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被災した方への想いを胸に、今、やるべきことを。佐藤寿人、明日の練習試合に向けて。(11.03.18)

佐藤寿人(広島)の両親は、いわば「孟母三遷」を地でいくような人生を歩んできた。

勇人(千葉)と寿人というサッカーの才能に満ちた双生児のために、埼玉県で営んでいたラーメン屋をたたんだ。育成能力の高さで定評のあったジェフユナイテッド市原(現千葉)ジュニアユースに息子たちを加入させるため千葉県へと転居し、父親は転職したのである。

市原ジュニアユースに入った3ヶ月後、「チームをやめたい」と寿人は両親に告げた。なかなかうまくいかず、Aチームに入れないことが原因だった。その時、父は静かに寿人に問うた。
「自分の力を出しきったのか?」
息子は、首を縦に振ることができなかった。翌日、寿人は誰よりも早くグラウンドに出て準備し、最後まで残って後片付けを行なった。その後は一度も、「やめたい」と口走ることはなかった。

彼は今も、その時のことを覚えている。自分たちのために人生を変えてくれただけでなく、弱音を吐いた自分を諭してくれた。その尊敬する父と母を含む家族は、今回の大震災の瞬間、関東にいた。

「連絡はとれました。ただ電話で『心細い』という言葉も聞いています。本来なら(広島で)一緒に生活したいという想いもあります。でも、両親は両親で、向こうで頑張っていますから」
寿人は言葉を絞りだした。そして、こんな言葉も続けた。
「避難所などで暮らしている方は、もっともっと、大変な想いをされていると思うから」

想いを家族のもとに届けつつ、寿人は今、広島でサッカーを続けている。毎日の練習に100%以上の力で取り組み、来るべき公式戦の再開に向けての準備を、続けている。今日の練習では、李忠成やムジリと前線でトリオを組み、紅白戦では素晴らしいコンビネーションを見せて何度もゴールネットを揺らした。いつもどおり仲間に声をかけ、いつもどおり手を叩き、いつもどおりの笑顔を見せながら。
「広島は生活する上で不便はないし、こうやってサッカーをやれる環境にある。恵まれているからこそ、続けてやっていかないと。被災地で闘っている人々は、本当に大変な中で日々を過ごしているわけで、広島にいる僕らがやるべきことをやめてはいけない。やるべきことを続けながら、被災者の方々のためにできることをしっかりとやるのが大切だと思います。必要以上に自分たちができることをやめてしまうと、それは難しい状況になるから」

広島は明日、広島ビッグアーチで福岡との練習試合を行なう。そこにクラブは募金箱を置き、見に来てくれるサポーターに義援金の寄付をお願いすることを決定した。さらに広島の選手会は、明日よりサンフレッチェのオフィシャル・ネットショップ「e-vpoint」のサイト上でチャリティ・オークションを実施することも決めた。(http://item.rakuten.co.jp/e-vpoint/c/0000000193/

「広島の街を歩いていると、至るところで募金の呼びかけをしているんです。ウチのクラブも前向きに、被災地へのサポートを取り組んでくれています。日本全体が復興するための第一歩を踏み出そうということで。
とにかく明日の練習試合では、久しぶりにサッカーを見に来る人たちのために、いいプレーを見せたい。きっとみなさん、義援金を寄付してくださると思いますし、その人たちのためにも公式戦のような雰囲気で試合に臨みたい。
僕たちのやるべきことは、しっかりとサッカーを続けていくこと。見に来てくれる人たちが幸せを感じられるようなプレーをしていくこと。もちろん、他にもやれることは、しっかりとやっていくわけだけど、基本的に僕らはサッカーを、みなさんに提供することしかできないから」

両親や家族だけでなく、自分がプロとして大きな足跡を残した仙台のことも、寿人の心には大きな影を落としている。しかし、今はとにかく、自分のやるべきことを、やるだけだ。そんな強い想いを持って、佐藤寿人は明日、広島ビッグアーチのピッチに立つ。キックオフは13時だ。

※明日13時より、広島ビッグアーチで行なわれるサンフレッチェ広島対アビスパ福岡の練習試合では、「東北地方太平洋沖地震災害義援金」の募金樽を設置しております。皆様のご協力、何卒よろしくおねがいいたします。詳しくは、サンフレッチェ広島公式サイトまで。

以上

2011.03.18 Reported by 中野和也

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