FUJI XEROX SUPER CUP終了後、指宿キャンプから取り組んできた新システムは、AFCチャンピオンズリーグの貴州人和対策であることが記者会見でのネルシーニョ監督の言葉によって判明した。

貴州人和はアタッカーが強烈である。昨年対戦した広州恒大も攻撃と守備とがはっきりしており、攻撃は全て前線のタレント４人の個の力に任せていたことを考えれば、もちろんスタイルこそ異なれど同じ中国スーパーリーグのクラブとあって、類似した点も数多くあると見ている。かつてマンチェスター・シティでも活躍した超攻撃型サイドバックの孫継海（Sun Jihai）をはじめ、ボスニア・ヘルツェゴビナ代表のＭＦズヴェズダン・ミシモヴィッチ、FWズラタン・ムスリモヴィッチ、スピード感溢れるサイドアタッカー于海（Yu Hai）を擁する攻撃的なチーム、それが貴州人和だ。そこに近藤直也、増嶋竜也、鈴木大輔、対人にも空中戦にも強い３枚のDFを並べ、同時に彼らのビルドアップ能力を生かし、攻守両面において、チームの新境地を切り開こうとしたネルシーニョ監督の意図は十分に理解できる。

ところが、ちばぎんカップ、FUJI XEROX SUPER CUPとも、３バックシステムは機能不全に陥り、柏の選手のコンディションの悪さと相まって、そのパフォーマンスは本来の柏の姿とは程遠いものとなってしまった。唯一の光明と言えば、ちばぎんカップよりFUJI XEROX SUPER CUPのほうが守備面において収穫が見られたことぐらいか。ただし、もし貴州人和が個の能力を前面に押し出すスタイルで来るのだとしたら、相手の守備陣形を崩すことにかけてはＪリーグナンバーワンの広島よりはずっと組みやすく、１対１の局面や空中戦で近藤、増嶋、鈴木の対人の強さが存分に発揮される可能性は高い。

現時点で３バックシステムを成功させる鍵は、ボランチと１トップにある。
攻撃に推進力を持たせたいのなら、茨田陽生や谷口博之の起用も考えられるが、ダブルボランチは大谷秀和、栗澤僚一がベターだ。後ろ３枚のDFは対人には強くとも、まだ２試合しかこなしていないためマークの受け渡しなど連携面ではどうしても綻びが生じやすい。実際にFUJI XEROX SUPER CUPの佐藤寿人のスーパーボレーも、３枚の大外のスペースを突かれたものだった。キム・チャンスとジョルジ・ワグネルの攻め上がった裏には３バック特有のスペースが空くが、リスク管理を徹底し、危険な箇所をケアできる気の利くボランチは、間違いなく存在感を発揮するはずだ。

そうなると懸念されるのが、大谷が「手詰まりになった」と語っていた攻撃面だ。３バックとダブルボランチの計５枚が守備的になると、当然のことながら攻撃に割く枚数は減る。したがって、そこは運動量の多い田中順也の抜擢が鍵となる。「引き出すポイントがひとつ増えることで、工藤もレアンドロもボールをもらえるようになるし、ボランチ２枚もラインを上げられる」（田中）。FUJI XEROX SUPER CUPでは、前線に張り付き気味だったクレオから田中に代わると、田中は積極的に手前のスペースに降り、縦のクサビを受け、それを２シャドーのレアンドロ・ドミンゲス、工藤壮人に落とすことで攻撃を活性化させた。クレオのブレイクは柏のアジア初制覇には不可欠な要素だが、現時点のコンディションの良さと、周囲との連携では田中に一日の長がある。
ボランチ２枚が最終ラインに降りながらうまくビルドアップし、１トップがボールを引き出して２シャドーと両ウイングバックの特長を最大限に生かす。３バックで戦うイメージは、FUJI XEROX SUPER CUPのラスト１０分間で見せたあの一連のプレーだ。

昨年はFUJI XEROX SUPER CUP終了後、アウェイで迎えたACL初戦でブリーラムに敗れ、その悪しき流れをＪリーグにまで引きずってしまった感があった。逆に、今年は何としても白星を手土産に、勝って柏へ帰ろう。

以上

2013.02.26 Reported by 鈴木潤