G大阪のJ1復帰イヤーの年の幕開けを盛り上げるには十分な相手、浦和をホーム・万博に迎えてのリーグ開幕戦。チケットはすでに全席種が完売になるなど、試合前からサッカーファンはもちろん、両サポーターの『開幕戦』への熱が伝わってくる状況だ。しかも同カードは、過去に何度もJ1で熾烈な優勝争いを繰り広げて来た歴史もある。両サポーターは日に日に気持ちの昂りを感じているのではないだろうか。
G大阪は開幕まで2週間を切った2月19日に、昨季のチーム得点王のFW宇佐美貴史が左足を痛めるアクシデント。今季よりMFからFW登録になり、長谷川健太監督からも「ゴールゲッター」として期待をよせられてきた宇佐美だけにチームにとっても痛い離脱となったが、昨季の前半戦も彼なしでの戦いを続けてきたと考えれば不安はない。また、左足首を痛めて別メニュー調整が続いていた大黒柱のMF遠藤保仁も27日の練習には完全合流を果たすなど好材料もある。その遠藤を含めて、先発を飾るメンバーの殆どが昨年を戦った顔ぶれだと考えても、攻守におけるコンビネーション面での不安はさほどないはずだ。いや、むしろ『長谷川ガンバ』も2年目に突入し、その戦術はより浸透していると言っていい。長谷川健太監督は言う。
「去年のこの時期よりも間違いなく、チームとしての仕上がりはいい。ケガ人が出たのは残念ですが、思い描いていた通りの状態で開幕を迎えることができる。J2からJ1へ、戦うステージは変わりましたが、昨年と変わらず、攻撃、守備の両方で安定した試合運びを心掛けつつ、うちのストロングである攻撃ではより、迫力をもった攻撃を仕掛けたい。」
ただし、1年ぶりのJ1ということには気を引き締め直す必要があるだろう。というのも、J2とJ1では明らかに試合のスピードや個のクオリティに差があるから。つまり、攻守両面において昨年はスムーズに実現できたことが、今季は同じようにいかないことも増えると予想すればこそ、開幕戦でも、いかに早い段階で試合の流れ、空気感に適応できるがポイントの1つになる。そのためにも、まずは攻守にバランスよく落ち着いて試合に入ることが求められそうだ。
「J2とは間違いなく、試合全体のスピード感や個のクオリティ、能力が違う。そのへんの感覚を取り戻すためにも、まずは10-15分間は身体でいろんなことを感じながら試合を進めたい。ただ、それは守りに入るということでは決してない。ホームだし、ガンバらしい前への勢いを示すことでうまく試合の流れを引き寄せたいと思う」(加地亮)。
浦和も3年目を迎えるペトロヴィッチ体制のもと、より成熟したチームとして開幕戦を迎えることになりそう。中でもMF柏木陽介を中心にした攻撃はJ1屈指とも言える迫力を備える。昨シーズン、チーム最多、自身最多の13ゴールを挙げた興梠慎三の得点力は相変わらずの安定感があるし、柏木から配給されるラストパスも正確で、相手を一気に窮地に立たせる鋭さを持つ。加えて今季から浦和のエースナンバー「9」を背負うFW原口元気や、今季新加入の李忠成、山田直輝、両サイドからは梅崎司や宇賀神友弥が鋭い仕掛けで攻撃を加速させるなど、控えメンバーを含めても圧巻の顔ぶれだ。ただ一方で守備に関しては3バックに脆さが感じられるのも事実。アウェイ戦とはいえ、相手の攻撃を受けにまわることが増えればより守備の脆さを露呈する結果になりかねないだけに、持ち前の攻撃力を前面に押し出した戦いで主導権を握りたい。
両者の過去の対戦成績に目をやると、リーグ戦ではG大阪が19勝8分17敗と勝ち越している。ただ冒頭にも書いた通り、今季はG大阪のJ1復帰イヤーだ。つまりはJ2から昇格してきたばかりのG大阪に、昨年のJ1でも上位争いを繰り広げた浦和が、そのプライドに賭けても簡単に引き下がるはずがない。そう考えても超満員のスタジアムで、見応えのある、熱い戦いを楽しめそうだ。
以上
2014.02.28 Reported by 高村美砂