先日の天皇杯3回戦岡山戦に勝利し、8戦続いた公式戦未勝利を食い止めた。その岡山戦でも課題が多く見受けられ、手放しで喜べる勝利ではなかったが、それでも「勝つことが一番の薬」と大谷秀和が話すように、これまで続いた悪い流れを断ち切り、チームも精神的に楽になったことだろう。
今回の甲府戦は天皇杯から中2日で迎えるが、水曜の試合ではジョルジ ワグネルを完全に休ませることができたのは大きい。また、若い山中亮輔が良い働きをして勝利に貢献し、韓国代表の遠征でチームを離れていたキム チャンスも復帰する。ポジティブな要素も多い。
対する甲府は現在15位。16位の湘南とはわずか勝点差5、残りの試合数を考えれば残留に向けては依然として予断は許さない状況だ。したがって必勝態勢で日立台に乗り込んでくることが予想される。「柏は過密日程のなか本当にタフな試合を続けながらもしっかり結果を出している。ヤマザキナビスコカップもファイナルに行く。リスペクトし過ぎてし過ぎるチームではない。万全の準備をして、100%の力でぶつかりたい」と話す城福浩監督の言葉からすると、第6節中銀スタの対戦で3−1と勝利したという油断は微塵も感じさせない。
前節の横浜FM戦のスコアレスドローについて、城福監督は「決定力のなさ」を課題に挙げたが、その一方で強力な横浜FMの攻撃陣を90分間封じ、完封した守備に関しては評価に値する。的確なスカウティングの下、相手の長所を巧みに消し、上記した「決定力」の部分でも攻撃陣には力のある選手は多い。
岡山戦後の会見で、ネルシーニョ監督は「今日の試合を含めて、甲府、浦和と2試合、広島と、同じシステムの相手との連戦が続くので、先のことも考えながらこのシステムで経験を積んでいく」と話しているとあって、おそらく柏は今回もまた3バックにして、各選手がマッチアップするミラーゲームで臨む可能性が高い。
となると、局面ではお互いに持ち味を打ち消す展開となり得るが、その1対1の部分で上回った方がゲームの主導権を握ると見て間違いない。その“1対1の優劣”が顕著に表れやすいのがサイドでの攻防である。特に甲府には突破力に長けた柏好文がおり、前線のジウシーニョも頻繁にサイドに流れ、サブには昨年まで柏所属の水野晃樹がいる。水野は今年元日、天皇杯優勝の報告会にてサポーターの前で移籍を伝え、「ここ(日立台)でゴールを決めたい」と言ってスタンドを苦笑いさせたが、彼個人としても古巣対決に燃えていることだろう。
柏が岡山戦で見せたような攻撃、例えばサイド攻撃自体は悪くなかったが、クロスやパスの質を欠き、際どいボールが全くと言っていいほどゴール前へ入らず、簡単にボールをロストするシーンが多ければ、守備陣がパーフェクトの出来で相手を抑え込んだ岡山戦と同じ展開になるとは思えない。
中村俊輔を置く横浜FMのように確固たる起点を置くわけではない柏は、甲府にとってもきっとつかみどころのない相手として映っているはずである。事実、大谷や栗澤僚一は黒子に徹しつつも、機を見て攻撃に加わるMFだ。だからこそ、よりサイドの攻防が勝負のポイントに反映されるのではないかと見ている。岡山戦で出場した藤田優人と橋本和が出場するのか、先日の好パフォーマンスを評価されて山中が出るのか、韓国代表から戻ったばかりのキム チャンスが入るのか定かではないものの、柏は天皇杯3回戦で露呈したばかりの課題を修正できるという姿を見せなければならない。それがヤマザキナビスコカップ決勝を含めた、今後の戦いにつながっていく。
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2013.10.18 Reported by 鈴木潤