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【J2:第16節 札幌 vs 水戸】レポート:割り切ってアウェイの戦いに徹した水戸が虎の子の1点を守って勝利。札幌はまたしてもホームで白星を挙げることができず。(13.05.27)

「アウェイに来て、グラウンド状況がよくなくて、我々のやりたいパスサッカーは今日はできないということで割り切って、どんどんロングボールを入れてセカンドボールを拾って、前に出て行こうということで入りました」

試合後の会見で水戸の柱谷哲二監督はこのように振り返った。この日の札幌厚別公園競技場は前節の札幌−東京V戦時同様にピッチコンディションがベストではなく、アウェイということも重なって水戸はシンプルなサッカーに徹したわけである。

ホームチームも考え方は近かったようだ。今シーズンは試合終盤のパワープレー時にのみ前線に配置されていた長身の上原慎也を、この試合では1トップとして先発起用。「メンバー的に90分できるFWがいなかった」と財前恵一監督は要因のひとつを説明したが、ロングボールが多くなることを見越しての起用であることも間違いないだろう。

そうして始まった試合だが、主導権を握ったのは水戸のほう。
「ボランチの守備がセカンドボールを拾ったり、キーになるなということで石神(幸征)を上げて真ん中を固めようというプランでいきました」と柱谷監督が明かしたように、ロングボールと、そこからのセカンドボールがポイントになると考え、この日はサイドバックが本職である石神幸征を中盤の底に置き徹底してこぼれ球狙わせ、これが奏功した。

また水戸は、前線でプレーするFWの鈴木隆行と山村佑樹が相手ボール時にも積極的に走り回り、守備でも大きく貢献してみせた。札幌は基本的にはしっかりとパスをつないで攻めるスタイルのチームであり、大半の選手が足下でパスを受けてから次のプレーに移るのが好きなタイプ。センターバックや守備的MFの選手がボールを持った際には、攻撃を組み立てるべく2列目の砂川誠、荒野拓馬、岡本賢明といった攻撃的MFの選手がパスをもらおうと引いてくるのだが、そのタイミングで鈴木隆と山村がボール保持者に厳しくチェックに走り、アバウトなキックに逃げさせてしまう。札幌は自分達がイメージしていた以上に、ロングボールが多くなってしまっていたはずである。

そうすると、どれだけいい形で前線にロングボールが入ったとしても、2列目の選手がポジションを下げてしまっているため上原が孤立してしまい、こぼれ球もほとんどが水戸の選手の近くに転がることになる。そうしてゲームの流れを引き寄せた水戸は、27分に鈴木隆が自ら得たPKを決めて先制点も奪ってしまった。

後半に入ると札幌は選手交代で変化をつける。今シーズンはここまでホームで1勝しかできておらず、地元ファンを十分に喜ばせることができていない。そのためこの試合を前に財前監督は「内容よりも、結果を出したい」と話していた。狙うは同点、さらには逆転である。

最初のカードは荒野に代えてテクニックのある前田俊介の投入。この交代だけでは、ボールが中盤の頭上を越えていく局面が多いためあまり効果的ではなかったが、63分に負傷から復帰したキャプテンの河合竜二が中盤の底に送り込まれると、この選手の展開力から徐々にリズムが生まれてくる。そして77分に横野純貴を投入して上原との2トップの形にすると、相手のマークが分散されたおかげで前田にいい形でパスが届くようになり、多彩なアイデアから攻撃が活性化されていく。

だが、合わせるように水戸が行った選手交代もまた効果的だった。2トップを難波宏明、三島康平というフレッシュな選手に入れ替え、彼らにも守備に奔走させる。さらに終了間際には尾本敬も投入して5バック気味の布陣で自陣ゴール前をより固めてしまう。札幌にチャンスこそ作らせたものの、効果的なラストパスまでは出させず要所をシャットアウト。そしてそのまま、スコアを変化させることのないままタイムアップへと持ち込んだ。

勝った水戸のほうは「アウェイに来て勝つための努力を最大限にしようということを選手たちが示してくれた。内容は度外視」と柱谷監督が発したように、まずはアウェイゲームであること、そして難しいコンディションであったこと、PKという半ばアクシデント的な形で得点を奪えたことなどから、このゲームでは内容の部分はひとまず置いておき、勝点3だけを取ってしまうという割り切った戦い方を徹底し、見事に結果につなげてみせた。

一方で札幌のほうは、前線に長身の上原を配置してはいるものの、チームのスタイルとしてはポゼッションサッカーを目指しているし、ホームの観衆にはやはり自分達らしいゲームを見せたいと言う気持ちもどこかで出てしまうのだろう。そうしたこともあってシンプルに前線に蹴る場面と、つないで組み立てる場面とが中途半端に混在してしまっていたように感じてしまう。そこがひとつ、敗因にもなってしまったのではないだろうか。FWと2列目の選手のシュートが0本というのは、やはり痛い。怪我人が多いこともありメンバー構成も簡単ではなかったようだし、この試合については色々と難しい要素が多かったと言うべきかもしれない。しっかりと気持ちを切り替えて次戦に挑みたいところである。

次節、水戸はホームで神戸と、札幌は敵地で横浜FCと対戦する。6月1日、今シーズン初めての土曜日開催のゲームだ。

以上

2013.05.27 Reported by 斉藤宏則
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