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【J1:第3節 神戸 vs F東京】レポート:F東京のムービングは封印したが…。神戸、痛い黒星(12.03.25)

おそらく、この試合を観た人の大半がこう感じているだろう。
“神戸が内容で勝ち、試合に負けた”と。

F東京のランコ ポポヴィッチ監督も「結果は満足している。選手たちの戦う姿勢、諦めない気持ち、勝利への執着心も満足している。ただ、我々のこれまでの試合内容から考えれば、満足できない部分もあるし、我々の本来の力からすれば100%満足な試合ではない」と、内容では神戸が上回っていたことを示唆した。梶山陽平も「(内容はとにかく)結果を出せたことは大きいと思う」と振り返る。2−0で勝ったチームから、こういう感想が出ている以上、神戸が主導権を握ったゲームだったのは間違いない事実である。

だが、本当にそうだったのか。

前半の立ち上がり約3分間は、F東京が人もボールも動くムービングサッカーを披露した。だが、神戸の吉田孝行、大久保嘉人が前線から鋭いプレッシングを仕掛け続けると、徐々にペースは神戸へ。寄せの早さとサイドを切る上手さを持つ吉田が復帰したことで、野沢拓也がボールを奪うシーンが何度もみられた。野沢、大久保、吉田を軸に、サイドへの展開や二次攻撃へと絡め、気持ちいいほどパスも回った。前半10分過ぎには、野沢から右へ流れた大久保へスルーパスが通り、大久保の中央への折返しを吉田がボレーシュートする決定機もあった。前半約30分間は、完全に神戸のペースだったと言えるだろう。

しかし、前半32分。神戸のセットプレーからF東京がカウンターを仕掛け、梶山から左へ流れたルーカスへ、ルーカスが相手DFとGKの間を抜ける速いセンタリングを逆サイドの石川直宏へ通すと、これを石川が「ボールが速かったので、面を作って当てれば入るなと思った」と丁寧にゴールへ流し込んだ。その後も流れは神戸にあったものの、先制点を取ったことで落ち着いたF東京が1点リードを守って前半を折り返す。

後半も神戸が主導権を握る展開。センターバックの北本久仁衛が負傷でピッチを後にしたが、伊野波雅彦と高木和道のセンターバックコンビが機能し、ボランチの三原雅俊がF東京の中盤をつぶした。守備からの攻撃もうまく連動し、再三に渡って同点のチャンスも作った。だが、最後のフィニッシュが決まらない。後半16分には、吉田に代え都倉賢を投入し、パワープレーでゴールを奪いにいく。後半41分にF東京の長谷川アーリアジャスールがこの試合2枚目のイエローカードで退場した後は、数的優位を生かした神戸が右サイドバックの近藤岳登やセンターバックの高木が前線に残って分厚い攻めをみせた。
アディショナルタイムには、ポポヴィッチ監督が何度も自分の左手首を逆手の人差し指でたたき、まだ試合は終わらないのかと主審にアピールをしていたのを横目に、大久保がペナルティエリア内で倒されてPKになるかならないかという微妙なシーンもあった。
追いつける。そんな予感が漂った90+6分。ゴールを決めたのは、F東京のGK権田修一からロングフィードを受けた渡邉千真だった。これで神戸は万事休す。無情のホイッスルがホームズスタジアム神戸に響いた。

試合後、神戸の吉田は「内容的にもウチが主導権を握っていたので、勝たないといけなかった」と語り、野沢は「勝てたのに…」と悔しさをにじませた。
ただ、大久保は全く違う見解を持っていた。「(攻めの形は良かった?)いや、形なんか無かった。自分がボールを持って前につなげようと思ったら、周りの味方が動いていない。あれでは、ドリブルで仕掛けるスペースもできない。自分が4人の相手DFを引きつけて前に出せばチャンスになるのに。相手4人で守られたら、シュートを撃つしかないからね。今日は、前にボールを出して、勝手に行っておいでみたいな感じの試合だった」。確かに、大久保が前線で相手DFに囲まれてミドルシュートを撃たされているシーンが何度かあった。あと数秒、周りのサポートが早ければ…という場面があったのも確かである。

もちろん、神戸にとっては次へつながる好材料が多かったゲームだったが、公式記録によるシュート本数は両チームともに8本。ミックスゾーンに現れた大久保の険しい表情から判断しても、単純に“神戸が内容で勝ち、試合に負けた”で片付けられる試合ではなかったと言えるかも知れない。

以上

2012.03.25 Reported by 白井邦彦
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