本文へ移動

J’s GOALニュース

一覧へ

【広島】特別な街・仙台への想いを胸に秘め、佐藤寿人は誓う。すべての力を出しきり、戦いぬくことを(11.03.25)

仙台の街を、ベガルタ仙台というクラブを佐藤寿人が忘れることは、あり得ない。今までも、そしてこれから先も。

年代別代表の常連として、大きな期待を背負ってユースからトップにあがってきた市原(現千葉)時代も、出場機会を求めて期限付き移籍したC大阪での1年間も、寿人はポジションを奪うことはできなかった。森崎和幸(広島)や駒野友一(磐田)、大久保嘉人(神戸)や松井大輔(グルノーブル)など、同世代の選手たちがプロ入り1〜2年の間にレギュラーの座を勝ち取ったのに、彼は途中出場がほとんど。2003年からの仙台への移籍は、そんな彼にとってはビッグチャンス。「この機を逃したら、僕には後がない」という強い想いを持って、彼は杜の都の大地に立ったのだ。
「在籍2年間、僕はいい時間を、仙台で過ごすことができました」と寿人は言う。当初はマルコス、山下芳輝に続く3番手と目されていたが、主力の負傷によって得たチャンスを活かして定位置を獲得。移籍初年度は9得点。翌年はJ2ながら20得点をゲットし、名実ともに仙台のエースとして君臨した。プレーだけではなく、心をわしづかみする様々な言動によって仙台サポーターの巨大な支持を受け、ラジオのパーソナリティーまで任されるほどの人気を集めた。広島移籍後も仙台メディアは寿人を追いかけ、言葉をサポーターに伝えた。
それほど、佐藤寿人は仙台から、愛されていた。

「今は敵味方に分かれているけれど、今も僕は、仙台の方々から温かい声援を贈ってもらっています」と寿人は語る。「スタジアムで声をからして声援を贈ってくださった仙台のサポーターの中には、今回の震災で生命を落とした方もいる。その事実は、僕にとって、大きなショックでした」

Jリーグ再開が4月23日に決まったからといって、被災地の苦しみがなくなったわけではない。被害者の数は日を追うごとに増え、テレビでは連日、被災地の厳しい状況が報道されている。それは、寿人の思い出が詰まった街=仙台も同様だ。「家をなくされた方もいる。避難所で大変な想いをしながら暮らしている方々も多いと聞いている」。寿人の視線は、悲しさに満ちていた。

3月29日、佐藤寿人は長居スタジアムのピッチに立つ。日本代表とチャリティーマッチを闘うJリーグ選抜のメンバーとして。
「この試合が行われると聞いた時、Jリーグ選抜に入りたいと純粋に思っていた」と佐藤寿人は言う。その言葉の裏には「仙台のために、力になれることは何か」と自問自答を繰り返していた彼の苦悩があった。だから、このチャリティーマッチに出場できることがうれしかったし、「名誉」とも感じていた。
彼の心を躍らせる要素は、たくさんある。かつて広島でたくさんのゴールを生み出してきた駒野友一(磐田)とのホットラインの再現。子供の頃から憧れだった三浦知良(横浜FC)と初めてチームメイトになれること。かつて日本代表で共にプレーしていた選手たちとの再会。広島の同僚である李忠成・森脇良太・西川周作との対決。

だが、その中でも特に彼が楽しみにしているのは、かつて仙台で共に闘った梁勇基・関口訓充と同じチームで闘えることだ。2004年、寿人が20得点をあげた年に加入した梁と関口は、サポーターが愛してやまなかったエースが移籍した後の仙台を支え、寿人自身が願い続けた仙台のJ1復帰の原動力となった男たち。今でも交流が深いこの2人と寿人が同じチームのシャツを着て共にピッチに立つのは、2004年11月27日の対横浜FC戦以来。あの時、3人が共に闘ったのは、被災したユアテックスタジアム仙台だった。
「リャンとセキ、2人と久しぶりに一緒にプレーできるのは本当にうれしい。被災地で闘っている仙台のサポーターに対し、きっと勇気を贈ることができると思うから。
とにかく僕は、自分が持っているすべての力を出しきって闘うだけ。今、被災地で闘っている人々に、僕らのプレーを見て何かを感じていただければいい。またサッカーを見に行きたいと感じてもらえるような試合がしたい。この試合は、たくさんのJリーガーが『出場したい』と思っている舞台。そういう選手たちを代表してピッチに立つわけだし、中途半端なプレーは許されない。代表に対して全力でぶつかり、勝ちに行きます。
11番? それは、カズさんじゃないですか(笑)。(仙台で11番を背負っている)セキもきっと、そう思っていますよ」

悩み、苦しみ抜いた末に移籍を決断。後ろ髪を引かれるような想いで杜の都を去ってから7年目。今も彼にとって「特別な街」である仙台への想いを胸に、佐藤寿人は長居のピッチに立つ。梁勇基と関口訓充という2人の後輩と共に、仙台サポーターの心を躍らせるゴールを決めるために。

以上

■東北地方太平洋沖地震復興支援チャリティーマッチ がんばろうニッポン!
3月29日(火)19:00KICK OFF/長居
SAMURAI BLUE(日本代表) vs JリーグTEAM AS ONE(Jリーグ選抜)
-試合速報はこちら-
テレビ放送:日本テレビ系にて全国生中継
ラジオ放送:ニッポン放送にて生中継

2011.03.25 Reported by 中野和也
(C)中野和也

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

J.LEAGUE TITLE PARTNER

J.LEAGUE OFFICIAL BROADCASTING PARTNER

J.LEAGUE TOP PARTNERS

J.LEAGUE SUPPORTING COMPANIES

TOP