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【J1:第26節 名古屋 vs F東京】レポート:異論の余地なきF東京の完勝劇。なすすべなく敗れた名古屋は泥沼の9月公式戦3連敗で上位戦線からまた一歩後退する結果に(13.09.22)

名古屋にとっては内容、結果ともに完敗を認めざるを得ない試合だった。攻めど守れど空転し、逆にF東京は11人ががっちりと噛み合ったサッカーを展開する。「うまく言葉が見つかりません。私たちが長い間理想としていた、やろうとしていたことが今日のピッチの上で見せられました」というF東京・ランコ ポポヴィッチ監督の感激混じりの言葉は真実そのもの。一切の誇張なしに、なすすべなく名古屋は敗戦の笛を聞いた。

始まってみれば、ミラーゲームとも言える一戦だった。4-4-2の名古屋に対し、F東京は4-2-3-1でスタート。しかし名古屋は玉田圭司が自由に動き回るため、実質的には4-2-3-1のようであり、ビルドアップの際にボランチの1枚がDFラインに下がってゲームメイクに参加する部分も共通。名古屋は中村直志が、F東京は高橋秀人が最終ラインの指揮者として振る舞った。そういう意味ではよく似たフォーメーションのチーム同士の対戦と言えたが、その機能性や連動性、そして個々の運動能力においては、名古屋とF東京には大きな隔たりがあった。それこそがこの完勝/完敗劇の源であったことは言うまでもない。

試合開始から名古屋のボール保持者に対し常に激しいプレッシングを敢行したF東京は、特に相手のビルドアップの中心地である最終ラインに絶え間なくプレッシャーをかけ続けた。際立った存在感を見せたのは34歳のベテラン、ルーカスだ。サイドハーフの位置から最前線へのフォアチェックを惜しまず、自陣に戻った後も運動量豊富にボールを追いかけた。ルーカスは攻撃に転じた際の急先鋒としても旺盛に走り回り、戦術眼溢れるプレーも披露。対面の田中隼磨を押し込み、名古屋の右サイドの攻撃力を半減させることにも成功した。

激しいプレッシングへの対応で名古屋は後手に回った。「相手もアグレッシブに前から来ていましたが、かと言ってウチがボールを支配できていなかったわけでもない」とは田口泰士の印象だが、「前半は最後のところが良くなかったと思うし、後半は最後のところにいくまでの過程が全然ダメだった」と続けた通り、前半はフィニッシュにおける工夫が足りず、F東京を攻めあぐねた。16分には玉田の献身的な守備から藤本淳吾がミドルシュートを放ち、そのシュートブロックで得たコーナーキックはこの日スタメンを勝ち取った牟田雄祐のシュートにつなげた。18分にはケネディのスルーパスでDF2人の間をすり抜けた玉田が得意のドリブル突破でゴールに迫ったが、これは権田修一の好セーブで逸機。32分にも中村のアーリークロスからケネディが競り勝ったが、これもゴールの枠を捉えることができなかった。名古屋のチャンスはどれも突発的なものばかりで、チームとして連動したものが少なかった。それが田口の言う「最後のところが良くない」部分であり、意図して崩しにかかったものはチャンスにつなげられなかったということの証明でもある。

その一方で、F東京は意図のある攻守で試合の支配力を時間経過とともに強めていた。前半で目立ったのは、裏のスペースを埋めようとする名古屋の守備システムを逆手に取り、積極的にミドルシュートを放ったこと。9分のルーカスと石川直宏を皮切りに、12分に高橋、14分には森重真人、29分には米本拓司が完璧なインターセプトから長めのループシュートを際どいコースへ送った。これだけバイタルエリアでF東京の選手たちが躍動したにも関わらず、名古屋はそのエリアへの対応が遅れ、38分にはついに失点。ルーカスの突破からバイタルエリアでパスを受けた長谷川アーリアジャスールが、見事なミドルシュートをゴール右に叩き込み、思惑通りの形でリードを奪った。

後半はさらにF東京ペースに。名古屋は後半開始から永井謙佑が投入されたが、やはり連動不足で思うような攻撃を構築できない。「攻撃のやり方がハッキリしなかった」とは永井の言。彼のスピードを活かすようなボールや、ケネディの高さをアドバンテージに変えるボールはついぞ送られず、どこから崩し、誰にフィニッシュさせるのかが曖昧なまま、名古屋は不透明な攻撃を繰り返し続けた。これにはF東京の選手も内心ほくそ笑んでいたに違いない。米本拓司は試合後にこう語っている。「守備の狙い通りの展開になりましたけど、思ったよりボールを蹴ってこなかった。もっとケネディ選手に高いボールを入れてこられた方が、逆にウチとしては嫌だった。(ロングボールを)蹴られた方が押し込まれて、僕らも後ろを向いて拾わないといけない状況になる。僕はそれも想定していたんですけど」。名古屋は72分のケネディの決定機以外に後半に見せ場を作ることはできなかった。

F東京はサイド、中央、セットプレーと様々な角度から名古屋のゴール前に迫り、守っても米本と高橋のボランチコンビを中心に緻密な守備網を形成。「後半は前線にパスを入れたらカウンターになっていた」(田口)と言うほど名古屋の攻撃を無効化した。そして88分には相手DFのミスからネマニャ ヴチチェヴィッチがボールを拾い、DFとの1対1を制して冷静にフィニッシュ。F東京は試合を支配し、ハーフの終わりに得点するという理想的なスコアリングで、2−0の完勝劇を無失点で完成させた。

「見ての通り、そして見ている人が感じている通りに僕らも感じています」
試合後「完璧に近い試合か?」との問いに、F東京の森重真人は淡々としながらも充実感たっぷりに答えた。確かにそれほどの試合だった。攻守の連動感と運動量、豊富な攻撃のアイデア。ストイコビッチ監督の言葉を借りるまでもなく、この日のF東京は類まれなる強さを誇示。順位も一気に5位にまで上昇させている。

頭が痛いのは名古屋だ。これでリーグ戦連敗、天皇杯を合わせれば公式戦3連敗で、9月はいまだ勝利がない。順位は変わらず10位のままだが、煮え切らない戦いにサポーターの怒りも爆発。試合後の大ブーイングはもちろんのこと、2失点目の瞬間に席を立つ観客が多数いたことが、試合内容の悪さを物語っている。楢崎正剛は「サッカーとはゴールを競う競技。そのためにどうパスを回して攻めるか、またどう守るかが重要なのですが、結局は最後の場面。ゴール前での差が結果に表れてしまう」と攻撃の低調ぶりを指摘する。ストイコビッチ監督は田中マルクス闘莉王とダニルソンの不在を嘆いたが、彼らが戻ってくれば解消するのかは未知数だ。次戦はJ最強の攻撃力を持つ川崎Fを迎え撃つ(9/28@瑞穂陸)が、このままでは再び劣勢の試合になることは必至。「しっかりと練習をこなして次の川崎F戦に備えていく」と指揮官は語った。試合後にはポポヴィッチ監督と話し込む姿も見られたが、なりふり構わずこれまで以上の綿密な備えを用意し、今季の瑞穂最終戦に臨んでほしいものだ。

以上

2013.09.22 Reported by 今井雄一朗
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