2年ぶりに国立の舞台に舞い戻る。2011年、浦和は決勝まで進んだものの鹿島に敗れ、あと一歩のところで涙を飲んだ。「忘れ物を取りにいこう」。今、それが選手たちのなかで合言葉のようになっている。
前哨戦と言われた先月27日のリーグ戦では浦和が2ー1で勝利を収めたが、選手たちはすぐに気持ちを切り替えている。浦和はリーグ戦で出場停止だった興梠慎三と森脇良太が戻り、一方の柏はキャプテンの大谷秀和、橋本和が出場停止、レアンドロ ドミンゲスが復帰と両チームともメンバー編成が変わるため、今回はまた違うゲームになると考えた方がいい。槙野智章も「お互いメンバーが違うなかで戦うゲームなので、前のゲームは参考にならないと思う」と話す。
実際、浦和の場合、最前線に興梠がいるのといないのとではサッカーのクオリティが大きく変わってくる。柏木陽介が「誰が出ても同じサッカーができる」と話すように、今の浦和はレギュラー陣の誰かが抜けてもある程度穴を埋められるバランスのいい陣容になっているが、1トップのポジションだけは話が別だ。興梠と同じレベルでポストプレーをこなせる選手は残念ながら今のチームにはいない。いや、Jリーグ全体を見渡しても、あれほど安定感のあるポストプレーができる選手は限られている。
攻撃を組み立てていく上で1トップのポストプレーの質が重要な意味を持つ浦和にとって、興梠は唯一と言っていいほど代えの効かない存在だ。その興梠がいる布陣で柏に挑めるのはタイトルを狙う上で非常に心強いが、前哨戦をスタンドから観戦した興梠の感想がこれまた非常に頼もしい。あの試合では1トップの阪野豊史に対し、主に近藤直也が厳しく寄せていたが、興梠は「やりづらい選手と思っていない」と言い切る。柏に対する印象についても「個人としても苦手意識はない」と自信を覗かせる。
選手たちのタイトル奪取にかける意気込みは強い。自分たちのスタイルに自信と手応えを感じているからこそ「今のチームでタイトルを取りたい」という言葉がいろんな選手から出ている。ただ、そこには充実感から出てくるタイトルへの自然な欲求と同時に、選手によって異なる思いも含まれている。
興梠や那須大亮、森脇や関口訓充といった新加入組は、自分たちが移籍してきたことの意味を明確な形で証明したいと考えている。「1つでも多くのタイトルを取りたいという気持ちは、僕や那須さん、森脇やクニ君(関口)はみんな以上に強く持っている。浦和レッズに来てもらえてよかったと思ってもらいたいし、そういう意味でもこのタイトルは全力で取りにいきたい」と興梠は力を込める。
また、これまで魅力的なサッカーを指導してくれた監督に恩返しがしたいと願っている選手も少なくない。それは柏木や槙野、森脇といった“ミシャチルドレン”だけに限らない。控え組からスタートしてレギュラーをつかんだ宇賀神友弥もその1人だ。「監督は日本に来てからまだタイトルを取っていない。J2優勝しかないので、初めてのタイトル獲得に自分も貢献したい」と語気を強める。
浦和がヤマザキナビスコカップのタイトルを取ってからちょうど10年が経過した。鈴木啓太や平川忠亮など当時を知るメンバーも残っているが、多くのメンバーはその時のことを知らない。当時小学生だった原口元気は「そろそろ新しい浦和を作っていかないといけないし、その準備はできていると思う。また評価されるにはタイトルが必要」と自分たちの力で新たな時代を作ると意気込む。
思い起こせば、かつての黄金期は2003年のヤマザキナビスコカップ優勝から始まった。もう一度、そこから始めるのも悪くない。原口も「ミシャ(ペトロヴィッチ)のレッズになってここからもっと強くなっていくと思うけど、その足がかりになるタイトルになればいい。タイトルを取ってもう1度強いレッズを作っていきたい」と気合が入る。強いレッズの復活。そのために、まずはヤマザキナビスコカップをミシャレッズ1つ目のタイトルにする。
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2013.11.01 Reported by 神谷正明