2012年からこのカードが見せるスリリングな展開は観る人を満足させてきた。ただし、1−1、2−2、2−2と未決着が続く。両クラブとも、そろそろ白黒つけたいところだろう。
J1リーグ2位の浦和は、ここに来て戦い方を変化させてきた。ビルドアップ時は、ボランチが下がって3バックの両脇はサイドへと張り出して前線の隙をうかがってくる。今までと同じ目線で対応しようとすれば、混乱を起こしてしまうだろう。このオートマティックな動きに対し、F東京は守備時にどこに付くかの素早い判断が求められる。
この変則的なビルドアップに対して米本拓司は「映像でも確認したけど、その場で相手と駆け引きをしながらボールを奪いたい」と言う。高橋秀人は「相手にボールを持たせず、保持する時間を長くすることを考えるべき。それと同時にカウンターの意識も持たないと」と語った。権田修一は、もっとシンプルな言い回しをした。「ピッチの横幅は変わらない。最低限、ボールサイドに人数を掛けていれば崩されることはない。状況に応じて、中を閉めるだとか、守備の原則的なところを崩さなければいい」。
一方でF東京は、今回もこの試合に向けて3バックと4バックの両方を準備し、状況に応じて変更させる予定だ。しかし、両クラブが見せる戦術的な面白さは、このカードを面白くしてきた一面でしかない。
ポポヴィッチ監督(F東京)は「すばらしい戦いができているのは互いが良さを引き出し合っているから。そこには、両チームのサポーターが最高の雰囲気をつくり出していることも関わっている」と語る。声援に後押しされた選手は最後まで足を動かし、体を張って目の前のボールを競うように争う。90分間は、熱気を帯びて気の緩みを認めない。その雰囲気が3試合続いた。
ポポヴィッチ監督は前回対戦の後、「いずれナショナルダービーと呼ばれてもおかしくない試合を続けている。ライバル関係というものは、試合内容がそのまま価値となる。それに相応しい姿を見せ続けることで本当の意味のダービーマッチへとなっていく」と語った。指揮官の言葉も、決して夢見がちではないかもしれない。だが、それも両者がリーグの覇権争いをする上で初めて成り立つということを忘れてはいけない。浦和は復権を果たし、首位と勝点1差の2位につけている。だが、F東京は10位でくすぶったままだ。青赤が現状を打破しない限り、これは数ある良いカードの一つでしかない。まずは、ここで白星を挙げて少しでもその差を埋めなければいけない。優勝を狙う浦和にとっても、躓いているわけにもいかないだろう。そんな背景など抜きにしても、この試合は必ず面白くなる。国立競技場へ足を運ぶ人に損はさせないだろう。
以上
2013.09.13 Reported by 馬場康平