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4シーズンぶりとなるJ1の舞台での戦いに挑む札幌。本拠地、札幌ドームで行う開幕戦の相手は昨シーズン8位の磐田。「スタートダッシュがやはり重要になる」と石崎信弘監督が語るように、札幌にとってのこの試合は単なる34分の1では決してない。多くの意味を持ったオープニングゲームである。「100%の力を出し切ってすべての試合を戦い、そこで初めて(降格圏外である)15位以上に入れるかどうか。今シーズンはそういう戦いになると思う」と中山雅史が言う。第1節にして総力戦。もちろん次節以降も同じこと。札幌はそうした戦いを、この磐田戦を皮切りにスタートさせることになる。
「ウチにはG大阪などのように、2点取られても3点取り返すといったような攻撃力はない。だから、まずはディフェンスが重要になる」。シーズン開幕を目前に石崎監督は開幕戦を含め今シーズンのチームコンセプトを明かした。
J1昇格を果たした昨シーズンもチームの武器は堅守。チーム全員で粘り強く相手ボールにプレスを仕掛け、自陣ゴール前でも徹底的に体を張る。その中で生まれた数少ないチャンスを着実にモノにして勝ち上がってきた。ただし、今度の舞台はトップリーグのJ1である。昨シーズンと同じやり方がそのまま通用するほど甘い場所ではない。そのため、指揮官はこうも付け加える。
「相手ボールの時は、昨シーズンよりももう1〜2歩深いプレスを仕掛けなければいけない。また、J1ではミドルシュートの質も高い。体を張って守るDFラインも、J2の時よりも高く設定する必要がある。1人対1人では分が悪い場面が多くなるだろうから、できるだけ数的優位を作りながら守っていかなければいけない」
昨シーズン築き上げた堅守をベースとし、ディティールをJ1仕様にする。それが今シーズンの札幌の武器となる、新たな堅守のコンセプトだ。DFラインの中心は、アカデミーからトップ昇格を果たしてプロ1年目となる奈良竜樹と、F東京から加入したオーストラリア代表のジェイド・ノースが組むことになりそうだが、この2人の連係もカギとなることは間違いない。
攻撃に目を向けると、軸になるのは1トップでの起用が予想される前田俊介だ。この前田は独特のリズムでパスをさばき、トリッキーなボールコントロールで決定機を演出する個性派のアタッカー。キャンプ途中までは周囲との連係が不十分な場面が目立ったが、ここにきて「周りの選手が前田の感覚に追いつけるようになってきた」と石崎監督。得点源の内村圭宏が「いい感じのタイミングでパスを出してくれる」と言えば、若手のホープである古田寛幸も「相手が予想できないパスをくれるので、ちょっとしたプレーから一気に決定機に持ち込むことができる」と称賛する。
昨シーズン以上の組織的な守備と、前田を軸としたアイデア豊富な攻撃。この2つがどのように結びついていくのか。ここが、今シーズンの札幌を見る上での最大のポイントと言っていいだろう。
そして、この磐田戦の焦点となりそうなのは、やはりディフェンスだろう。相手には「日本人ナンバーワンのFW」(石崎監督)と評される前田遼一がいるが、この選手に対してグループでどのような守備網を構築するか。ペク・ソンドン、駒野友一といったハイレベルなサイドアタッカーに対し、どれだけ粘り強く対応することができるか。ロドリゴ・ソウトを軸に中盤からテンポよくパスを動かせる磐田にボールを支配される時間帯は多くなるだろうが、そこをいかに耐え凌ぐかがポイントとなる。
また、札幌ドームで戦えるホームアドバンテージをどれだけ作り出せるかという部分もカギとなりそう。指揮官は「昨シーズン最終戦(F東京戦)の勢いのまま、開幕戦に挑みたい」と声高に発する。そのためにはやはり、多くのサポーターの声援が必要だ。
3万9千人超だった昨シーズン最終戦以上の雰囲気を作るためにも、北海道内のフットボールファンはぜひともスタジアムで、そしてテレビの前で熱い声援を送ってほしい。
厳しく、そして楽しいシーズンが、いよいよ始まろうとしている。
以上
2012.03.09 Reported by 斉藤宏則