10月24日(日) 2010 J1リーグ戦 第27節
鹿島 2 - 0 横浜FM (16:04/カシマ/22,973人)
得点者:36' 興梠慎三(鹿島)、39' 興梠慎三(鹿島)
スカパー!再放送 Ch182 10/25(月)後11:00〜
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ジーコに導かれて始まった鹿島のサッカーは、伝統的なスタイルを貫いてきた。ほとんど全てのシーズンで中盤をボックス型にした[4-4-2]を採用し、チームの形を変えることなく、13冠という圧倒的なタイトル数を獲得してきたのである。
だが、それ故のジレンマも同時に抱えてきた。同じスタイルを貫き続けるため、ともすれば、古典的とも言えるサッカーに陥りがちとなり、相手チームとっては予測しやすく対策も立てやすい側面を持っていた。そこで、鹿島の選手たちは試合の流れを読む力を養い、相手が見せた一瞬の隙を突くスタイルを築き上げていったのである。そのため、王者でありながら「カウンターのチーム」と揶揄されることも少なくなかった。
しかし、鹿島のスタイルはそれだけではないのである。この日、その記憶を鮮烈に蘇らせてくれたのが、鹿島の10番、本山雅志だった。オーソドックスな形の定石通りのパスまわしが、突如として、ゴール前のチャンスになる。古典的なサッカーに、天才ならではの彩りを加える選手がいる。それが鹿島のサッカーであり、ジーコからレオナルド、ビスマルクと受け継がれてきた10番を背負う選手の役割なのである。本山が演出した2つのゴールは、本人が言うとおり完璧なものだった。
マルキーニョスを欠く鹿島は、本山をトップ下に据えた布陣で試合に臨む。序盤は横浜FMの選手にミスが多く、敵陣でパスを奪う場面が何度となく訪れた。その流れのまま、13分には右サイドからペナルティエリアに走り込んだ新井場徹が倒されPKを得る。横浜FMにすれば不運な判定だったが、このチャンスをキッカーの小笠原満男が外してしまい、五分の展開となった。
そこで輝いたのが本山だ。36分、ゴール左でジウトンからの鋭い楔のパスを受けるとゴールに背を向けたまま縦方向へヒールパス。それを感じ取っていた興梠慎三は、マークについていた栗原勇蔵より一瞬だけ速く動き出していた。距離を詰めてきたGKの飯倉大樹の頭上にふわりと浮かせたシュートが転々とゴールに吸い込まれる。興梠にとっては実に9試合ぶりのゴールで鹿島が先制点をあげた。
だが、本山の煌めきはこれだけでは終わらない。その3分後、今後はゴール中央で小笠原満男からの楔のパスを受けると、ヒールで優しく背後に流す。じつは、その直前に本山と興梠は「目線が合った」。またしても、マークの栗原より一瞬だけ速く動き出した興梠は、難無くゴールと正対する態勢をつくることができ、落ち着いてゴール左に流し込み2点目をあげた。
前半終了間際にも、本山からのスルーパスが興梠に通り、あわやハットトリックという場面をつくる。興梠は、前を向いてゴールに向かうことができれば持ち味を発揮できる。本山のアイデアによって、ゴール欠乏症を嘆いていた興梠も輝きを取り戻していた。
「見ての通り完敗でした」
試合後、頭を垂れた木村和司監督。後半から布陣を[4-4-2]から[4-2-3-1]に変更し、59分には端戸仁と狩野健太をピッチに送り、状況を変えることを画策したがうまくいかなかった。ただ、鹿島も後半は無得点。小笠原のシュートが左に外れたのを皮切りに、大迫勇也、遠藤康、ジウトンが惜しいシュートを見舞ったもののいずれもゴールとはならず、最後にバタつく展開となってしまった。しかし、この勝利によって得たものは大きい。
「勝点3という部分もありますが、みんなで一つのものを仕上げるということが、チームにとっては大きな収穫だったと思います」
オリヴェイラ監督は、チーム全員が同じ方向を向いて努力できたことに手応えを感じていた。また、チームからは浮かれた雰囲気は微塵も感じられなかった。快勝に笑みを浮かべたのは試合終了直後まで。ミックスゾーンに現れた選手たちは「一喜一憂するべきじゃない。まだ先は長いし、7連勝、6連勝しても優勝しなかったら意味がない」という新井場を筆頭に、引き締まった表情だった。
名古屋も勝利していたため、今節はその差を8から縮めることはできなかったが、追撃態勢が整ったことをようやく示した。今季のリーグ戦も、まだまだ面白くなりそうである。
以上
2010.10.25 Reported by 田中滋