結論から言うと、岐阜にとって勝てる試合を落とし、群馬は勝点1を拾ったゲームになった。ホーム・長良川競技場は岐阜の猛攻で何度も盛り上がったが、その歓声がピークに達することなく、90分間が過ぎて行った。

共に勝ち星がない両チーム。特に岐阜は2戦2敗、ノーゴールに6失点といいところがない状態。前節神戸戦での0-4の敗戦を受けて、チームミーティングをみっちりと行うなど、現状打破に向けて、改めてチーム内の意思統一を図った。
そして、この試合、岐阜は右サイドバックだった杉山新を右MFに置き、DF田中秀人を右サイドバックに配置した。この狙いを行徳浩二監督は、「デズモンドはボールに対していく力強さはある。でも、行くところと行かないところの使い分けが、後半になると少しずつズレて、食いついてスペースを空けてしまう。田中を右において、カバーをする役割にした。（杉山）新は動き出しが早い。攻撃だけでなく守備のスイッチも早いのでいい形でフォアチェックを掛けることが出来る」と説明した。

これまでの2戦。岐阜はサイドで高い位置を取れずに全体がずるずると下がって、攻撃に厚みが持てず、守備の時間が長くなったことで、最終的には相手の攻撃の前に失点をするパターンが多かった。さらにデズモンドと関田寛士の両CBが食いついた後のスペースを突かれるパターンが多く、より崩されるという悪循環に陥っていた。

かねてから「高い位置で奪って勝負をしたい」と言っていた行徳監督にとっては、守備ラインで固いブロックを作りながらも、サイドで高い位置をキープし、全体のラインを引き上げ、カウンターの際に複数が関われる土壌を作りたかった。それを攻撃力もあり、守備力も高い杉山を一枚前に置き、後方にCBでカバーリング能力に長けた田中を置くことで、杉山が気兼ねなく攻撃に注力できる土壌を作った。

この采配がズバリ的中した。前半立ち上がりから、井上平と美尾敦のツートップが動きながらボールを引き出すと、杉山を時にはレシーブ役に、時には仕掛け役に使いながら、右サイドを活性化させると、ボランチの益山司も積極的なビルドアップで高い位置で中継役となったことで、左サイドに移した染矢一樹の縦への突破をうまく活用できるようになり、左右両サイドから岐阜がテンポ良く攻撃を組み立てた。

試合の主導権を握った岐阜。この3試合で一番いい試合の入り方が出来た岐阜は、試合の主導権を握ったが、ゴールが遠かった。22分に井上が抜け出すがGK内藤圭佑に阻まれ、28分のMF益山司のミドルシュートは再びGK内藤がセーブ。39分には杉山がフォアチェックからボールを奪い、シュートを放つが、DFに当たり、こぼれを井上が狙うがバーの上。さらに40分にペナルティーエリア内から美尾が狙うが、これはGKの正面を突き、41分には再び美尾が放ったシュートは、ゴール右ポストに嫌われた。

0-0のまま迎えた後半も岐阜のペースは続いた。美尾と杉山、益山の3人にボールを集め、攻撃を構築していく。47分には杉山が右を破って抜け出すが、放ったシュートはDFのファインブロックに阻まれ、53分に美尾が中央から強烈ミドルを放つが、これもGK内藤に阻まれた。
再三の内藤の好セーブ。岐阜は彼を乗せてしまったことが痛かった。62分には美尾のスルーパスを左サイドで受けた染矢が、強烈なシュート。ゴール右上隅を正確に捉えたボールだったが、内藤が左手一本でスーパーセーブ。
終盤になっても攻め手を弱めない岐阜だったが、後半アディショナルタイムの猛攻もラストプレーに精度を欠き、最後の最後までゴールを奪い切れなかった。試合は0-0のドロー決着。岐阜は今季初の勝点を手にしたが、シュート13本を放ちながら、3試合連続ノーゴール。組織としてちぐはぐな群馬を尻目に、イニシアチブを握り続けた岐阜。岐阜にとっては完全に勝ちゲームであったが、勝点2を落とした形となった。

ため息に包まれた長良川競技場。内容は今後に明るい光をもたらしたのは事実だが、ゴールと勝点3が取れなかったのも事実。双方を受け止め、岐阜は次なるアウェイ戦（3/20vs愛媛）に挑まなければならない。対する群馬も3試合連続引き分けは、負けなしという事実と、勝ちなしの事実の双方を受け止めないといけない。

ポジティブに捉える部分と危機感を抱くべき部分。双方を含蓄した0-0のドロー決着は、両チームの今後に向けられたメッセージでもある。

以上

2013.03.18 Reported by 安藤隆人