コラム
宿命のライバル、G大阪と浦和。新シーズンを占う激闘の記憶
2015年2月28日に行われる『FUJI XEROX SUPER CUP 2015』は、G大阪と浦和という因縁深い両クラブの対戦となった。この2チームが、過去の『FUJI XEROX SUPER CUP』で対戦したのは2006年と2007年の計2回。いずれも「シーズンの前哨戦」ともいえるこの大会を象徴する、そんな試合となった。
2006年の対戦は、前年度に初のリーグチャンピオンに輝いたG大阪に天皇杯覇者の浦和が挑む形で開催された。G大阪は日本代表組のDF加地 亮、宮本 恒靖のコンディションが整わないと判断して先発から外したのに対し、浦和はMF小野 伸二、三都主 アレサンドロ、DF坪井 慶介、GK都築 龍太と全員が先発入り。またG大阪はFWマグノ アウベス、浦和はFWワシントンという新シーズンに向けて補強したブラジル人ストライカーをスタートから使ってきた。
試合は開始2分、ファーサイドへ流れたCKを坪井がオウンゴールで押し込んでしまうという意外な形でスタートする。だが、浦和も黙ってはいない。9分、対面のMF寺田 紳一を翻弄した三都主がFKのチャンスを奪うと、このキッカーはFWポンテ。この後、正確無比なキックで多くの印象を残すことになる名手が放ったボールにDF堀之内 聖が合わせ、試合は振り出しに戻る。
このあとは、「ワシントン」という名前が観衆と視聴者の記憶に刻み込まれる時間だった。まずは17分、小野のアウトサイドキックでのスルー パスから190cm近い巨体が意外なほどのスピードで抜け出し、逆転ゴール。さらに51分には、ゴール前でのルーズボールに対して、DF優位の状況から体を張ってマイボールに。こぼれたところを三都主がつなぎ、最後はポンテが矢のようなミドルシュートを突き刺し、スコアは3-1に開いた。
G大阪は加地、FW播戸 竜二を投入して反撃に出たが、浦和も当時19歳のMF細貝 萌ら交代カードを切って、逃げ切り。見事にタイトルを勝ち取った浦和はその勢いをシーズンに持ち込み、リーグと天皇杯の2冠を獲得。飛躍の時代を迎えることとなった。
一方、2007年の対戦では、前年度に無冠で終わっていたG大阪が鮮烈な印象を残すことになる。2年目のDF安田 理大が左サイドバックの先発に大抜擢されていたこの試合、G大阪は立ち上がりからMF遠藤 保仁を中心に試合の主導権を握っていく。31分にはその遠藤が繰り出した絶妙の縦パスからMF二川 孝広がシュート。これは浦和GK山岸 範宏に阻まれたものの、こぼれ球をマグノ アウベスが押し込んで、先制に成功した。
この1点で流れは完全にG大阪へ。42分、ハーフウェイライン手前でボールを受けた二川がそこからドリブルを開始。ゆっくりとしたペースに浦和の選手がパスを警戒していると、そこからの急加速で浦和MF二人を置き去りにし、最後はペナルティーエリア手前から右足のミドルシュート。強烈な弾道がゴールへと突き刺さり、貴重な追加点となった。
二川が決定付けた流れは、後半になっても揺るがない。浦和は62分にFW岡野 雅行を投入して反撃に出るが、勝負を決定付ける3点目が生まれたのはその直後だった。67分、ペナルティーエリア前で二川がダンスを踊るかのように華麗なステップを踏んで相手のプレッシャーをいなし、必殺のスルーパス。抜け出したMF橋本 英郎のシュートはGK山岸が至近距離で防ぐが、こぼれ球を抜け目なく決めたのは、やはりマグノ アウベス。青黒の点取り屋は81分にもこぼれ球に詰める形で追加点を記録し、ハットトリック。大会最多得点差となる4-0のスコアでG大阪が完勝を収めた。
G大阪はこの年、リーグ戦こそ3位に終わるも、ヤマザキナビスコカップを初制覇。翌2008年にはパンパシフィックチャンピオンシップを制し、AFCチャンピオンズリーグをも制覇。FIFAクラブワールドカップでも3位に入るなど、確かな力を示すことになる。
タイトルマッチでありながら、シーズンの行方を占う前哨戦でもある『FUJI XEROX SUPER CUP』。前年度に好成績を残したからこそ出場を許される両雄の今シーズンの出来はいかなるものか。2015年2月28日、日産スタジアムで2015年のJリーグが見えてくる。
川端 暁彦