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【ワールドカップアジア最終予選 オーストラリア vs 日本】レポート:先制し、相手を本気にさせながらも「防ぎようのある」セットプレーからの2失点で逆転負け。1位通過はならず(09.06.18)

6月17日(水) ワールドカップアジア最終予選
オーストラリア 2 - 1 日本 (19:20/メルボ)
得点者:40' 田中マルクス闘莉王(日本)、59' ケーヒル(オーストラリア)、77' ケーヒル(オーストラリア)
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 いくつかの問題点を抱えつつも日本代表の試合への入り自体は悪いものではなかった。上背のあるオーストラリアの最終ラインに対しては裏を狙う攻撃を心がけ玉田圭司(名古屋)、岡崎慎司(清水)がタイミングを計り続ける。左右両サイドバックが上がる場面こそ少なかったが、前線の4枚が有機的な絡みを見せつつサイドを崩す場面も見られていた。時折前線に入れるクサビのボールにブレが生じ、マイボールを失う場面も散見されたものの、前半10分ごろまでにはオーストラリアを封じ込める事に成功。ボール支配率を高めて行く。岡崎はそうした前半について「悪くなかった。自分としても、スルーパスが通っていれば1対1になれるところもあった。狙いは良かったと思う」と胸を張ってみせていた。

 ホームのオーストラリアは立ち上がりの時間帯に日本との打ち合いを予感させる試合運びをみせてはいたが、最終的にセーフティーな戦いを選択。分厚いブロックを形成して自陣でのスペースを消す事を優先し始める。上背のあるオーストラリア代表が意識してスペースを消しにかかると、さすがの日本代表も思うようには崩せない。最終ラインの裏への飛び出しが影を潜め、それに代わってサイドからの攻撃がその回数を増やす事となる。
 スピードには長けてはいるが、高さや強さといった生まれ持った体格面で勝てない日本代表に対し、オーストラリア代表は1トップのケネディへのロングパスで局面の打開を図る場面が増えてくる。日本代表は、ロングボールに対するファーストディフェンスについて意識して抑え込むことができていたが、そのこぼれ球の処理を誤るとピンチになる。ただ、その点については戦前から各選手が言及しており、実際のところロングボールの処理に関してはファーストディフェンス、セカンドボールの両面である程度しっかりとした守備ができていた。
 日本代表は持ち味の前線からの早いプレスでオーストラリア陣内のボールを奪いにかかるが、彼らが自陣のスペースを消しにかかっている事もあり、オーストラリア代表の選手間の距離は近くなる。そのため、なかなか日本代表のプレスの網にかけるのも難しいという状況だった。もちろんオーストラリア代表の選手個々の技術が高いという側面もあっただろう。パススピードやトラップを含め、基本技術の正確さが見て取れた。そうした状況について、玉田は「今日はある程度、前から守備に行こうと思ったが、相手に落ち着いて回せる選手が多くて難しかったです」と述べ、思うような守備ができていなかった実態を明らかにしている。

 勝利に対するモチベーションにおいて日本代表ほどには高くないであろうオーストラリア代表にとって、ホームではあるにせよスコアレスドローでもOKという試合だったのかもしれない。そしてそうした状況の中、両代表の体格差を考慮した場合に、オーストラリア代表の意思を反映させた戦いへ試合展開は収束していく事となった。だからこそ、40分の闘莉王(浦和)のゴールの意味は大きかった。
 なぜあそこまで闘莉王がフリーになっていたのか、正直なところ理解できないのだが、それにしてもCKという警戒すべき場面で、闘莉王はフリーだった。あれだけフリーにさせてしまえば、闘莉王の力を持ってすればゴールネットを揺らすのはたやすい。オーストラリア代表にとっての無失点記録は、この日本代表戦で止まる事となり、と同時に彼らは自陣にとどまっていた足を、前へと踏み出さざるを得ない状況となる。

