J1&J2クラブの戦力を徹底分析
広島サンフレッチェ広島
厳しい競争こそ、奪還へのエネルギー。攻撃力を改善し、タイトルを握る今季のみどころ
肩で息をつぎ、両手を膝に当て、腰を落としてしまう。心拍数が尋常ではなく上がった状況下で、さらに松本良一フィジカルコーチが言う。
「さあ、次。もっとスピードを上げて」
強度的には、過去最高レベルのトレーニングを敢行した鹿児島・霧島キャンプ。だが選手たちは歯を食いしばって頑張り抜き、負傷による離脱者を1人も出さなかった。「いい準備をしていた証拠」(松本コーチ)だろう。
ここ2年間、広島はFIFAクラブワールドカップ出場や天皇杯決勝進出、AFCチャンピオンズリーグ出場の影響もあり、オフやキャンプ期間を短く設定せざるを得なかった。必然的に十分に疲労を回復させることも肉体的に追い込むこともできなかったのだが、今季は約1カ月半に及ぶ長期のオフと合計26日間にも及ぶ長期キャンプを敢行。問題を抱えていた「1年間を戦い切る体力」を十分に身に付けたことはポジティブな要素だ。
髙萩洋次郎や石原直樹、ファン ソッコら主力の移籍が痛手にならないはずはない。だが、ドウグラスが開幕前から見せつけたパワーは『開花前夜』を思わせ、工藤浩平や佐々木翔ら新加入組も実績十分。病気から回復した森﨑浩司やシャドーに挑戦中の柴﨑晃誠がクオリティーを見せれば、野津田岳人や浅野拓磨、川辺駿や吉野恭平ら、若者たちが躍動を感じさせる。特に昨季で実績を積んだ宮原和也の成長には目を見張る。
各ポジションに複数名が名乗りを挙げる激しいポジション争いの中、広島は昨季届かなかったタイトルに手を伸ばす。
以上
Reported by 中野和也
開幕時の予想布陣
2チームをつくっても戦えるほど、選手層が厚みを増してきた。
たとえばFWには高さの皆川佑介、パワーのドウグラス、スピードなら浅野拓磨とバリエーションが豊か。
シャドーではパワフルな左足の野津田岳人やパス感覚に優れた川辺駿らの若者たちに加え、経験豊富な工藤浩平もいる。
最終ラインでも圧倒的な強さを誇る佐々木翔や読みに優れた宮原和也、統率力に魅力のあるU-22日本代表の吉野恭平などがアピールに成功。開幕戦の布陣が、そのままシーズン通じての主力となる保証はどこにもない。
広島が解決すべき緊急課題とすれば、2人の主力が一気に抜けたシャドーの位置を誰に任せるか。その課題に対して森保一監督が打ち出す解決策の1つが『柴﨑晃誠』だ。パス成功率90%以上を誇る精密機械のようなボランチだが、裏への決定的な飛び出しも武器として持っている。国見高時代には全国高校選手権得点王の経験もある柴﨑の才能がシャドーで引き出されれば、広島の攻撃はさらにバラエティー豊かになっていくはずだ。
今季のキャンプで森保監督は、肉体的な強化とともに攻撃面を優先して練習メニューを構築している。戦術的リーダーの森﨑和幸も「自分のラインを5〜10mくらい高く上げて、攻撃に厚みを加えたい」と語っており、昨季は1試合平均1.29点に終わった得点力改善への意志が、チームとして強く伝わってくる。そのカギを握るのは、やはりシャドー。複雑な役割が求められるこの位置が機能すれば、広島の美しい攻撃はさらに迫力を増してくるだろう。
以上
Reported by 中野和也
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