松本山雅FCが『近い将来のJリーグ加盟』を謳い、活動を本格的にスタートさせたのは2005シーズンだ。その最初の一歩となった試合は、アルウィンではなく、その横のサブグラウンドで開催された。前半に2点先行しながらエンドの替わった後半に追いつかれ、2-2の痛すぎるドロー。実は筆者、その試合を観戦している。駆けだしの自称ライターで右も左も分からなかった自分だが、その道の険しさだけは理解し、思わず顔をしかめたものだった。――今節は、あれから100試合目のホーム開催試合となる。
アウェイ2連戦で連敗を喫したホームの松本にとって、100試合の今節は、色々な意味で重要な試合となる。まず取り戻したいのは“堅守”だ。安定感を取り戻しつつあった守備が、ここ2節で6失点。「うちは点を多くとれないチームなので、失点が多いと勝点はとれない」と反町康治監督もこの2節を良い意味で薬になったとあえて前向きにとらえ、「少なからずボケてきたところもあるので、手綱を締め直さないといけない」と、もう一度『自分たちらしいサッカー』とは何かを選手たちに問い直せば、その選手たちも「試合開始直後からどんどん前からプレッシャーをかけて、リズムを作れるようにしたい」(岩沼俊介)、「横浜FCの方が実力は上。自分たちはチャレンジャーらしいサッカーをしたい」(玉林睦実)と、この連敗のイメージを払拭しようと懸命だ。先週から練習参加を見合わせ、前節も欠場した野澤洋輔が腰椎椎間板ヘルニアで全治3カ月と公式発表されたことは痛手だが、白井裕人と村山智彦がゴールにカギをかける覚悟だ。
対するアウェイの横浜FCは、今シーズンここまで5勝8分7敗という状況だが、ここ3節負けなしと明らかに上昇傾向。フォーメーションはオーソドックスな4-4-2を採用する可能性が高く、大久保哲哉・黒津勝の前線で点をとれる選手、内田智也・寺田紳一・松下裕樹・佐藤謙介の技術に長けた選手たちがズラリと顔を並べる中盤は迫力満点だ。ドリブルで仕掛ける、決定的なパスを出す、ロングボールでのパワープレーなど得点に至るまでのパターンは豊富で、松本としては90分間通しての集中力と粘り強い守備は必須となろう。特にここ2節で突かれているサイドの守備についてはチーム全体で共有しておきたい問題だ。また言わずと知れた“キング”三浦知良や、2シーズン松本のユニフォームに袖を通した渡辺匠の出場に期待しているホームサポーターは多いはずだ。
これまでの歴史を振り返るイベントも多く企画されているが、注目は“レジェンド”の登場だ。柿本倫明(現・アンバサダー)や片山真人(現・ホームタウン担当)ら、このクラブの歴史を彩ってきた多くのスターがアルウィンのピッチへと帰還する。6シーズンの長きに渡ってチームを支え続けてきた“レジェンド”の名前がここに出てきていないのが不思議で仕方がないという個人的な感想はさておき、是非松本のファン・サポーターの皆さんには、この8年間の闘いの歴史に思いを馳せて欲しい。そのためにも必要なものは勝点3だ。
以上
2013.06.28 Reported by 多岐太宿