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【J1:第33節 鳥栖 vs 浦和】レポート:豊田のハットトリックなどでリーグ戦4連勝を飾った鳥栖が、浦和の優勝の目を打ち砕く(13.12.01)

幾度となく大舞台を踏んだアクターでも、開演の幕が上がるときは緊張するという。
「最初から硬かった」とMF原口元気は感じていた。「目に見えないプレッシャー」(ペトロヴィッチ監督)が浦和の選手たちを覆っていたため、「自分たちのサッカーができなかった。運動量も球際のところも全てにおいて上回れることができなかった」(槙野智章)試合だった。あの数々のタイトルを取ったスター軍団の浦和でさえこのようになるのだから、優勝争いのプレッシャーは予想をはるかに超えるものなのだろう。

試合開始から、その浦和がボールをサイドに散らして主導権を握った。鳥栖陣内でボールを動かして鳥栖の守備のほころびを探していた。しかし、その状況を菊地直哉は冷静に見てとって、「ボールを(鳥栖ゴールから)遠くに置くことを意識して」DFラインをコントロールしていた。まず、最終ラインをそろえて浦和の選手が飛び込んでくるスペースを消す。両サイドDFを中に絞って、できるだけ浦和のボールをサイドに持って行かせていた。そして、ボールホルダーに対してプレッシャーをかけて縦のパスコースを消した。鳥栖のゴールを中心にしっかりと中を固めて、浦和のボール運びができるエリアを外に作ることで、浦和の攻撃を封じることができた。
その結果、10分過ぎには鳥栖が主導権を握っていた。「浦和は、クサビのパスが入ると(攻撃の)スイッチが入るので、入れさせないように」(菊地直哉)と全員で意識したことが勝因と言える。試合後に、最前線のFW池田圭が「今日は連動した守備ができた」と開口一番に語るほど、守備が機能していた。

「肉体的な面、精神的な面を整備することでよい試合ができた」と尹晶煥監督は勝因を語った。常日頃の練習から、狭いコートで少ないタッチ数でボールを動かし、早いプレッシャーの中でもボールを失わない練習を行っている成果が出たと筆者はみている。そして、試合前のミーティングで徹底した守備の意識を語ったのではないだろうか。2万人を超えるサポーターの大声援の中では、選手同士の声は通りにくい。日頃からの練習で培った連携がなければ、あれほどの統率がとれた守備はできないだろう。果敢に左サイドを駆け上がってきた槙野に「今シーズンで最も悪い内容」と言わしめたほど鳥栖の守備は堅かった。

それに加え、「試合に勝つためには運も必要」とペトロヴィッチ監督が言ったように、この日の鳥栖は全てがいい結果に結びついた。先制点は、FW池田圭のコースを変えたヘディングシュートがクロスバーに当たったが、ゴール前に詰めたMF早坂良太の前にこぼれた。4点目のFW豊田陽平のシュートも、MF金民友が放ったシュートがGK山岸範宏に当たり豊田の前にこぼれたものだった。逆に浦和は、MF柏木陽平のミドルシュート、FW興梠慎三のヘディングシュートはバーに弾かれて得点とはならなかった。確かに結果だけを見ると鳥栖に運が傾いたように見えるが、この日の鳥栖は運だけで勝利したわけではない。CKからのボールを練習通りに走り込んだ池田と詰めるべきところに詰めた早坂、しっかりと枠内を狙って強いシュートを放った金とゴール正面に走り込んだ豊田の動きなど、普段の練習から行ってきたことが出ただけのことである。
勝たなければ優勝の目が消える浦和。いつも以上にプレッシャーを感じていたのだろう。リーグ終盤に入って優勝を争っているチームと連続して対戦した鳥栖。第30節・C大阪戦、第32節・鹿島戦と勝利したことで自信と勢いがついているのだろう。今節の戦いは、技術以上に求められるものが多い試合でもあった。

今季のリーグ最終戦となったベストアメニティスタジアム。サガンブルーと赤に埋め尽くされた。早朝から入場待ちの列を作って、この対戦を楽しみにしていたサポーターも多かったそうだ。街には、試合を告知するポスターが貼られ、あちらこちらに鳥栖のフラッグが掲げてあった。JR鳥栖駅の職員も、レプリカシャツを着て盛り上げに一役を買っていた。アウェイ入口には、鳥栖高校書道部のウェルカムメッセージが貼られ、浦和サポーター(先着500名)には佐賀県産ブランドみかん『さが美人』がプレゼントされた。
クラブ関係者だけでなく、鳥栖の街をあげて試合を盛り上げていることを浦和サポーターも感じていただけたことだろう。

夢は追い続けないと消えてしまうもの。ゴールを目指さないと得点は生まれないのがサッカー。シュートを打つために激しく身体をぶつけ合いボールを奪い合うのである。相手があってからこそ戦えるのであり、ドラマが生まれるのである。相手にリスペクト、支えてくれる人にリスペクト、関係者にリスペクト、そして仲間にリスペクト。リスペクトが無ければ始まらないサッカー。サッカーに一番必要なものはリスペクトなのかもしれない。

以上

2013.12.01 Reported by サカクラゲン
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