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【第90回天皇杯3回戦 川崎F vs 横浜FC】レポート:土壇場まで追い詰められた川崎Fが、試合終了間際に意地を見せて辛勝。横浜FCの挑戦を退ける(10.10.14)

10月13日(水) 第90回天皇杯3回戦
川崎F 2 - 1 横浜FC (19:04/等々力/5,167人)
得点者:82' 久木野 聡(横浜FC)、88' ジュニーニョ(川崎F)、110' 楠神 順平(川崎F)
チケット情報天皇杯特集
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思いがけず、川崎Fは苦戦する。試合開始直後の決定機を決めきれなかったからだ。うつむきがちな黒津勝が「ヴィトールからのパスは絶対にくると思っていました」と振り返るのは前半7分の場面でのこと。ジュニーニョが右サイドを縦に突破して中央へと折り返し、これをヴィトールが絶妙なパスで黒津につないだ場面だった。見ている側からすると、意外性のあるパスワークだったが、パスを受けた黒津はそれを予測済みだった。しかし、狙いすましたシュートは、枠を大きくハズレてしまう。黒津はその2分後にもシュートチャンスでミスしてしまい、チームを助けることができなかった。

立ち上がりから押され続けた横浜FCは、試合前に「相手を過大評価しないようにとは言われていた」(八角剛史)という。しかし、結果的に後手を踏む形となり川崎Fに面白いようにパスを回されてしまう。攻守にファインプレーを連続させていた渡邉将基は「序盤(川崎Fが)プレスにきたが、自分たちで(川崎Fを)過大評価してありえへんミスでやられていた。気持ちで負けていた」と前半の立ち上がりの時間帯について振り返っている。
敵失もあってチャンスを得た川崎Fが、その機会を逃す一方で、横浜FCは川崎Fのプレッシャーに慣れていく。「早さん(早川知伸)や、ホベルトが中心になって全体を落ち着かせてくれた」(難波宏明)ことにより、「判断のスピードが違ったが、10〜15分くらいで慣れました」(八角)のだという。もし川崎Fのスピードに慣れるまでに前半の45分間を費やしていたとしたら「やられていたのではないか」と八角は分析する。ただ、そうでなかったところにこの試合のポイントがあった。
立ち上がりの川崎Fの攻勢をしのいだ横浜FCは、積極的な守備によって互角の勝負に持ち込む。「スカウティングでも、前から激しくくるのは想像できた」と話す稲本潤一は、コンディション面でも横浜FCの方が上回っていたのだと率直に話しており、中2日での連戦となった川崎Fに難しさがあったことがうかがえる。結果的に、川崎Fをリスペクトしすぎた横浜FCが自滅的なミスを連続させた序盤、川崎Fがチャンスを逃したことで試合は思わぬ方向へと進むことになる。

前半を0−0で折り返した後半。最初に動いたのは横浜FCの岸野靖之監督だった。67分に難波に代えてエデルを投入。さらに77分には高地系治に代えて久木野聡を投入する。今季、横浜FCに期限付きで移籍した久木野にとって、移籍後初めてとなる等々力での試合は「違和感がやばかった」と苦笑いするものだった。そんな中、その久木野は交代出場からわずか5分後に大きな仕事をやってのける。
82分に、自らがサイドに散らしたボールを、武岡優斗がため、柳沢将之に落とす。このボールを柳沢がゴール前へクロス。エリア内にポジションを移していた久木野がこれを頭で決めるのである。試合時間は残り8分+アディショナルタイム。番狂わせの予感に等々力はどよめく。そしてここから川崎Fが反撃を開始する。

試合を落ち着かせ、そして攻守でバランスを取り続けた田坂祐介は「焦りがなかったというと嘘になる」と前置きしつつ「点は取れると思っていた。押し込めていましたし、ああいうサッカーを続けていければ、点は取れると思っていました」と自分たちのサッカーについて自信を見せる。72分にすでに谷口博之と矢島卓郎を投入していた高畠勉監督は、先取点を奪われたわずか2分後に、菊地光将に代えて楠神順平を投入。反撃を試みる。
失点から6分後。試合終了まで2分+アディショナルタイムを残す時点で川崎FはCKを得る。通常であれば田坂が蹴る右のCKを蹴ったのはヴィトール・ジュニオールだった。「普通だと左サイドの時に蹴るんですが、逆サイドのCKも蹴っていいとは言われていました」と話すヴィトールは、ニアに蹴ることを含めて練習通りにやれたのだと言う。そのニアポストに飛び込んだ小宮山尊信の頭を経由し、マーカーの選手の前に足を突き出したジュニーニョが、このボールをねじ込む。
横浜FCとしては、非常に悔やまれる失点だった。というのも、その直前にホベルトが痛んでおりピッチ外で治療中。つまりピッチ上は1人少ない状況だったのである。横浜FCはホベルトが痛む前から選手交代の用意をしていたのだが、ホベルトの足の具合が把握できず結果的にCKをやり過ごした後の交代となるのである。横浜FCベンチとしては、なんとも悔しい失点となった。

90分で決着のつかなかった試合は延長戦に突入。その延長戦で目を見張ったのが横浜FC・カイオの献身的なディフェンスだった。自らの意思で自陣深くにまで下がり、猛烈に川崎Fの攻撃をせき止めるのである。そしてそうした守備によってチャンスを得た横浜FCは延長前半の104分に途中交代出場のエデルが決定的なシュートを放っている。しかしGK相澤貴志に防がれてノーゴール。逆に川崎Fは、途中交代出場の楠神が延長後半の110分に技ありのゴールをねじ込み逆転。このゴールで火がついた横浜FCは、延長後半120分にゴール前にまで上がっていた渡邉がミドルシュート。同点ゴールかとも思われたが、GKの背後にいた久木野がオフサイドを取られ、ノーゴールの判定に。
「もっと違うシュートコースに打てばよかったのかと考えますね」と話す渡邉に対し、オフサイドを取られた久木野は「もったいないですね。よけられれば…」と悔しがった。

結局、試合はそのまま終了。コンディションの違いに苦しみながら川崎Fが120分間の戦いの末に勝利を収め、4回戦進出を決めた。中2日の川崎Fが難しい状況であったとはいえ、最後までその川崎Fを追い詰めた横浜FCの健闘が光る一戦だった。

以上

2010.10.14 Reported by 江藤高志
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