10月10日(日)ヤマザキナビスコカップ 川崎F vs 磐田(15:00KICK OFF/等々力)
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アウェイでの1−0の勝利は、川崎Fに精神的な安定をもたらしてはいない。それどころか「怖い」(横山知伸)との言葉や「危ないと思う」(ジュニーニョ)といった反応が出るほどにチーム内に警戒が広まっているのである。
9月29日にヤマハスタジアムで行われたヤマザキナビスコカップ準決勝第1戦で川崎Fは勝利。黒津勝のアウェイゴールを無失点で持ち帰る事により、表面上は有利な条件を手にしているといえる。ただ、そうした状況が川崎Fにとって危険なものであるとの認識が選手の間に広がっているのである。例えばジュニーニョ。「難しい試合になると思います。だからこそ普通にやらないとダメ」と口にし、強く慢心を戒めようとしていた。最終ラインからチームを支えている相澤貴志も「いろいろ考えすぎると精神的に追い込まれる。この試合をどうするのかというところ。アウェイゴールを取られないようにするというのはどの試合も同じ。チームの戦い、試合の入りはいつもと変わらないです」と平常心でのプレーの重要性を説いていた。準決勝第1戦の結果により、川崎Fはアウェイゴールを奪い勝利した。しかし、その1点のリードを守るのだという後ろ向きの精神状態の怖さを、選手たちは正確に把握しているのである。
1点のリードが呪縛になりかねないという状況がある中、気になるのが中村憲剛の不在である。御存知の通り中村は、ザッケローニ体制に移行した日本代表チームに招集されており、この試合には出場できない。神戸戦後、川崎への移動直後にその中村に代表での健闘を促すべく声をかけたという黒津勝は、逆に「頑張ってくれよ」と励まされたと話す。そして、代表との連戦となったヤマザキナビスコカップ準々決勝・鹿島戦を例に出し、「中一日だし戻ってこれないモノですかね」と話していた。しかし、その黒津の願いはかないそうにない。日本代表はアルゼンチン戦後、韓国に渡り日韓戦を戦う事になっている。そんな訳で、この試合における中村不在は確定している。
川崎Fにとっては痛すぎるが、代表招集でいえば磐田からも前田遼一、駒野友一の両選手が選ばれている。また、準決勝第1戦で負傷したパク・チュホもこの試合の欠場が確定。つまり磐田は日韓の代表を務める両サイドバックが不在となるわけだ。さらにセンターバックの古賀正紘が直近のリーグ戦で退場したため、この川崎F戦は出場停止の対象試合となっている。つまり戦力ダウンという点では磐田の方が大きいという事になる。ただ、川崎Fには昨季のナビスコカップ決勝での苦い記憶がある。いわゆるベストメンバーではないチームとの対戦が、必ずしもアドバンテージにはならないという事を、川崎Fの選手は昨季の決勝から経験的に知っている。だからこそ、油断はなさそうである。
これまでの実績を考えると、高畠勉監督は中村に代わり横山知伸を起用する方向であると思われる。その横山は「縦のスルーパスをなかなか出せないので、ちらしたい」と話し、サイドチェンジを意識する発言を残している。そしてそれと同時に「自分が出るなら、守備のところで仕事できるようにプレーしたいですね」と述べていた。横山が守備的な役割を担うのだとすれば稲本潤一の攻撃参加の回数が増えることになるはず。つまり稲本の攻め上がりの回数によって、川崎Fの試合展開の良し悪しは推し量ることができそうだということである。ちなみにその稲本は内転筋に少々ハリがあるとのことで慎重に調整を続けている。この試合への出場の可否は分からないが、悪化していないことを願いたいところである。
昨季の屈辱を晴らすためにはまずはその同じ舞台に立たねばならない。そしてそのためには、もう一つの壁を乗り越えなければならない。それは彼らに課せられた義務であり、サポーターとの約束でもある。だからこそ選手たちのモチベーションは高い。そのモチベーションは、初タイトルに向けて、選手たちに力を与える事になるのだろうか?
それとも、平常心を失わせる劇薬になるのか。07年以来4年越しの悲願成就に向け、その挑戦権を得るための大事な試合は目前に迫っている。
以上
2010.10.09 Reported by 江藤高志