本文へ移動

J’s GOALニュース

一覧へ

【J1:第32節 清水 vs 大宮】レポート:たくましいDFのJ初ゴールで清水が完封勝利。大宮は自分たちの時間帯も作ったが、なかなか泥沼を抜け出せず(13.11.24)

ホームの清水が開始早々でセットプレーから奪った1点を守り切って完封勝利。そうした事実だけを見ると、盛り上がりに欠けた試合という印象を受けるかもしれない。だが、サッカーではどんな試合でも、細かい駆け引きやドラマが各所でくり返されている。

富士山が非常によく見える澄んだ空気の中、立ち上がりは両チームとも集中力が高い入り方を見せた。ホームの清水は、大前元紀が先発出場したのがひとつのサプライズ。大前は、11/10(日)の川崎F戦で左膝と左足首を痛め、全治3週間と診断されていたが、そこから2週間も経たないうちのスピード復帰。もちろん、まだ万全な状態ではないが、「監督に使いたいと言われていて、途中から出ても最初から出ても変わらないので」と強行出場に踏み切ったのは、チーム内での彼の重要性と、彼自身のプロ意識の高さがうかがえる。
さらに清水は、杉山浩太のセンターバックを継続し、ヨン ア ピンを左サイドバックに回す新布陣をテスト。その影響で吉田豊が右サイドバックに移動し、石毛秀樹は久しぶりに前に上がって、右のワイドMFとしてスタートすることになった。

対する大宮は、出場停止のズラタンの代わりに誰がノヴァコヴィッチのパートナーになるかが注目されたが、小倉勉監督は187cmの長谷川悠を選択。その狙いは立ち上がりから表現され、前線の高さを生かしてシンプルに縦に速く攻める姿勢から清水ゴールに迫った。「ボールが縦に入って、収まってサイド等に展開できているときには良い形になっていた」(小倉監督)という意味では、けっして悪い入り方ではなかった。
だが、清水のほうも、冷静にその攻撃に対応し、自分たちはサイドの高木俊幸や石毛を生かしながら速く攻める形で自分たちのリズムを作っていく。そして開始7分、石毛が縦に飛び出した右からの攻撃で最初のCKを獲得。右からの大前の鋭いキックをニアに走り込んが平岡康裕が頭でゴール前に流し、そこに詰めたヨン ア ピンが押し込んで、早々に先制点を奪うことに成功した。ヨン ア ピンにとっては、これが来日3年目でのうれしい初ゴール。清水にとっては最高のスタートとなった。
一方、大宮のほうは、早い時間の失点がチームにとって大きな課題になっているが、今回もそれが再現されてしまった形。立ち上がりの集中力はけっして低いわけではなかったが、マークの確認が重要な最初のCKから失点してしまったのは非常に痛く、結果的に大宮にとっては最悪のスタートとなってしまった。

その後は、先制点でリズムをつかんだ清水のペースとなり、大宮はやや落ち着きを欠いてミスが多い展開に。狙いとしていた縦にボールを入れてからの攻撃も、長谷川がサイドに開きがちでノヴァコヴィッチとの距離が遠くなり、お互いに孤立するという逆効果を生み出してしまい、思うように機能しなかった。それでも、前半で大宮が左CKからの菊地光将のヘッドと、ノヴァコヴィッチの裏への飛び出しで2度決定機を作ったが、どちらもGK櫛引政敏の好セーブに阻まれた。

だが、後半に入ると、大宮が再びシンプルな縦への攻撃を修正して、自分たちのペースに持ち込んでいく。「後半は悠くん(長谷川)が真ん中でボールをキープしたり、(ロングボールに)競るように指示もあって、それで攻撃がうまくいったと思う」(チョ・ヨンチョル)という言葉通り、高さ・強さのある2トップが2人で競り合い、お互いにサポートし合うことでセカンドボールを拾える場面が多くなったことが大きかった。
逆に清水のほうは、そこからなかなかペースを奪い返せなかったことが残念なところ。後半16分には吉田に代えて、河井陽介を投入し(石毛が右サイドバックに下がる)、前線でボールをキープして時間を作ることはある程度できたが、ラドンチッチの不調もあって、そこから先が迫力不足だった。また、清水にとってもうひとつ残念だったのは、流れが良く、チャンスもあった前半のうちに追加点を奪えなかったこと。「前半で(追加点を)取ってしまえばもう少し(流れも)良くなるけど、余裕がなくなってきちゃうとこうなる」(杉山)という部分が、2点目を取れなかったことにつながった。

ただ、この試合での清水のDFラインは非常に安定感があり、杉山と平岡のセンターバック・コンビはお互いのカバーリングもうまくいっていて、劣勢になってもあまりやられる気がしなかったことも事実。最後の砦のGK櫛引も好セーブを連発し、リズムを取り戻した大宮にゴールを許すことなく、90分間シャットアウト。リーグ戦でのアイスタ6連勝を実現し、サポーターを喜ばせた。
ただ、試合前にゴトビ監督は、「ラスト3試合で結果以上に重要なのは、われわれがどういうサッカーをするかという内容の部分」と語っており、その意味ではけっして満足はできないゲーム。そこをどう評価するかで、この試合の印象も変わってくるが、ヨン ア ピンのサイドバックは攻撃面でもある程度機能し、彼自身も得点と守備の両面で貢献。最後尾からの杉山のビルドアップも効果的で、新しいDFラインに手応えが感じられたのは間違いなかった。

一方、これで8連敗となった大宮は、内容だけ考えれば勝ってもおかしくない戦いをしていたが、一度流れが悪くなったチームは、やはり運や巡り合わせも悪くなりがちだということを実感せざるをえない。泥沼に突っ込んでしまった足は、片足が抜けても、片足はより深く潜り込んで、なかなか抜けないもの。そこを抜け出すには何が必要なのか、簡単には答えは出ないが、サポーターとしては、あと残り2試合で何とか答えを見せてほしいところだ。

以上

2013.11.24 Reported by 前島芳雄
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

J.LEAGUE TITLE PARTNER

J.LEAGUE OFFICIAL BROADCASTING PARTNER

J.LEAGUE TOP PARTNERS

J.LEAGUE SUPPORTING COMPANIES

TOP