 体格のあるチームとの7万人弱を集めたアウェイマッチの舞台で、前から攻めてくる相手との対戦である。これほどやりがいのある場面はない。日本代表はそうした相手の意思による「攻められる状況」を導き出したという点で、評価されていいだろう。そしてそんなオーストラリア代表の力攻めについて、少なくとも流れの中では抑え続けていた。ただ、やはり苦しい時間帯でどれだけ自分たちのペースを保てるのかが重要となる。相手がボールを保持する時間が長くなれば長くなるだけ、セットプレーを与える可能性は増していく。だからこそハーフタイムに岡田武史監督は「もう少しマイボールの時間を長くしないと、うちのサッカーをするのは厳しい。下げてもいいからサイドを変えて、ボールをキープする時間を長くするように」との指示を出していた。

 岡田監督のみならずセットプレーの脅威はだれもが理解していたはず。しかし、日本代表はそのセットプレーでやられる。59分にFKからケーヒルに同点ゴールを許すと、77分にもCKからケーヒルに逆転ゴールを奪われてしまう。オーストラリア代表のストロングポイント、つまり高さと強さに対する怖さを理解し、そのリスクを軽減する方法をハーフタイムに授けていたにもかかわらず、ボール支配率でオーストラリア代表の追い上げを受け、結果的に彼らの狙い通りの形で失点を喫する事となった。
 警戒していた形でやられてしまった、という点で残念で仕方ない失点であり、「防ぎようのある失点だった」と楢崎正剛(名古屋)は肩を落とす以外になかった。

 06年の5月にドイツで行われたドイツ戦だったり、日本代表戦ではないが08年12月に行われたFCWCでのG大阪vsマンチェスターUだったり、という試合において、世界と対戦する時の日本人としての体格面でのハンディを嫌というほどに思い知らされていた。それをこの試合でも見せ付けられてしまった、という点で残念でならない。体格差を個の力や組織力で凌駕できる、もしくは凌駕しなければ世界を驚かす事など不可能であり、体格差の勝負に持ち込ませる回数をどれだけ減らせるのかが日本代表の今後の生命線となる。なぜならば、日本代表が世界で対戦しなければならない相手は、日本人との比較で高さも強さも持つ選手が多数を占めるという現状があるからだ。どれだけ内容で上回っていても、どれだけチャンスを作り続けたとしても、そんな組み立てなど関係なく、頭の上からズドンとヘディングを叩き込まれる場面を何度となく見せ付けられてきた。だからこそ、このオーストラリア代表戦ではそうした体格で上回る相手を、日本代表らしいサッカーで封じ込めてほしかった。そして、それができなかったという点で残念で仕方がなかった。

 逆転後のオーストラリア代表は試合をコントロール。守備に力点を置きつつも、時折鋭い攻撃を仕掛け日本代表の攻撃を封じ込め続けた。そして、集中を切らす事のなかったオーストラリア代表は、最後まで前半40分の失敗を繰り返す事はなかった。そういう点で、彼らの試合運びは大人だった。勝利を目指す日本代表は結局、最後まで追撃弾を決める事ができず。オーストラリア代表に会心の勝利をもたらしてしまう。それがまた、悔しさを増す事となった。
 しかし、それが現実である。大部分は教訓という事になるが、この試合をこのタイミングでできた事を良しとするしかない。少なくとも岡田監督は前半の戦いを振り返り、日本代表に問題を打開するための策を授けていたのである。その点に関しては、ベンチワークを信じていいと思う。後は選手に自覚を持ってプレーしてもらう以外にない。個人的な意見を言わせてもらえば、このタイミングでの挫折は、発生した問題を改善できるという前提が満たされるのであれば、決して悪いものではなかったと思っている。特にこの敗戦に関しては、その理由も改善すべき点も、明確だからだ。
「しかない」なのか「もある」なのかはわからないが、本大会までには1年ほどの時間がある。この時間を有効に使うためにも、この敗戦を前向きに生かしてほしい。世界で日本代表の力を誇示する日が来ることを願う一人として、体格差や試合運びという点について、各選手が、そして日本サッカー界全体が、改善すべき課題としてこの試合を捕らえなければならないと思っている。

以上

2009.06.18 Reported by 江藤高志
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