徳島ヴォルティスを愛する方なら誰もが、クラブ史に輝くシーズンとなった今季のことをいつまでもきっと忘れないでしょう。選手たちが見せたリーグ後半の飛躍的な成長と強烈な巻き返し、プレーオフ争い大詰めでの驚くべきタフさや進出したプレーオフにおける最高の集中力、そして国立競技場のライトに照らされた彼らの弾けんばかりの笑顔など、全てを色褪せることのない歓喜の記憶として心に焼き付けておくはずだと思います。

ただ、Ｊ１昇格という眩しく華やかな出来事に湧く今だからこそ、そのような皆さんへひとつだけどうしてもお願いしたいことがあります。

長くクラブを見続けておられる方には、ひとつの勝利を挙げるのにも苦労していたあの数年前までのことを、今季の喜びで消してしまわぬようもう一度思い起こしてほしいのです。
近年からチームを見始めた方は、このＪ１昇格を機に過去、クラブにどれほど厳しい冬の時代があったのかを何かで見聞きしぜひ知ってもらいたいのです。

決して今季の偉業をより飾り立てるためではありません。『大きな苦しみを乗り越えて掴んだ栄光』などと美談めいた話を煽るつもりも全くありません。
しかし、勝ち取ったＪ１昇格は間違いなく、並でない茨の道を我慢強く歩んできた歴史があったからのものです。数え切れない数の悔しさを味わい、言い表せないほどの屈辱にまみれながらも、クラブが強くなるためにすべきこと、必要なものをひとつずつ学び、それを地道に積み上げてきた結果として手に出来たものなのです。

だから、これからも徳島ヴォルティスを愛し支えてくださる皆さんには、今季の素晴らしい思い出と並べてそうしたクラブの歴史も心に持っておいていただきたいと切に願います。そうしてくだされば必ず皆さんとクラブはこれまで以上に一体となって前進していけるに違いありませんし、そうした二人三脚がまた徳島の地に新たな喜びを呼び込んでくれることでしょう。

以上

2013.12.13 Reported by 松下英樹