9月13日(日) 2009 J2リーグ戦 第39節
福岡 2 - 0 仙台 (16:04/レベスタ/8,263人)
得点者:39' 黒部光昭(福岡)、68' 田中佑昌(福岡)
スカパー!再放送 Ch180 9/15(火)10:30〜(解説:布部陽功、実況:後藤心平、リポーター:森田みき)
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前半は予想通りの展開だった。首位に立つ仙台は手堅く試合を進めるのが狙い。そして福岡は、まずは失点をせずに前半を終えることがゲームプラン。そんな両チームの戦いはゆったりとしたペースで進む。時折、仙台がショートカウンターとサイドアタックで、福岡は大久保哲哉への高さと田中佑昌の裏へ抜けるスピードを活かした攻撃で前を窺うが、いずれもジャブを打ち合う程度。互いにリスクを避けて試合を進めていく。
戦前の予想と違っていたのは、仙台の必要以上の出足の悪さだった。球際の競り合いで後手を踏み、セカンドボールを拾えず、周りの選手が動き出さない。手倉森誠監督も「競り合いの部分で強さ、厳しさというのは福岡の方があったなと思った」と振り返る。
そして福岡は集中力を研ぎ澄まして試合を進めた。中盤の守備の曖昧さに課題は残したが、丹羽大輝、長野聡、六反勇治の3人が、最終ラインを丁寧にコントロール。チャレンジ&カバーの原則を守ってチャンスを与えなかった。そして、黒部光昭、田中佑昌の裏への飛び出しは、危険な香りを感じさせるには十分。膠着した展開ながら、攻守のメリハリという点では、福岡が勝っていたのは明らかだった。
そんな両チームの違いが結果に表れたのが、39分の福岡の先制シーンだった。仙台陣内、左サイドでFKを得た福岡に備えて仙台はゴール前に守備陣形を敷く。しかし、仙台の動きに緊張感が窺えない。次の瞬間、久藤清一のクイックスタートで送られたボールを、素早く動き出してフリーになった黒部が左足で捉えた。仙台は目の前で起こっている状況を茫然と見つめるしかなかった。
それでも、前半を終えて0−1のスコアは仙台にとっては想定内の出来事。勝負所を抑えて手堅く勝点を積み重ねてきた仙台と、後半の立ち上がりにバランスを崩す福岡という、これまでの傾向からみれば、この時点では、勝敗の行方は見えていなかった。
そして、仙台は両サイドバックの位置を高くして攻撃を仕掛け、それを受けて自陣内で守りを固める福岡という図式で後半が始まる。粘り強くはじき返す福岡も、中盤の守備が機能せずに時間の経過とともに守備バランスが大きく崩れていく。58分にはゴール正面でフリーになった富田晋伍に右足を振り抜かれた。このシュートは左ポストに嫌われたが、流れは完全に仙台に。前半をリードして折り返した場合の勝率が3割7分5厘しかない福岡の現状に、いつものパターンかという思いが頭をよぎる。
しかし、この日の仙台は、この時間帯にたたみかけることが出来ない。そして福岡は体を張ってゴールを死守し、押し込まれながらも田中佑昌がロングボールを受けて裏へ飛び出す動きを見せて、虎視眈々とゴールを狙っている姿勢を示す。福岡がギリギリのところで我慢が出来たのも、この田中佑昌の動きがあったからだ。そして、この後半の立ち上がりの15分間、仙台にゴールを許さなかったことで、福岡は再び流れを引き戻した。
そして68分、福岡は試合を決める2点目を奪うことに成功する。自陣中央でボールを拾った田中佑昌は、ボールを右へはたいて一気に前線へと駆け上がってボールを引き出す。そのボールは仙台DFに弾き返されたが、それをフォローした久藤が左へ持ち出すと、田中佑昌が動きなおしてもう一度ゴール前へ。久藤から送られた柔らかなラストパスに右足ダイレクトボレーで合わせた。
その後も集中力を切らさない福岡は、GK六反のファインセーブで仙台からゴールを守り、相手コーナーフラッグ付近で高橋泰と宮原裕司が巧みに時間を使う。そして2−0のままでタイムアップの笛を聴いた。ディテールの部分でのこだわりと集中力の差が福岡に完勝をもたらした。そういうゲームだった。
しかし、福岡にとって、この1勝で全てが解決したわけではない。大切なことは、抱える課題を修正しながら勝利を挙げ続けること。それはこれまでと変わることなく、それなくしては今シーズンは終われない。「福岡はこのくらいの力を持っているということを残りの12試合で見せたい」(黒部)。その言葉を実行するべく、次の札幌との戦いに備える。
そして、「自分たちを見つめなおす、鍛えなおすというところから、やっていかなければいけないと」とは手倉森監督。J1昇格を争うデッドヒートはこれからも続く。そのサバイバルレースに生き残る道は、プレッシャーの中で自分たちの戦い方を貫けるかどうかにかかっている。
以上
2009.09.14 Reported by 中倉一志