元日恒例の国立決戦に向けて勝ち残った16チームが覇権を争う。決勝の舞台となる同会場が来年7月に改修されるため、現在の国立競技場で行われる決勝は今大会が最後。聖地に向けて今節も熱戦が期待できそうだ。
中立地の岡山で開催される柏対大分。2009年にJ2に降格した「同期」であるが、その後の4年間で進んだ道は大きく分かれた。圧倒的な強さで翌年のJ2を制した柏は、ご存知のとおり2010年にリーグ制覇を皮切りに毎年何らかのタイトルを奪う強豪と呼ばれるクラブにのし上がった。大分は脆弱なクラブ経営からの立て直しを図り、今季ようやくJ1に復帰。だが1年でのJ2降格を強いられ厳しい現状を突きつけられている。
今回は、前年度覇者であり、カップウィナーとなった柏に、大分が挑戦するという形式だ。前々日に岡山入りした柏と前日入りの大分。小さな部分ではあるがビッククラブの仲間入りを果たしたクラブと地方クラブの差を垣間見た。大分にとって大きく引き離された同期との距離を埋める戦いでもある。
現在主力に怪我人が続出している柏は満身創痍である。ただ、それでもヤマザキナビスコカップを制する地力が備わっている。堅い守備をベースに一瞬の隙をつく上手さは、ネルシーニョイズムが隅々までに浸透している証拠だ。
3バックと4バックを使い分け、相手により長所を消し、自らの長所を引き出す巧さも持ち合わせている。ヤマザキナビスコカップ決勝の浦和戦、前節の広島戦と力のあるチームを抑え込んでいる。今回は格下の大分が相手となり、これまでのように自陣に引いてブロックを作り、カウンターで得点というパターンは考えにくい。名将ネルシーニョが、どのようなプランを立てているのだろうか。システム同様にメンバーの組み合わせや位置関係のセッティングに注目したい。
一方の大分はすでにJ2降格が決まっているが、クラブ初の天皇杯ベスト8入りに向けてモチベーションは高い。前節のリーグ戦では、降格が決まって以降挑戦している4バックが機能せず崩壊。要因はセカンドボールへの対処であり、ラインコントロールがルーズになった点である。
今週はラインコントロールの再確認と、ボールの奪いどころの見極めに重点を置いた。後方から試合全体をコントロールする高木和道は「全ては10番(レアンドロ)からはじめるので注意したい」と相手エースを警戒するとともに、「天皇杯はモチベーションが全て」とメンタルの重要性を口にした。
天皇杯。負ければ終わりの一発勝負。先制点がポイントになることは言うまでもないが、スコアが動いたとき両指揮官の采配にも注目したい。ただ、「実際にプレーしているのも、ピッチで考えるのも選手」と高木が話したように、監督の戦術意図を理解し、目まぐるしく変化するピッチで臨機応変に戦える柔軟さがカギを握りそうだ。
以上
2013.11.15 Reported by 柚野真也