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【2009Jユースサンスタートニックカップ】大会総括:F東京の強さが光った今年度大会。素晴らしい試合をより多くの人に見てもらえるよう、チームの伝統と魅力の成熟に期待。(09.12.30)

2009Jユースサンスタートニックカップ特集サイト
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F東京の強さが光った今年のJユースサンスタートニックカップ。決勝トーナメントは見所のある試合が多く、それぞれのチームが特徴を発揮することが出来ていたと言っていいだろう。

毎年1/3の選手が入れ替わる中で毎年のように決勝トーナメントに進むことは容易ではないし、1年を通じて結果を出し続けることは難しい。そのなかでJFAプリンスリーグ関東1部優勝のF東京、3位の横浜FM、4位の東京Vがベスト8に入っており、例年通り関東に力のあるチームが多かったことが分かる。どのチームも育成の実績があり、技術力の高い選手が多かった。また、準優勝の広島は近くにJ1クラブのない環境で、チームの波の底が高い位置にある育成を続けている。これも例年通りで広島の育成力は非常に高い。関西ではシーズン序盤に苦労したG大阪がベスト4に入り右肩上がりでシーズンを終えることが出来た。2年生以下の選手が多いチームだったので来年の逆襲が楽しみになる。

また一方で注目したいのは日本クラブユース連盟(JCY)代表チームの存在。ジュニアユースで高い評価を受けた選手がユース年代になるときにJクラブのユースチームに移ることもあるようだが、自前で育成した選手にJクラブでユースに昇格できなかった選手らを組み合わせて質の高いチームを構成していた。横河は連動性のあるサッカーで素晴らしかった。ユース年代で目の前の勝利を単純に求めるのなら違うスタイルもありうるかもしれないが、選手のサッカー人生が大学・社会人と続くことを考えればそこでブレイクスルーのチャンスが来ても充分に対応できる育成のスタイルだと感じた。養和のように横河もプリンスリーグ関東1部でプレー出来る立場になればユース年代で更にレベルアップ出来るはずだ。滝川第二高校時代の岡崎慎司(清水)を見て、彼が日本代表のストライカーになることまで想像できなかったが、ユース年代にベースとなるプレーを身につけていればその後の努力次第でまだまだ伸びることが出来るという素晴らしい例になっている。ユース年代の結果を求めながらもその先に繋がるサッカーを志向するJCYのチームが刺激を与えてくれたことは意味あるものだった。

Jリーガーへの道、トップへの昇格はトップチームの事情にもよるし、今年はJ2のチームが選手の総数を減らす傾向もあり、ユースからJリーガーになる選手は例年より少ない印象がある。ただ、1対1で勝負する姿勢を見せる選手が少なくなかったことはよかった。その中で突出した選手という意味ではF東京の重松健太郎の名前が一番大きい。ユースレベルではスピード以外は群を抜いている選手なのでプロの世界で揉まれることでどう能力を伸ばしていくのか楽しみな選手。F東京のDF平出涼(昨年はボランチ)もトップチームの米本拓司のように活躍できる可能性を感じるし、広島の宗近慧(2年)も平出同様に強いだけのディフェンダーではないのでボランチでもプレーできるだけの幅はある。この大会で活躍した選手の未来が約束されている訳ではないし、活躍できなかった選手に未来が無い訳ではないからスター扱いするのは早すぎるが、彼らに注目して貰うことは必要。

Jユースサンスタートニックカップの決勝トーナメントに進出したチームはレベルが高く、見応えのある試合が多い。しかし、多くの人に見てもらうという点ではそれに比例した集客ではなかった。都道府県代表という形ではないので、各クラブのサポーターに興味を持って貰うことと開催スタジアム近隣のサッカーファン、指導者、ユース年代以下の選手に多く足を運んでほしいのだが、それはなかなか難しい。理想は開催スタジアムを対戦チームのどちらかの本拠地に近いところにすることだが、空いているスタジアムと運営のことを考えると実現することは難しいのだろう。しかし決勝トーナメント進出チームが決まってから、サポーターにユースチームに興味を持ってもらうことは難しい。グループリーグの戦いを決勝トーナメントに繋げるために、何試合かはJリーグの前座試合としてグループリーグの試合をホームスタジアムでサポーターに見てもらうなどというのも、ひとつのアイディアかもしれないと思う。

そして、興味を持ってもらうためには広島のように伝統が受け継がれているチームが増えることが必要だろう。指導者が頻繁に変わるようでは難しいが、広島は森山佳郎監督(2002年〜)が長く担当することで、上手いだけではなく粘り強く戦うのが広島という精神が受け継がれている。選手は3年で入れ替わっても伝統は受け継がれる。森山監督は選手に「気持ちには引力がある(気持ちが強いほうにボールが転がる)」ということを伝えているが、彼らはその通りのプレーをする。トップチームと同じサッカーを志向する点もJのユースにしか出来ないスタイル。置かれた環境が逆境であればあるほど頑張ることが出来る広島の姿勢は素晴らしかったし、サポーターの応援にも魂がこもっていた。トップに昇格できなかった選手も素晴らしい宝物を持って次のステージに進むことが出来るはずだ。トップに昇格する選手を育成すること以外の魅力を持ったチームが増えることが今後この大会の価値を高めていくことになるのではないだろうか。

以上

2009.12.29 Reported by 松尾潤
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