浦和が3−4−2−1のフォーメーションで戦うのに対し、柏も3−4−2−1でシステムが噛み合うこと。その中で浦和がボールを握り、柏がブロックを作ってカウンターを狙うこと。試合の流れそのものは大方の予想通りだったのではないだろうか。
均衡を破ったのは浦和だった。FKのチャンスを得た柏木陽介が「ああいう集中していないところを突くのは非常に大事」と相手守備陣が気を抜いている隙を突いて右サイドへ大きく展開、フリーでボールを受けた平川忠亮がクロスを入れると、「リスタートの時点で走り込もうと思っていた」という那須大亮が後方から走り込んだ勢いのままヘッドで合わせ先制弾を叩き込んだ。
さらに浦和はその7分後、今度は流れるようなコンビネーションで追加点を奪う。槙野智章が左サイドからゴール前にフィードを送り、興梠慎三がボールを収めて李忠成へパス。李は中に持ち込む動きでマークを引きつけながらヒールで後ろに流すと、後方から走ってきた柏木がボールを拾い、ペナルティエリア内では飛び込んできた相手DFをドリブルでかわして左足を一閃。教科書に載せたいくらいの美しい連携でゴールを奪った。
その後も浦和の勢いは止まらない。お馴染みの5トップに対して相手DF5枚がマークにつくなか、浦和の選手たちは流動的にポジションを変えることで瞬間的なマークのズレを生み出し、そこに的確にボールを当てて敵陣深くへと侵入していった。
37分には柏木の右サイドへのミドルパスを興梠がダイレクトで折り返し、ファーサイドの李に決定機。そのわずか1分後にも小気味良いパスワークで中央突破を図ると、さらにその1分後にはオーバーラップした森脇良太のクロスから再び李がフリーでシュート。前半だけで3点、4点のリードを奪っていてもおかしくないくらい浦和はチャンスを量産した。
柏は内容的にも、スコア的にも苦しい戦いを強いられた。引いて守り、ボールを奪ったら縦にシンプルに入れるというパターンを繰り返したが、レアンドロをケガで欠いた影響もあり、前線にボールが収まらなかった。
それでも前半終了間際、体の強さが目立っていたドゥドゥのポストプレーから工藤壮人がファーサイドにクロスを入れると、その直前に巧みな動き出しでフリーになっていた高山薫がヘッドで1点を返した。「相手は前に入る動き、クロス対応には難があるというのはわかっていた」とは工藤の弁だが、まさにその弱点を突いた一撃だった。
柏としては大量リードを奪われていてもおかしくない展開のなかで1点差に詰め寄り、反撃ムードも高まったはずだった。だが、それも後半開始早々に吹き飛んでしまった。51分、GK菅野孝憲がペナルティエリア内で興梠を倒してしまい、イエローカード。菅野はすでに前半に遅延行為で警告を受けていたためレッドカードで退場に。PKも興梠にキッチリと決められてしまった。
ネルシーニョ監督が「試合が終わってしまいました」と嘆いたように、この時点で趨勢は決した。2点ビハインドで一人少ないという絶望的な状況に陥った柏は、それでも2回ほどチャンスを作ったが、83分にエドゥアルドが2枚目のイエローカードで2人目の退場者になり万事休す。終始優勢だった浦和は柏戦の連敗を3でストップし、リーグタイトルへの階段を一歩進んだ。
以上
2014.09.21 Reported by 神谷正明