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【J1:第31節 柏 vs 広島】レポート:互いに手の内を知り尽くした者同士。各局面で繰り広げられた見応えのある攻防は、1−1のドローに終わる。(13.11.11)

双方とも守備意識が高く、切り替えと帰陣が早い。相手の攻撃のスピードを半減させ、詰まらせ、攻守が入れ替わると、今度はその逆の現象が起きる。前線の3枚、柏はクレオ、レアンドロ ドミンゲス、工藤壮人、広島は佐藤寿人、高萩洋次郎、石原直樹、この攻撃のユニットをそれぞれの3バックが見るという構図も同じだ。ブロック攻略のため、どう前線がムービングをして、中盤が効果的な縦パスを放つかの勝負になるが、中盤でキーになる柏の栗澤僚一、広島の青山敏弘、彼らに対しても、素早い寄せで縦パスを入れさせず、結局は手詰まりになり、バックパスで攻撃を再度作り直す。

ネルシーニョ監督が「相手の熟練度は我々より高く、前線のチームワークが優れている」と認める通り、今季からオプションの1つとして新たに3バックを取り入れた柏とは異なり、このシステムに関しては広島に一日の長がある。特に高萩のポジショニングは秀逸で、攻撃が手詰まりになると見るや、マッチアップする柏の3バックが捕まえづらい位置に降りて味方からボールを引き出し、攻撃の起点として存在感を発揮していく。
しかも、広島の両ウイングバックは右がミキッチ、左がファン ソッコと、2人もアグレッシブに仕掛けられる選手だ。対峙する柏のジョルジ ワグネルは突破系の選手ではないし、本来右のワイドを務めるキム チャンス、藤田優人は負傷欠場。したがって本来は攻撃的MFの太田徹郎が同ポジションを務めなければならず、サイドの攻防でも広島に優位性があった。手堅い試合展開ではあるものの、柏の怪我人の多さも相まって優勢なのは広島だった。

それでも柏の前線には、崩し切らなくてもこじ開けてしまう個の力がある。そこは広島守備陣も警戒していたらしく、塩谷司は「クレオに長いボールに入れて、そこで競らしてセカンドボールを拾ってくるのを警戒していた」と振り返った。ただ単に自陣でスペースを消すのではなく、クレオに当てた時の競り合い、そしてそのこぼれを狙うレアンドロ、工藤のマークを離さず、彼らを終始ケアする集中力は相当高かったと見える。

やや膠着気味にあった展開にアクセントを与えたのが両指揮官の采配だった。
まず先に動いたのは柏。後半途中から入った田中順也がサイドに流れ、時には低い位置にパスを受けに降ることで、新たなスペースが発生し、チーム全体の動きが活性化、ボール周りも格段に良くなる。74分の先制弾は、柏がリズムをつかみ始めた結果、敵陣で奪ったFKから生まれたものである。茨田陽生の入れたロングボールを谷口博之が落とし、こぼれ球を太田が詰めた。
一方の広島は、「相手の右サイドを突いてチャンスを作れると思っていた」(森保一監督)との意図から山岸智を投入。柏は3バック右にボランチが本職の谷口、右ウイングバックには攻撃的MFの太田と急造感は否めず、そこを狙い目として広島が突く。そして狙い通り、山岸の推進力は広島が押し返す要因となり、しかもその交代によってファン ソッコを3バック右にスライドさせたため、右からの圧力も強めた。その圧力が79分に実る。ミキッチ、高萩とつなぎ、最後はフリーの青山が見事なミドルシュートを突き刺す。柏からすれば、青山を離してしまったことは悔やまれるが、全体的に押し込まれ、さらにミキッチに対し2人がマークに行きながら、高萩へのパスを通された時点で勝負ありだったのかもしれない。

終盤は、優勝争いを繰り広げる広島と、そうではない柏との“モチベーションの差”が出てしまったようにも思える。「絶対に勝点3を奪いたい」。そんな気概に満ちた広島の猛攻を柏がなんとかしのぎ切り、試合は1−1で終了した。

互いに手の内を知り尽くした者同士の対戦は、「我々がやろうとしていること、レイソルがやろうとしていること、お互いが戦術的にもハードワークするという部分でも良さを出して良いゲームができた」と振り返った森保監督の言葉が試合の全容を物語る。相手の出方をどう対処し、自分たちがどう出ていくか。チーム戦術、グループ戦術など、局面の攻防全てに見応えがあり、奥の深い一戦だった。

リーグ戦では2分。ヤマザキナビスコカップでは1勝1敗。FUJI XEROX SUPER CUPは1−0で広島の勝利と、シーズンに渡って拮抗した勝負を繰り広げてきた両者。もし、“シーズン6度目”の対戦があるとすれば、それは元日の天皇杯決勝で実現することになる。タイトルの懸かった緊張感のあるファイナルというステージで、陣容が整った状態で対戦してみたい。広島というチームは、不思議とそう思わせてくれる。

以上

2013.11.11 Reported by 鈴木潤
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