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【J1:第32節 浦和 vs 川崎F】レポート:重圧で浮足立った浦和。川崎Fは状況に応じた戦いぶりで突き放す(13.11.24)

浦和は川崎Fに1−3で敗れたが、戦い方は悪くなかった。特に前半は狙い通りの形を何度も作れていた。川崎Fは中盤逆三角形の4−3−3で挑んできたが、浦和はアンカーの稲本潤一の両脇にできるスペースを巧みに使い、2シャドーがバイタルエリアで起点になるという最も得意とする形でゴールに迫った。柏木陽介も「シャドーのところをうまく使いながら前に運べていた」と振り返っている。

ただ、浦和は内容、勝負云々の前に、すでに己に負けていた。競馬で言えば、完全な“入れ込み”状態。絶対に勝たないといけないという気持ちが強すぎて空回りしてしまい、ミスを連発した。
浦和がプレッシャーで平常心を失っていることは相手にも伝わっていた。大久保嘉人が「向こうは焦っていたね。前からプレスに行ったら、全部ミスしてくれるし、優勝がかかっているプレッシャーが絶対あると思うから、すごく焦っているなと思った。ヤマザキナビスコカップの時とは全然違った」と話せば、中村憲剛も「自分たちはプレッシャーがなかったし、向こうの方があったと思う。ところどころで細かなミスが多かった」と指摘する。

浦和の選手たちは明らかに浮き足立っていた。しかし、それでも彼らはミスを恐れず自分たちのスタイルを貫いた。後半、川崎Fは山本真希を1列下げ、ダブルボランチにしてバイタルエリアのフタを閉じていた。そのため、浦和は前半のように中央を簡単に使うことはできなくなったが、その代わりにサイドから攻撃を組み立てた。そして57分、槙野智章がゴールネットを揺らし、ついに同点に追いついた。

ところがそのわずか2分後、浦和はオウンゴールで再び川崎Fに勝ち越しを許す。せっかく追い上げムードが高まった直後だっただけに、この失点は非常に痛かった。事実上、この瞬間に勝敗は決したと言っても過言ではないだろう。勝つために2点が必要な浦和は当然、前がかりになる。そして早く点を取り返したいという気持ちは焦りを生み、プレーの精度を落としていく。もう、平常心など望むべくもない状態だった。

また、致し方ないとは言え、攻守のバランスが大きく崩れたことで、カウンターの格好の餌食となった。浦和は中央が川崎Fに封じられているため、サイドに人数をかけて仕掛けるしかない。そうなると真ん中には人がいない状況になる。それはカウンターの名手・中村にとってはおあつらえ向きの展開だった。
「後半はサイドから来るから、真ん中の3人が空いていた。井川にどんどん(ボールを)頂戴と話していた。そこに(大島)僚太とレナト、真希が絡んでくれて、ちょんちょんと出して抜けたら、嘉人がどフリーだった」
川崎Fは自陣でボールを持ったら中村に預け、そこからカウンターの繰り返しで何度も決定機を築いた。「あと4点は取れた」という中村の言葉は大げさではない。川崎Fの選手たちは得点王を狙う大久保を気遣ったプレーをして決定機を次々と潰していたが、それでも後半アディショナルタイム、ついに稲本から大久保に決定的なパスが通り、これをエースが決めて浦和にトドメを刺した。

浦和に足りなかったもの、それは勝者のメンタリティだ。この試合に限らず、勝たないといけない状況で浦和はことごとく躓いてきた。最後はそのツケが重圧となって選手の肩にのしかかり、押しつぶされた。浦和にとって今回の一戦は非常に苦い経験となった。しかし、こういった痛みも成長の糧になる。この苦しみを乗り越えていくことで、浦和はもっと強くなれるはずだ。
一方、川崎Fは選手たちが自分で考えて臨機応変に戦えることを示した。前半はアンカーの両脇を使われて押し込まれることが多かったが、その展開のなか、中村や稲本を中心に選手間で話し合ってダブルボランチにしようかどうか考えてもいたという。実際、状況によってはダブルボランチにして対応する場面も見られた。
結果的には、後半から指揮官の指示ではっきりとダブルボランチの形にしたが、カウンター狙いの戦い方は選手たちの判断で選択。中村が「常にボールを保持するのも大事だけど、相手があんなに出てきたら守ってカウンターもアリ」と言えば、風間八宏監督は「自分たちの判断でやった結果、1−3になった」と選手たちの自主的な姿勢を評価していた。選手が状況に応じた戦い方を判断できる、そこに伸びしろを感じさせた。

以上

2013.11.24 Reported by 神谷正明
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