1月1日(日)第91回天皇杯 決勝 京都 vs F東京(14:00KICK OFF/国立)
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クラブが、産声を上げる直前の1997年。33歳の青年監督が、JFL所属の東京ガスFCを鹿島との天皇杯準決勝へと導いた。格上のJリーグクラブを次々と破ると、勢いに乗って一気に駆け上がっていった。F東京の前身である東京ガスFCが、憧憬の的であった国立霞ヶ丘競技場に足を踏み入れたのはこのときが初めてだった。「何より試合前の深川に、たくさんの報道陣や、ファンの人が来てくれたことにビックリしたことを今でも覚えている」と、鈴木徳彦前強化部長は振り返った。
倉又寿雄FC東京U-18監督は当時、コーチとして大熊清監督の隣にいた。「憧れの場所で、鹿島とできるということでみんなモチベーションも高かった。あいつ(大熊監督)はとにかく勝負強かったよね。長く一緒にやってきたけど、一発勝負の怖さが分かっているからね」と、話す。しかし、勢いは続かず、初進出した準決勝では鹿島に3−1で敗れた。
様々な経験を経て、大熊監督は、自身3度目の準決勝となった今年、14年ぶりにクラブの歴史を塗り替えて見せた。「感慨深いね。やっぱり俺もうれしいよ。勇退も決まってこれが最後の大会となる。それでも、次のチームへと繋げるために、ACLを目指してきた、本当に頭が下がる」と、倉又監督は続けた。
そして、舞台は整った。J2制覇に続く、今季二冠を目指し、元日の東京・国立にF東京が初めて立つ。ただ、相手は、大木武監督率いる京都。一筋縄にはいかない相手だ。今季は、アウェイで4−1、ホームでは6−1と大勝を収めているが、選手たちは「まったく別のチーム」だと声を揃える。DF森重真人は「サッカーは大きく変わっているわけではないが、完成度が違う」と言った。京都はリーグ序盤に躓いたが、狭いエリアに人数をかけて細かくパスを繋ぐ独特のサッカースタイルを追求してきた。FW宮吉、久保をはじめ、若い才能が芽吹き、チームはリーグ戦終盤にかけて急成長を果たした。大熊監督はその京都から「信念を曲げない姿勢の大切さを教わった」と言う。人とボールが自在に絡むパスワークは、東京にとっては脅威だ。ただ、東京が追求してきたサッカーもまた、最終ラインからの丁寧なビルドアップがベースとなっている。互いにボールを大切にする姿勢が前提となっているだけに、ミドルサードでのポゼッションゲームは、このゲーム最大の見所となるだろう。
この試合、最後に勝負を分けるのは、やはり勝利欲しかない。気持ちの強さが、転がるボールを引き入れる。MF梶山陽平は「いつも言われてきた、球際のところだったり、気持ちの部分の細かいところが勝負を分ける。だからこそ、気持ちの部分が大切になる」と、語った。高橋秀人は「満員の国立でプレーしたことがない。一秒、一秒、一瞬、一瞬まで楽しみたい」と言う。
再任から1年3ヶ月、厳しく叫び続けた男は「楽しんで欲しい」という言葉を最後に選んだ。
「隙を作らなかったり、やるべきことと、やっちゃいけないことは伝えると思う。でも、選手たちには、雰囲気を楽しんでイキイキやって欲しい」
2012年。笑い初めは、『ホーム国立』から。ただ、厳しく選手に接してきた男が流す歓喜の涙を少し見てみたい気もする。それに、拍手とともに、「サンキュー」という言葉を添えるのも悪くない。きっといい年初めが、国立には待っている。一先ず、良いお年を。
以上
2011.12.31 Reported by 馬場康平