10月9日(土) 第90回天皇杯3回戦
ソニー 1 - 3 C大阪 (13:04/ユアスタ/1,366人)
得点者:29' 乾 貴士(C大阪)、31' 大久保 剛志(ソニー)、40' アドリアーノ(C大阪)、67' アドリアーノ(C大阪)
チケット情報 |天皇杯特集
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どんよりとした雲に覆われた9日のユアテックスタジアム仙台。今回はいつものベガルタゴールドの色はなく、ホーム側はソニー仙台のサックスブルーに、アウェイ側はC大阪の桜色に、それぞれ色分けされた。観客数は1,366人と、さびしい数字になったことは否めないが、ベガルタ仙台を破って勝ち上がってきた地元の企業クラブの登場もあって、ソニー仙台の社員を中心に地元サポーターが応援に駆けつけ、スタジアムではスターティングメンバー発表時にソニー仙台を盛り上げる演出も施された。また、地元メディアも大きな注目をソニー仙台側に向けるなど、ソニー仙台を後押しする雰囲気も存分に漂っていた。
試合に目を向けると、サポーターの後押しを受けて勢いづくソニー仙台の前に、序盤からC大阪はなかなか自分たちのペースをつかめない。司令塔のマルチネスがソニー仙台の前線の選手にうまくプレスを仕掛けられ、全体的にもハードディフェンスを受けると、各選手のパスミスが目立つようになり、9月のリーグ戦で勝てなかったときのような、C大阪にとってはイライラが募るような展開に陥る。
しかし、30分を目前に、ようやくC大阪の攻撃が目を覚ます。29分、乾がペナルティーエリア中央手前付近にかけてドリブルを仕掛け、そのまま右足を一閃。このシュートが相手DFに当たりながらゴール。個の力で相手を振り切った先制点はなんと、記録ではC大阪の初シュートでもあった。その2分後に一度は同点とされたC大阪だったが、またしてもその苦境を、乾の個人技が打破。「得意にしている」というターンでうまくエリア内に入り込むと、相手DFのファウルを誘い、PKを獲得。このPKをきっちりとアドリアーノが決めて、再び勝ち越しに成功した。前半は乾の2得点に絡む活躍、そして記録上2本のシュートがいずれもゴールという形で、このまま2-1でハーフタイムに入る。
後半も、C大阪はソニー仙台を圧倒するまでには至らなかった。「前半のような戦いをしながら、前半も攻撃でチャンスはあったので、その流れを活かしていこうという考え」(ソニー仙台、田端秀規監督)で挑んできた相手が、ハードワークと組織的なプレスからの速攻で反撃してきたこともあり、C大阪は幾度かゴール前でピンチを迎えた。それでも、リーグ戦でも堅守を展開する守備陣を中心になんとか凌ぎきると、乾に代えてDF石神直哉をピッチに送り込んだ1分後の67分、駄目押し点を奪う。ソニー仙台DFの粘り強い守備を身体で弾き飛ばした家長昭博が左からループクロスを送ると、清武弘嗣が頭で折り返し、最後はアドリアーノがヘディングシュートでプッシュ。2試合の出場停止から復帰したストライカーによるこの日2点目となるゴールで勝負は決まった。
結局、このまま3-1で勝ち切って4回戦に進出したC大阪だったが、試合後のレヴィークルピ監督は「今、修正しようと思っていること、あるいは練習のなかで重点的に意識して改善を図ろうとしている部分に関しては、まだ物足りなさが残る」と渋い表情。「攻撃の部分ではまだまだ伸びしろがあるし、そこをこれからも改善していかなければいけない」と、今後のリーグ戦および天皇杯に向けて、チームの攻撃面に注文をつけていた。
対するソニー仙台は前半途中に右DF橋本尚樹の突破からFW大久保剛志が同点弾を決めて、一度はスタジアムを沸かせたが、C大阪の前に力尽き、4回戦進出の夢は断たれた。2度目のジャイアントキリングを逃したことで、指揮官も選手たちも試合後は悔しさをにじませていたが、「2つも上のカテゴリーと2試合もガチでできたのは、すごくいい経験になった。これをJFLでも、また来年の天皇杯でも活かして、また上にいけるようにしたい」(山田佑介)と、チームはこの経験を糧にすべく、前を向いていた。そして、最後まで試合を諦めず、気迫を全面に出し、正々堂々とJ1リーグ戦3位のC大阪に立ち向かったソニー仙台イレブンには、試合後、スタジアムに集まったサポーターから惜しみない拍手が贈られていた。
以上
2010.10.10 Reported by 前田敏勝