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【J2:第6節 町田 vs 東京V】プレビュー:草の根から日本サッカーを支えた両クラブが迎える新たなステージ。それが“東京クラシック”(12.04.01)

東京ヴェルディは日本サッカーの先達である。J2に上がったばかりの町田にとって、カズやラモス瑠偉を擁して日本サッカーに覇を唱えたヴェルディは比較にならない名門だ。

しかしそれは大人の話に限られる。草の根に目をやると両者はライバルで、「東京クラシック」と銘打たれる理由もそこにある。ゼルビアは小学生、中学生の強化チームであるFC町田にルーツを持つクラブ。“エフマチ”は多くのJリーガーを輩出し、クラブユース選手権、高円宮杯といった全国大会でも好成績を収めた歴史がある。町田市は他にも町田JFCという強豪クラブがあり、「育成では負けない」ことが、少年サッカーの街のプライドだった。

酒井良選手は1977年生まれで、戸田和幸選手とFC町田の同期。92年には冬の全国大会(高円宮杯U-15)で四強に進んだ世代である。彼は「当時はヴェルディを読売と言っていましたけれど、お洒落な格好をして試合に来ていましたね。でも僕らは、サッカーなら絶対に負けないぞという気持ちを持っていました」とライバル意識を振り返る。FC町田は都大会、関東大会で“ヨミウリ”を下している。小針清允、佐伯直哉ら後のJリーガーを何人も擁する強敵に、町田はまったく引けを取らなかった。

ただFC町田には「次のステップ」がなかった。酒井は「彼らがユースに上がって行くのを見ながら、僕らは別々の道に進まなければいけなかった」と悔いる。町田出身のJリーガーは40人を超すが、桐光や桐蔭、麻布大渕野辺といった近隣自治体のチームで育った選手ばかりだ。更に近年はヴェルディ以外のみならずJリーグのアカデミーが伸張していて、人材が以前より早い時期から“流出”する現状もある。酒井選手は昨年までスクールのコーチも務めていたが「小学3、4年くらいで、特別に優秀な子はヴェルディへ移っていく。快く送り出しますけど…」と言う。

しかしこれからは違うだろう。FC町田の出身者を中核にしたゼルビアはJリーグへ入会し、ヴェルディと同じ舞台に立った。両クラブは同じ東京にホームタウンを置き、お互いの練習場である小野路とよみうりランドは小田急線で「4駅」の距離しかない。鈴木崇文選手は「ここで負けちゃうと、お客さんも付きにくい。やれるんだというところを証明したい」と語り、酒井選手も「勝つことで育成も充実してくる。そういう部分も含めて負けられない」と述べる。

公式戦の対戦は2010年9月5日の天皇杯以来だ。前回は当時JFLの町田が、1-0でヴェルディを下している。今季の町田は2勝3敗で現在13位、一方ヴェルディは3勝1分け1敗で4位と好調だ。前線、中盤に技巧派を揃え、つないで崩してくるスタイルは今も昔も不変。加えて川勝良一監督が根付かせたハードワークが特長となる。美しく、激しい試合になるだろう。

「今まで築き上げてきたものは、ヴェルディが数段上」と語る太田康介選手をはじめ、町田の各選手にはヴェルディというクラブに対するリスペクトがある。ただし“10000ゴールゲッター”の平本一樹選手は別で、「ヴェルディの方が格上で、胸を借りるみたいな感じは許せない」と意地を見せる。昨年までヴェルディでプレーし、人生初のヴェルディ戦を迎える彼だが、躊躇は全くない。

ヴェルディは一昨年まで町田でプレーしていたCB深津康太選手の先発が予想される。当時は同じアパートに住み、今も電話で連絡を取るというFW勝又慶典選手は、「上が強くて速さもある。普通に行ったら強いので、逆を取りたい」と策を練る。「深津さんのところから崩したい」(鈴木崇文選手)、「康太さんは抜けますよ」(北井佑季選手)と抱負を見せるアタッカーもいる。

町田は守備陣に負傷者が相次いでいる。京都戦では2選手が負傷により交代し、平本一樹選手をFWからCBに下げる緊急対応を強いられた。アルディレス監督は28日のトレーニングマッチで下田光平、津田和樹らをCBで試し、備えを図っている。

東京都4部から20年かけて積み上げてきたFC町田ゼルビアは、当時の日本最強クラブにようやく追いついた。ヴェルディの選手、サポーターに「追われている」実感はまだないだろう。しかし町田にはヴェルディへの想いと覚悟がある。クラブが町田に根付き、発展するため、ヴェルディという壁を乗り越えねばならない。

以上
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