10月13日(水)第90回天皇杯3回戦 広島 vs 福岡(19:00KICK OFF/コカ広島ス)
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チケット情報 |天皇杯特集
ヤマザキナビスコカップFINAL一般販売は16日(土)10時〜
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「今週、Jユースカップの愛媛戦があるんですよ。厳しい日程だなあ。相手も強いし、だけどどうやって、気持ちをそこに持っていくか……」
昨日、見事な逆転勝ちで2度目の高円宮杯制覇を成し遂げた広島ユースの森山佳郎監督が苦笑いする。何かを成し遂げた直後、すぐに別の大会に向けて集中しろと言われても、なかなかできることではない。
サンフレッチェ広島のトップチームもまた、クラブ史上初のヤマザキナビスコカップ決勝進出という快挙をやってのけたばかりだ。ただ、プロと高校生は違う。サッカーを生業とするプロであれば、そこでしっかりと切り替えて、次に向かうメンタリティを持ち合わせているはず。ワールドカップという大舞台で活躍した日本代表戦士たちが、直後のJリーグでも奮闘を見せたように。第一、優勝した広島ユースと違い、トップはまだ決勝進出のところまで。ホッとしている選手など、一人もいない。
それに、来季のACL出場を目指す広島にとって、天皇杯も実に重要な大会だ。もちろん、まだリーグ3位に入っての出場権獲得も視野に入ってはいるが、天皇杯に優勝すればリーグに関係なくACLに出場できる。今季のACLでは、3連敗3連勝と尻上がりに調子をあげてきたものの、残念な予選リーグ敗退となってしまった。もう一歩、チームとして先に進むためにも、来季の出場権をどうしても獲得したい。
ただ、闘うモチベーションは存在しても、問題なのはコンディションだ。ヤマザキナビスコカップ決勝進出をかけた闘いは、選手たちにいつも以上の肉体的・精神的な負担を強いている。移動込みの中2日というハードな日程はもはや慣れっことなった広島ではあるが、さすがに今回は厳しい。対戦相手となる福岡の強さを考えると、なおさらだ。
J2で現在3位をキープ、昇格圏内に位置している福岡は、広島にとって侮ることなどまったくできない強敵だ。確かに2008年のJ2時代には2勝1分と負けてはいない。だが、あの時と今とでは、チームの状態が全く違う。福岡を率いる篠田善之監督は、その年の7月に監督に就任したばかり。そこからスタートした篠田流のチームづくりが今季、花を咲かせようとしている。城後寿や末吉隼也といった才能を感じさせる若手が成長を見せ、中町公祐や永里源気ら移籍組もチームに溶け込み、はつらつとプレー。田中誠や久藤清一らベテランの下支えもあり、シーズンを通して粘り強い闘いを見せている。ここ最近の2試合こそ連敗しているものの、第25節千葉戦のように先行されても粘り強く闘い、逆転勝ちをおさめるケースも目立つ。
柏のレアンドロ・ドミンゲス、甲府のマラニョンやパウリーニョ、千葉のネット・バイアーノのように、特別な能力を持つ外国人選手は一人もいない。永里がリーグで12得点を決めているが、彼の本質はストライカーではなくチャンスメイカーだ。ただこの事実が、福岡が個人に頼るのではなく、チームとして質の高い闘いを見せている証明だろう。実際、チーム総得点47はリーグ4位。失点25は柏についで第2位につけている。ボランチの中町が8得点、途中出場が多い田中佑昌が5得点を稼ぐなど、どこからでも、どういう状況でも得点がとれるチームに成長してきた。
また、広島でプロのキャリアをスタートした高橋泰がケガから復帰し、熊本戦でさっそく得点を決めているのも、福岡にとって好材料。「広島は思い入れがあるチーム」と語っており、熱い気持ちで乗り込んでくることは必定だ。
広島も経験があるが、J2のチームが天皇杯でJ1チームと対戦する時は、特別な想いを持って立ち向かうもの。その気持ちに少しでも圧されるようなことがあれば、実力者・福岡に膝を屈する可能性もある。実際、昨年の天皇杯でも、鳥栖を相手に逆転負けを喫して思わぬ敗退を経験している。広島としては、その二の舞を演じたくはないはずだ。
代表組は今回も不在だが、中林洋次が清水戦でも能力を見せ、清水戦では出場停止だった横竹翔も戻ってくる。ミキッチもケガから復帰するなど、好材料もある。何より、チームが勢いづいていることは間違いない。ヤマザキナビスコカップ決勝やリーグ終盤戦に向けて弾みをつけたい広島と、J1昇格に向けて自信をつけたい福岡。明日の夜、情熱をスパークさせた闘いが、コカコーラウエスト広島スタジアムで待っている。
以上
2010.10.12 Reported by 中野和也