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【J2:第42節 山形 vs 東京V】レポート:冨樫イズムが浸透する東京Vが攻めて勝ちきる!敗れた山形は6位となり初のJ1昇格プレーオフへ(14.11.24)

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「1年間戦ってきて6位以内という形でプレーオフに進出ができることは、本当に素晴らしいことだと思いますし、それも選手の頑張り、サポーターの応援のお陰、いろんな方の力があったからプレーオフに進出できたと思ってます。そこにはしっかり感謝していきたいと思います」
最終戦では敗れ、1差で追う7位・大分の結果次第では得られなかったかもしれないポストシーズンの権利。石崎信弘監督はまず感謝の言葉を伝えた。しかし、話がここで終わる監督ではない。
「ただ、この1年言い続けてきたことですね、やはり課題として決定力不足、イージーなミスでの失点というところ、改善しなければいけないところを1年間ずっとやってきたんですけど、今日のゲームのなかでやはりそういうところが出て負けてしまったのではないかなと」
そう言ってチームにお灸を据えた。遠い将来の目標としてではなく、目の前まで迫っている試合への喫緊の課題として。

フロントの健闘に加え、監督・選手も積極的にメディアへ露出し、気運を高めて臨んだ最終節。スタンドは今季最多の13,344人で埋められた。その熱気のなかで、山形のプレーにはふだんよりもやや硬さが目立った。「はじめに3バックの裏を相手がすごい狙ってきてて、ラインが下がったときに中盤とのギャップができた」(當間建文)ところで9分、相手の足元のボールをさらった平本一樹がそのまま縦に持ち出すと、東京Vの攻撃陣が一斉に裏へ飛び出した。準備の態勢ができていなかった山形は完全に後手を踏む。抜け出した南秀仁がスルーパスをダイレクトで流し込み、先制に成功した。
硬さが抜けきらない間に失点した山形は、しかしその2分後、中盤の混戦から松岡亮輔がかき出したボールを川西翔太がバイタルエリアで受けてターン。フェイントを入れて左足に持ちかえると、空けたシュートコースに向けてスピードに乗ったボールを蹴り込んだ。

この早い段階での同点ゴールで硬さがほぐれた山形はこのあと、攻勢に出る。13分、カウンターで中央をドリブルするディエゴから送られたスルーパスに山崎雅人が飛び込んだ。このシュートは浮いてしまったが、24分には山田拓巳の右クロスに、センターバックの石川竜也がファーサイドでヘディングを合わせた。これもGK柴崎貴広にキャッチされゴールはならなかったが、山形のボールは敵陣でよく回った。

ただし、東京Vも簡単に逆転を許すことなく、粘り強い守備の対応を続けていた。「前半は高いラインコントロールでコンパクトにというのをやっていたんですけど、2〜3本バイタルを崩されて危ない場面があって、実際に失点もそういう場面でした。それがあったので、ちょっとラインを下げて、後ろでコンパクトにという意識統一のなかでやったので、意識統一がうまくできたのかなと思います」(井林章)。また、圧倒するほどにチャンスをつくりながら2つ目のゴールが奪えなかった山形側にも「何回かいい形があるんですけど、慌ててシュートしてしまっているシーンがあったと思いますし、反対に落ち着き過ぎてほかの人に回してしまって、結果的に入らなかったシーンと、そこらへんの判断という部分」(石崎監督)という原因があった。42分にも連係する山崎、ディエゴからのスルーパスに飛び出した川西が決定機を迎えたが、シュートはサイドネットを揺らし、前半は1-1で折り返した。

「後半の最初のほうは、また前半と同じような入りをやってしまって、つなぎに行ったところで詰まって、取られて、カウンターを食らうというシーンが多くなって、そこから後手を踏むディフェンスが多くなりました」(石井秀典)と、後半の山形も立ち上がりには苦労する。49分、東京Vは右サイドから前田直輝がカットインしながらファーサイドへクロスを送ると、南の落としに平本がシュート。これは枠を逸れたが、決まれば山形にとってダメージの大きい失点になるところだった。東京V側も「前半もちょっと押される時間もあったし、僕らとしては攻撃もしたいなという感じでハーフタイムに修正したいという話だった。もちろん守備する時間はあると思いますけど、攻撃にもっと懸けたいという気持ちもあった」(中後雅喜)と再度攻撃的な姿勢をもってピッチに入っていた。前がかりになったことで、中盤のスペースをディエゴに突かれカウンターを何度も受けることになったが、それでも攻撃への意欲を緩めなかった。

互いに交代カードを切りながら試合は進んだが、時間とともに山形の守備の圧力が弱まり、東京Vはパスを使って敵陣へ入り込むことが容易になってきた。しばらく東京V優勢の時間が続いた87分、左サイドバックにポジションを変えていた安西幸輝からサイドチェンジ。高木大輔のクロスに北脇健慈がシュート。ピンポイントで合ったわけではなく、懸命に伸ばした足になんとか当たったことでイレギュラーな軌道になったことも幸いしながら、途中出場の2人がチームを7試合ぶりの勝利に導いた。

「今日のゲーム、相手はプレーオフ進出が懸かっていて、自分たちは残留を決めたばかりで、もしかしたらみなさん、私たちが少しほっとしてゲームに来るのではないかと思っていたかもしれませんが、自分たちは、未来を変えるためにも今日のゲームというのは非常に重要に思っていましたし、今日のゲームをしっかりと、目の前のゲームを勝つということで次が開けると思っていた」。冨樫剛一監督が9月にトップチームの指揮を執って11試合目、失点の減少で競った試合が増えていたなか、今シーズンを締めくくる最終戦で、ここ最近で感じていた手ごたえがようやく勝利という結果に結びついた。「来年につながる1勝でもありますし、監督が冨樫さんに代わって11試合目なんですけど、そこで培ったものが出た試合なのかなと思います。もっとできると思います、ヴェルディは」。この言葉を発した南にも、未来が変わる音が聞こえたはずだ。

今シーズン最大の目標であるJ1昇格の可能性を残した山形は、水曜日に天皇杯準決勝(vs千葉@ヤンマー)をはさんで30日、磐田とのJ1昇格プレーオフ準決勝(@ヤマハ)に臨む。キャプテンの山崎は「6位に入って失うものがないというか、いままでやってきたことを出すだけ。どっちも(準決勝は)アウェイですけど、自分たちのサッカーをすることだけ考えて入りたいと思います」と語った。日程面など条件は厳しいが、挑む覚悟はすでにできている。

以上

2014.11.24 Reported by 佐藤円
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