ザスパクサツ群馬の秋葉忠宏新監督が掲げるテーマは「世界基準」だ。37歳の若き指揮官は「香川真司(マンチェスターU)も乾貴士(フランクフルト)もかつてはJ2でプレーしていたし、J2と世界は決して遠い場所ではない」と、選手に“世界”を意識させながらトレーニングに励む。そんな群馬にとって世界を知る知将ランコ・ポポヴィッチ率いるFC東京は願ってもない相手。失うものは何もない。新生・群馬がFC東京相手にアクションサッカーでバトルを挑む。
まさにゼロからのスタートだった。1月15日に始動した群馬は、同26日に北関東の宿敵・栃木と練習試合を行った。今季15人の新加入選手が加わりメンバーもシステムも固定していない中での試合だったが、栃木に7発をぶち込まれて0−7の大敗。うなだれる選手を前に秋葉監督は「これが今の現実だ。ここから何ができるか、お前たちの力をみせてほしい」と語りかけ、本格的なチーム作りをスタートさせた。
環境面でもハンデを背負っていた。緊縮財政を余儀なくされるクラブは今季、8年連続で行っていた宮崎キャンプを中止、2泊3日の千葉キャンプへと変更した。それでも秋葉監督はへこたれなかった。「長旅や長期滞在のストレスがないと考えれば、コンデション作りがしやすい」とポジティブに捉えて練習に励んだ。そして千葉キャンプを経てアクションサッカーの土台となる〈3−4−2−1〉の新システムを確立させた。群馬は2月3日に東京V、同15日に横浜FMとテストマッチを行ったがいずれも敵地への遠征。プレシーズンマッチFC東京戦は、新生群馬の正田スタ「初陣」となる。
群馬に胸を貸す形となるFC東京はランコ・ポポヴィッチ監督の2シーズン目となる。昨季はリーグ中盤戦まで上位グループにつけたが主力にケガ人が重なりシーズン終盤は失速。10位という不本意な成績でシーズンを終えた。ただパスサッカーを貫く姿勢にブレはなく、目指すスタイルは確立させた。ポポヴィッチ体制2年目となる今季は、成熟したチームの姿をみせてくれることだろう。
FC東京の高橋秀人は、群馬県の名門・前橋商出身。高橋にとってFC東京がJ2に在籍した2011年以来の正田スタとなるが、メンバーに帯同すれば日本代表選手として初の故郷凱旋となる。また今月15日にはイングランド・サウサンプトンから期限付き移籍した李忠成がチームに合流、開幕へ向けてチームのムードも高まっている。そのほかロンドン五輪代表の東慶悟も加わり戦力は確実にアップ、タイトルを狙うチームがJ2クラブ相手にどんなパフォーマンスをみせるか注目だ。
群馬は、FC東京の胸を借りて力を試す。秋葉監督が追求するスタイルと、ポポヴィッチ監督のサッカーは共通する部分も多い。22日のJリーグキックオフカンファレンスに出席したポポヴィッチ監督は「パススタイルを追求し結果を残すことは、世界的にみても難しいことは間違いない。ただ日本人に合ったスタイルだと確信しているので、そのメッセージだ」と今季も信念を貫くことを示した。開幕へ向けて気持ち昂る秋葉監督は「開幕前にFC東京と対戦できるのはチームにとって大きい。正田スタでのチームお披露目となるので、アグレッシブなサッカーをみせたい」と真っ向勝負を挑む。群馬は、FC東京とスタイルをぶつけあうことで世界との“距離”を確認する。
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2013.02.23 Reported by 伊藤寿学