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【第89回天皇杯2回戦 熊本 vs 横浜FC】レポート:2度リードした熊本に、2度追いついた横浜FCが、PK戦を制す。リーグでの低迷を晴らすべく、3回戦で新潟に挑む。(09.10.12)

10月11日(日) 第89回天皇杯2回戦
熊本 2 - 2(PK 2 - 4)横浜FC (19:00/熊本/3,109人)
得点者:49' 吉井孝輔(熊本)、72' 八田康介(横浜FC)、115' 西森正明(熊本)、119' 難波宏明(横浜FC)
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 11日に行なわれた2回戦で唯一のナイトゲームとなった一戦は、同日昼に行われたJ2同士の他3試合同様に拮抗したゲームとなり、120分を戦っても決着がつかず、PK戦の末、横浜FCが3回戦にコマを進める結果。寒さが余計に身に沁みた。

 だが、「流れからはやられる気がしなかった」と矢野大輔が話した通り、終止ゲームのペースを握っていたのは敗れた熊本だった。立ち上りからボールを圧倒的に支配し、攻撃時にボールを奪われても、高い位置から素早く守備に入り、1人が寄せれば後ろがしっかりとコースを切ってインターセプト。そこから再び攻撃をしかけるという切り替えの早さを徹底。攻めては、藤田俊哉を経由したテンポの良いつなぎに、矢野や福王忠世らのロングフィードから木島良輔がDFラインの裏へ飛び出し、さらに西弘則のドリブルなどを織り交ぜて横浜FCゴールに迫る。

 一方の横浜FCは、樋口靖洋監督が「特に前半はボールを引き出す動きがなかった」と振り返ったように、2トップのエデルと西田剛の距離が遠く、熊本のタイトな守備にあってボールを収める事ができない。2列目からの飛び出しも少なく、加えてミスも多かったため、なかなかチャンスを作れない状態。後方のDFラインは高めに保っているのに前でプレッシャーがかかっていないことで、間でもフリーでボールを受けて前を向かせたり、ラインの裏を狙われたりと、攻守両面で劣勢を強いられた。

 後半立ち上りの49分、熊本は自陣での横浜FCのスローインを藤田がカットして西へとつなぎ、西からボールを受けた木島がドリブルで持ち込んで再び西へ。相手DFに囲まれながらも粘って反転した西が木島へ送り、木島からのラストパスを吉井孝輔が詰めて先制する。その後55分頃から65分頃までは、前述したように高い位置でボールを奪っては、藤田がボールを落ち着かせる間に両サイドが深い位置まで侵入し、左右に展開しながらゴール前へ送るという波状攻撃を展開。しかし「フィニッシュができなかった」(北野誠監督)ことが、後々まで響いた。

 横浜FCの樋口監督は、59分にエデルに替えて安孝錬、66分には小野智吉を下げて難波宏明を送り、西田を右サイドのMFの位置にシフト。そして72分、三浦淳宏のFKを八田康介が頭で決めて追いつくとさらに勢いづき、76分にもCKからフリーで西田が合わせる等、全ての交代カードを切って終盤にかけて押し込むが勝ち越せない。

 延長前半に入ると、お互いにチャンスを作るものの決定的な形に持ち込むまでは至らず前半は0−0。だが後半、辛抱していた3枚目の交代として、北野監督が藤田に替えて山内祐一を投入すると、107分に西のヘッド、108分には山内のボレー、110分、114分にも山内と幾度もチャンスを迎え、遂に115分、熊本が勝ち越す。西が倒されて得たFKを、西森正明がゴール前へ。低い弾道に合わせようと飛び込んだ中山悟志ら3〜4人に横浜FCのDF陣が引っ張られ、誰にも触れる事なく、ボールがネットを揺らしたのである。

 あとは時間を使うだけで良かったし、実際に右コーナー付近まで持ち込んだ山内がキープする等、これまでの教訓を生かそうとする場面はあった。だが1分と表示された延長後半のロスタイムも回ろうかという時点での横浜FCのフリーキック。吉本岳史が蹴ったボールが「その前にひとつ外していたので、次は必ず決めようと思っていた」という難波宏明の頭に合い、そのままゴールへ。直後に吹かれた120分の戦いの終わりを告げるホイッスルの音は、スタンドのざわめきにかき消され聞こえない程だった。熊本は、2度のリードを守りきれず、そして2週間半前の第3クールと全く同じ、“試合終了間際”の“セットプレー”で勝ちを逃した。

 PK戦では、熊本2人目の福王が枠を外し、3人目の矢野がストップされたのに対して、横浜FCは4人全員が成功。90分を戦って延長戦が始まるまでの間も、120分を戦ってPK戦が始まるまでも歌い続けたサポーターに、久しぶりの勝利と、そして3回戦で新潟と対戦する希望をプレゼントした。
「ここで勝てた事が自信にもなるし、チームの雰囲気も変わると思う」とはPKを止めた殊勲のGK大久保択生。リーグでは低迷したままシーズン終盤を迎えているが、1週間後にはJ2の第45節が控えており、最後にようやく追いついたとは言え、この試合で結果を得た事がリーグ戦での今後の戦いにつながる。ただ、フィニッシュの精度をはじめ、今シーズンの低迷の要因となっている問題は依然としてある。J1上位の新潟を相手に、やろうとするサッカーをどれだけ発揮できるか注目したい。

 一方の熊本は、栃木SCに敗れた昨年に続いてのPK負け。「J1のチームに俺たちがやっているサッカーを見せたかった」と、北野監督は唇を噛んだ。終盤の時間の使い方とセットプレーの守備、そして追加点が奪えなかった事については、ここ数試合のリーグでの課題がそのまま露呈した恰好。それでも、前線からの連動した守備や早い攻守の切り替え、攻撃のバリエーションなどは、ここへきて今まで取り組んだものがピッチで表現されるようになってきた事も事実。「もうリーグしかないので、いい形で今シーズンを終えたい」と北野監督が話すように、延期された44節の愛媛戦も含めた残り8試合にかける。

以上

2009.10.12 Reported by 井芹貴志
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