10月3日(土)J2 第43節 水戸 vs 徳島(13:00KICK OFF/笠松)
スカパー!生中継 Ch182 12:50〜(解説:遠藤雅大、実況:加藤暁、リポーター:佐藤愛美)
勝敗予想ゲーム | 皆の投稿で作るスタジアム情報
----------
水戸に携わるすべての人がこの1週間、いや、1ヶ月を陰鬱な思いで過ごしたことだろう。それは選手も同じだ。前節草津戦後、ロッカールームでは選手の叫び声が響き渡り、スタジアムを後にする選手たちの目はうつろ。出口の見えない現状に苦しむ様が痛いほど見て取れた。当然、今週の練習も陰鬱な雰囲気からスタートした。しかし、そうした状況で頼りになるのは、やはりベテランであった。草津戦翌日の練習のムードが今までにないほど暗かったことを気に留めた吉原宏太は選手たちを集めて、「みんな、何か思っていることがあったら言おうや」と声をかけ、選手同士でミーティングを開催。最初はなかなか意見が出なかったが、徐々に意見が活発化し、「みんな、積極的に話してくれて、意識の共有ができた」と吉原は満足げな表情を見せた。
共有できた意識とは「前から行くこと」(大和田真史)である。「前の選手の感覚と後ろの選手の感覚が違うと感じていたけど、話し合ってみたら割と思っていることは一緒だった。それを一つにして戦わないといけない」と大和田は語る。夏場の好調時はDFラインを下げて相手を攻め込ませたところでカウンターを狙うという戦いが主流であった。しかし、それがうまくいってしまったばかりに「みんな、さぼるようになってしまった」(吉原)。攻撃は高崎に頼りがちになってしまい、1人1人のハードワークは薄れていった。「それで勝てればいいけど、それほど甘くない」と吉原は厳しい口調で語った。
もう一度本来の水戸のサッカーを思い出すために、水曜日に第4節東京V戦の映像を見ることとなった。前線から果敢に連動したプレスをかけて東京Vを完全に封じ込めて勝利をおさめた試合。その映像を見て、大和田は「よかったときのイメージが戻ってきた。あれだけやれば、勝てるという印象。あの感覚を取り戻すだけ」と感じたという。まずは前線からしっかりとプレスをかけること。そして、運動量とハードワークで負けないこと。それが水戸の原点である。「水戸は攻撃重視でやってきたチーム。前に行かないとらしさが出ない。それが原点。ディフェンシブに戦うチームではない」(高崎寛之)。
ただ、原点に戻るだけでは進歩がない。6試合勝ちなし、4連敗中と苦しい状況が続くが、木山隆之監督は「悲観はしていない。今は1つレベルアップするための大きな壁だと思っている」と気丈に語る。木山監督の言うレベルアップとは「ボールを持ったときに何をできるか」。これまでのロングボール主体の攻撃からの脱皮を図っているのである。前々節鳥栖戦、前節草津戦ともに前半は中盤で展開して攻撃を組み立てる姿勢を見せた。後半に相手に凌駕され、敗戦を喫することとなったが、今は新しいサッカーにトライしている最中。「引いてカウンターはできる。もう1ランクレベルアップして勝ちたい。それがなかなかうまくいっていないのが現状だけど、自分はそれをやりたい」と木山監督は目を輝かせる。次なるステップに向かうための、必然の痛み。この苦しみの先に光はあるはず。原点回帰と次なるステップの融合へ。新たな第一歩として今節徳島戦に挑む。
今節中盤の争いが鍵を握ることだろう。そこで水戸が主導権を握ることができるか。それが勝利への、そしてレベルアップするための必須条件となる。しかし、4試合負けなしの徳島から主導権を握るのは至難の業だ。4試合で11得点1失点という強さを誇る徳島。リーグ中盤で失速したが、今は息を吹き返してきている。チームを支えているのが、中盤だ。倉貫一毅、青山隼のダブルボランチは安定感抜群。まさにチームの中心としてゲームをコントロールしている。それに呼応するように攻撃的MFの柿谷曜一朗と六車拓也が躍動。柿谷が自慢のテクニックでチャンスメイクすれば、六車は強力なシュート力を武器に4試合で3ゴールの大暴れの大活躍。中盤のバランスのよさがチームに勢いを与えることとなっている。
好調を維持して水戸に乗り込んでくる徳島。勝利へのポイントは先制点だろう。前節岡山戦、第40節熊本戦ともに徳島は早い時間帯に先制したことで大量得点を挙げることに成功している。その反面、第28節水戸戦が顕著だったように、前半のいい流れのうちに点を取れないと焦りからほころびが生じ、終盤に失点を喫して敗れるパターンが多い。いかに早い時間にゴールを奪うことができるか。爆発力を秘める徳島にとっては重要な問題と言えよう。ただ、それは水戸にも言えること。今の悪い流れを断ち切るためにもゴールが必要。早い時間帯にゴールを奪うことができれば、チームは一気に立ち直る可能性を秘めている。喉から手が出るほど先制点がほしいのが正直なところだ。両チームとも先制点欲しさにフルスロットルで挑んでくるであろう前半の戦いぶりが勝負を分けるはず。相手のゴールを先にこじ開ける攻撃力を見せるのは果たしてどちらのチームか。
7位水戸と8位徳島の勝点差は4。この試合の結果が今後の順位にも大きな影響を及ぼすだけに、両チームにとって大事な一戦である。水戸は過去最高位の7位以上を確保するために、徳島は今季の目標である6位以内に近づくために絶対に勝たないといけない一戦。前半から相当激しい攻防が繰り広げられることは間違いない。覚悟して、スタジアムに足を運んでほしい。
以上
2009.10.02 Reported by 佐藤拓也