9月15日(月)、今季リーグ戦を11試合残したところで、三浦泰年監督の解任、冨樫剛一新監督就任が発表されました。第31節終了時点で6勝9分16敗、勝点27、20位という成績をうけての今回の決断に、田村直也主将は「試合にも出ていたし、主将を任されていた立場としても、自分に責任がある」と、厳しい表情で語りました。それでも、「リーグ戦も続いていくし、ここで止まるわけにはいかない。冨樫さんを信じて、僕たち選手は、結果を求めて一戦一戦戦うだけ。残り試合、雰囲気含め、来年につながるように目の前の相手に全力で戦います」。気持ちを切り替え、しっかりと前を向いていました。
チームも16日(火)、新指揮官の下、初めての練習が行われました。14日のJ2第31節に出場しなかったメンバーは、15日に練習試合を行ったため、リカバリーに終始。全体的にも「軽めのメニュー」(冨樫監督)で初日の練習を終えました。ただ、その中でも早くも変化を見つけることができました。
まず、練習メニューです。冨樫監督自身も小学校6年生のスクール時からの育成組織出身だけあり、ヴェルディ・サッカーのベースともいえる、通称“鳥かご”と言われるボール回しにたっぷりと時間を割いていました。育成組織出身選手たちも「久しぶりに“ヴェルディらしいな”という感じがしました」と、口々に話していました。
また、練習中の雰囲気も大きく変わりました。就任前まで育成組織のトップである東京ヴェルディユースの監督だったこともあり、コーチとして共に戦ってきた菅原智コーチ(今後はユースチーム監督)はじめ、Jrユース監督、その他の各年代のコーチ陣も続々と練習を見に訪れ、中には手伝う場面も見られました。「違うカテゴリーのコーチたちが見に来たり、たくさん人のいる中で賑やかにサッカーをやる。これが本来のヴェルディだよね」と、平本一樹選手。J3降格圏内の21位と勝点4差という危機的状況下を抜け出すために、いま最も必要とされる雰囲気の刷新は期待して間違いなさそうです。なぜなら、もう1つその要因と言えるものがあるからです。それは、土肥洋一GKコーチの存在です。「彼が選手の時から(当時監督はトップチームコーチ)もそうだし、ユースの時GKコーチとして一緒にやって、本当に彼の遠慮のない意見が自分にとっては非常に力になっていた。今回こういうことになって、『土肥は絶対に一緒にやらせてほしい』と、会社に無理を聞いてもらいました」と、監督が全幅の信頼を置いているように、元日本代表であり、J1、J2 通算438試合出場GKの一言一言には、説得力があります。若いチームだけに、土肥コーチのような的確な“叱り役”の出現は、絶大な補強とも言えるのではないでしょうか。練習中も、現役時代と全く変わらぬ、誰よりも大きな声で「ナイス○○!!」など、フィールド選手のプレーに叱咤激励を送り、練習の雰囲気を盛り上げていました。「怖いけど(笑)、すごい影響力は大きいと思う」(平本)、「また尊敬できる先輩と一緒にやれて本当に嬉しい」(柴崎貴広)と現役時代に一緒にプレーした選手からの信頼も非常に厚いのです。
『監督交代』というのは、チームの現状を打破させるための最終手段だと筆者は捉えています。プラスの要素は、ある意味では当然のことと言えるのではないでしょうか。その一方で、経営が厳しい中、違約金を払ってでもクラブが下したこの決断に対し、それがどれだけチームの緊急事態であるのかを、選手たちは各々理解しなければならない。「クラブにとって、すごくすごく大きな決断をしてくれた。チーム全員が責任を感じて、J2に残留するのが使命。残り11試合、“男の見せどころ”だと思います」と、柴崎選手は頼もしい言葉を聞かせてくださいました。
「残り試合が少ないだけに、大きく変えるのは得策ではない」と、冨樫監督は語っていたものの、選手起用がクリアになることは確かでしょう。「チャンスだと思っています」と、柴崎、田中貴大らこれまで出場機会に恵まれなかった選手のモチベーションが上がっていることは言うまでもありません。逆に、「また0からやり直し」(安在和樹)と、これまでのレギュラー陣にとってはアピールのし直し。再度レギュラー奪取への意欲を燃やしています。
残り11試合での劇薬投与。柴崎選手の言う「男の見せどころ」に、ぜひとも期待したいと思います!
以上
2014.09.17 Reported by 上岡真里江