前節のF東京戦は1−1のドローに終わった神戸だが、試合内容では相手を圧倒した。4−4−2のトップに入った田代有三の「相手DFラインを下げて、中盤にスペースを作ることを意識した」という動きが効き、ボールポゼッションに成功。課題だった両サイドを広く使った攻撃も冴え、安達亮監督は勝点1止まりを心底から悔しがった。順位は5位から6位に後退したものの、“頂点への光明”が見えた試合だったと言ってもいいだろう。
一方の清水は、前節の首位・浦和戦に1−4で敗れ、リーグ戦4試合勝利なし(1分3敗)という状況。13位に順位を落とし、J2降格圏内のC大阪(16位)とは勝点差わずか2になった。大榎克己監督の下、着実にチームビルディングは進むものの、浦和戦では完成形に近づきつつあるチームと発展途上のチームとの経験差が出たのは否めない。今節の神戸戦は、内容よりも結果が大切になりそうだ。
神戸と清水の今季の対戦成績(ヤマザキナビスコカップを含む)は、神戸の1勝1分でリード。だが、神戸の安達監督は「監督も替わって別のチームですし、システムもやり方も違うので」と過去の戦績を顧みることはない。田代も「清水はこの神戸戦に負けると(J2降格)危ないと思っているだろうし、必死で来ると思う」と警戒を寄せる。単純に選手層を見ても、スロベニア代表のノヴァコヴィッチや大前元紀、高木俊幸ら攻撃のタレントは豊富。神戸にとってはちょっとしたミスが勝敗を左右するかも知れない。
その視点で言うと、注目したいのが神戸の守護神・山本海人である。清水出身で2004年から2012年までの9年間を清水でプレーした彼にとっては、古巣の現状を複雑な気持ちで見つめているかも知れない。だが、今節の意気込みについて、彼はきっぱりとこう断言する。
「今、自分がいるチーム(神戸)がオレのチーム。それを見せつけて、最後まで集中を切らさずにやって勝ちたいですね」。
9月16日には、延々とバレーボールのレシーブをくり返す秘密特訓をこなした山本。「キツかったっす(笑)。でも(GKコーチのシジマールが)F東京戦を受けて、前に出る意識を植え付けようとしたと思うので、頑張って食らいつきました」と、清水戦に向けて自分を追い込んだ。もう一人の古巣対決となる枝村匠馬が契約の関係で出場できない分も、“清水の先輩”山本の活躍に期待したいところだ。
負ければ降格圏内に入る可能性がある清水との対戦はタフなゲームになると予想される。レシーブ特訓により研ぎすまされた山本のセーブが神戸を勝利へと導くに違いない。
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2014.09.19 Reported by 白井邦彦