2013シーズン開幕まで2週間となった。新潟も東京Ｖも、開幕戦を見据えた最終調整段階としてこの試合を非常に重要視していることは言うまでもない。始動日からキャンプを経て、ここまで培ってきたそれぞれのサッカーの現在地はどのあたりなのか。結果はもちろんだが、それ以上に内容に注目だ。自分たちのストロングポイントと現時点での課題がはっきりと浮かんで見える、意義深い一戦となることを期待したい。

新潟は、静岡での一次キャンプに引き続き、高知での二次キャンプも順調に消化し、チーム作りを進められているようだ。昨シーズンの成績からも、今季の最大テーマが“得点力”であることは明白だろう。リーグワースト2位の総得点数をいかにして上げていくかが、上位浮上の重要なファクターとなる。
その意味では、高知入りしてから行われたカマタマーレ讃岐（ＪＦＬ）、高知大との練習試合では、６−０、１１−３と、それぞれ大量得点を奪えており、今季の攻撃面における意識の高さをが伺える。特に好調なのがブルーノ ロペスだ。この2試合とも複数得点を挙げており、今季エースとしての存在感をアピールしている。だが、他のFW陣も決して黙ってはいない。今季補強の目玉となった新加入の田中達也をはじめ、川又堅碁、岡本英也、鈴木武蔵と、それぞれ猛烈アピールを続けており、得点力向上は大いに期待できそうだ。中でも注目したいのは、川又だ。昨季、期限付き移籍したJ２岡山で18得点を記録。阿部拓馬（当時東京Ｖ）と並ぶ得点ランク2位に輝き、大成を果たして戻ってきた。ステージをJ１へ移し、どこまで成長を見せられるか。今季非常に楽しみな存在と言えるのではないだろうか。JFLチーム、大学生チームを相手に大勝を続けてきた新潟が、J１昇格を本気で目指すJ２東京Ｖを相手にさらにゴールを量産できるのか。熾烈なFWの定位置争いという点は、大きな見どころの１つとなるだろう。

一方、リーグ屈指の守備力誇るDFラインだが、鈴木大輔、石川直樹の抜けた両センターバックをいかに埋めるかが鍵を握りそうだ。ただ、濱田水輝 、金根煥といった能力の高いセンターバックをしっかりと獲得できており、大きな戦力ダウンとはならないだろう。さらに、どちらもセットプレーにも強く、得点も大いに期待できそうだ。

対する東京Ｖは、キャンプインして1週間でのゲームとなる。新潟と比べると合宿そのものの日数としては浅いが、東京でも「こっち（東京）での練習が合宿のようなメニュー」だと三浦泰年新監督は語り、始動日から22日間オフなし、7試合の練習試合を含む、キャンプさながらのトレーニングを積んできた。

今季の注目は、まず何といっても新しく就任した三浦監督だろう。昨季まで率いた同じJ２北九州では、全体が運動量豊富に動き回り、流動的かつボールを大事につないで前に運んでいく流動的なサッカーを披露し、多くのファンの支持を得た。だが、「決してギラヴァンツ北九州でやっていたことが私の目標ではないということだけは伝えておかなければいけないと思います」と、新体制発表でも語っており、新天地では、東京Ｖの選手たちと“ヴェルディならでは”のサッカー確立を目指している。

監督だけではなく、選手も17人が新加入と顔ぶれが大きく変わっているだけに、メンバー構成もフラットな状態から始まった。その中で、実戦を通してさまざまな要素を試し、見極めながら、徐々に形が見えつつあるが、指揮官が「たくさんあるよねぇ」と、組み合わせの選択肢の多さに嬉しい悲鳴をあげるのが、攻撃陣である。高原直泰、常盤聡、安田晃大、中島翔哉、前田直輝ら新加入組に加え、巻誠一郎、南秀仁といったポテンシャルの高い選手もケガから復帰し、さらに違ったタイプの個性派が揃った。豊富なバリエーションの中での三浦監督の選択が実に楽しみだ。

2月5日に行った、浦和（J１）とのTMでは、3-6の大敗を喫した。練習試合とはいえ、6失点に「今の自分たちとの差を思い知った」と、高原はじめ選手たちもショックの色は隠しきれなかったが、それでも「悔しさは強いけれど、しっかり受け止めてポジティブに捉えて、この経験を生かしていきたい」とも高原は言う。その浦和と同じJ１チームの新潟を相手に、同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。進歩を示す意味でも、課題の１つとされる守備を全員できっちりとやりきりたい。

両者チームとも、開幕戦へ向けた１つの方向性が示されることは間違いないだろう。「J1でプレーし続けるチーム。リーグの順位では1つでも上」（柳下正明監督）を目指す新潟と、“ヴェルディらしい”サッカーを構築し、『J１昇格』目指す東京Ｖ。そのチーム作りの過程を、存分に楽しみたい。

以上

2013.02.15 Reported by 上岡真里江