして負けた」との城後寿の言葉が全てだった。7分の堤俊輔のFKがバーに阻まれていなかったら違った状況になっていたかもしれないが、攻撃が単調だった。ボールを支配するも、中を固める相手に対し、どんなにクロスを放っても弾き返されるだけだった。前半だけで9本もCKを得たが、精度が低く、アイデアに乏しかった。
失点の場面も簡単なミスからによるもので、攻守で淡白だった。マリヤンプシュニク監督は、勝利へのポイントとして「クロスとシュートの質」を挙げた。16本のシュートを放ちながら0点では、そこに修正点を求めるのは当然だ。
ただ真の課題は別の部分に見出せる。大分はしっかり守備を固めながら隙を伺い、チャンスとみるや一気に攻撃のスイッチを入れた。押し込まれれば引かざるを得ないことを承知しカウンターを狙っていたし、押し込めばボールを動かし速攻と遅攻を使い分けた試合運びは、常に仕掛けた福岡とは対照的だった。
リーグ戦は残り10試合。首位の湘南の自動昇格はほぼ決定的だが、大分には残りひとつの自動昇格の椅子が、福岡にもJ1プレーオフ圏内の6位の可能性は十分にある。1試合で目まぐるしく順位が入れ替る混戦J2は、さらに面白くなりそうだ。
以上
2014.09.21 Reported by 柚野真也