「もっと早く代わっておけばよかったですね」
試合後、本間幸司は悔しさを隠すように微笑を見せた。第18節岡山戦、1−1で迎えた69分、左サイドからのクロスを本間がまさかのファンブル。こぼれ球を押し込まれて、決勝点を奪われることとなってしまった。今季はじめてとも言える本間のミスとなったが、この時点で本間は「限界」に達していたのであった。
「前半から痛みがあったんですよね」と本間は振り返る。痛みがありながらも我慢してプレーを続けたが、失点の場面、前に飛んだ瞬間に限界に達し、キャッチミスを犯してしまったのである。
ただ、この試合で彼の肉体が悲鳴を上げていたわけではない。中断前から「彼の太ももはギリギリの状態」(木山隆之監督)だったにも関わらず、痛い顔ひとつ見せず、練習に打ち込んできたのだ。中断期間では別メニューで調整することもあったが、それ以外は通常のメニューだけではなく、最後まで居残り練習をするなど『練習の鬼』として自らを追い込み続けてきた。
試合2日前もそうだった。居残りのGK練習が終わっても、納得いかない本間は吉岡宏GKコーチと延々と練習を続けた。本間が練習を切り上げたのは全体練習終了から約1時間後。「ギリギリの状態」とは、想像もつかない追い込みぶりであった。
プロとして2通りの選択肢があっただろう。自分の体に違和感があれば、練習量を落として調整するのが王道である。しかし、本間は「調整」するのではなく、ギリギリまで追い込むことを選択したのであった。それが裏目に出て、岡山戦で失点を喫することとなったが、誰が本間を責められようか。
「まったく努力をしていなかった」という数年前とは打って変わり、今ではチーム1の『練習の鬼』へと生まれ変わった本間。毎日ギリギリまで自分を追い込む姿勢があるからこそ、これまで幾度となく水戸のピンチを救ってこられたのである。33歳となった今でも「成長を感じる」と言うように、自らを「ベテラン」扱いするのではなく、若手以上に追い込むその姿勢が彼に成長をうながしているのだ。自らを貫いた上での負傷だけに、本人も納得しているに違いない。
検査の結果、全治2週間という軽傷で済んだのは不幸中の幸い。サッカーの神様から「ちょっと休みなさい」と言われているのだろう。そうでもないと彼は休むことはしなさそうだから。『練習の鬼』の束の間の休息。万全なコンディションで戻ってきた本間がどんなプレーを見せてくれるのか。早くも楽しみでしょうがない。
※私事で恐縮ですが、告知があります。
7月24日、NACK5で朝6時から放送される「FUN FUN SOCCER」という番組に出演します。大野勢太郎氏とJ2の魅力について熱く語りますので、興味のある方は早起きして聴いてください。よろしくお願いします!
以上
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2010.07.23 Reported by 佐藤拓也