「自分たちがやりたいことを、今日は出来なかった。逆に相手にボールをしっかり持たれ、受けに回る時間が長くて。何度か自分たちの形で崩せた場面もあったが、自分たちがやろうとしているサッカーからはかけ離れていた」
試合後、神戸の安達亮監督は渋い顔でそう言い残し、記者会見場を後にした。
ボールを奪って、ボールを保持し、攻守の切り替えを早く、時にショートカウンター、時にDFラインからのビルドアップ…。今シーズンの神戸が目指してきたサッカーは姿を消し、逆に横浜FMに神戸がやりたいサッカーを体現されたような試合だった。
前半の立ち上がりから、横浜FMがハイプレスをかけて神戸を押し込み、ボールを奪ってからは選手が連動して面白いようにパスが回る。両サイドバックの小林祐三と下平匠がリスクを背負いながらも高い位置をキープし、2次攻撃、3次攻撃に参加していく。神戸は最終ラインの増川隆洋と河本裕之がなんとか相手の攻撃を跳ね返すが、セカンドボールはことごとく横浜FMのファビオや兵藤慎剛に拾われた。
そんな展開の中、24分に下平のパスを受けた齋藤学が左サイドをドリブルで抜け出し、ニアへ走り込んだ伊藤翔へピンポイントパス。それを伊藤が右足アウトサイドに当てて流し込み、横浜FMが先制に成功した。
先制点を挙げた伊藤は試合後、樋口靖洋監督の退任が決まった中で迎えた今節についてこう振り返っている。
「監督にいい思いをしてほしいというのはあった。でも、こうなってしまったのは僕の責任でもあり、僕たちの責任であることは間違いない。そういうのを1人1人が思いながら今日はピッチに表現できたと思います」
まさに樋口監督に捧げる先制ゴールだった。
その後も試合は横浜FMが主導権を握り続けた。だが、この日の2点目を挙げたのは劣勢の神戸だった。38分、センターバック増川がクリア気味に前線へボールを放り込むと、そのボールに小川慶治朗が猛ダッシュ。プレッシャーを受けた横浜FMのセンターバック中澤佑二が浮き球の処理ミスで空振りすると、小川がそこに詰めてゴールへ流し込んだ。“勝利”にこだわった小川の執念の同点ゴールだった。
後半、流れを引き戻したい神戸だったが、選手交代などの策を講じずにゲームへ突入。50分過ぎには横浜FMのファビオから小川がボールを奪い、ショートカウンターからマルキーニョスがシュートを放つがGK榎本哲也に阻まれた。これが決まっていれば流れは大きく変わったかもしれない。だが、追加点を挙げたのは横浜FM。53分に藤本淳吾からのクロスを兵藤がしっかり頭で合わせてゴールネットを揺らしてみせた。1点リードした横浜FMのパスワークは、さらに落ち着きを見せることになっていった。
追いつきたい神戸は失点直後の54分に精彩を欠いたペドロ ジュニオールに代えて枝村匠馬を投入。63分にはドリブラーの石津大介、83分にはエアバトラー田代有三をピッチへ送り込み、やや強引に横浜FMゴールをこじ開けにいった。84分過ぎにはセンターバック増川からの鋭い縦パスを受けたマルキーニョスが反転シュートを放つが、これもGK榎本のファインセーブに阻まれる。そのこぼれ球を森岡亮太がセンタリングを上げて田代が詰めたが惜しくもゴールならず。このビッグチャンスを逃した神戸は最後まで追加点が奪えないまま、苦い敗戦を喫した。
理想的なゲーム運びで勝利し、10位から7位に浮上した横浜FM。スタジアムを引き上げる選手たちからも笑顔が見られた。だが、決勝ゴールを挙げた兵藤は「本当はあれだけボールをポゼッションしていたらシュートで終わる機会をもっと増やさないといけないですし、もう少しチャンスを作れたんじゃないかと思うので、そこは反省かなと思います」と勝って兜の緒を締めた。次節は新潟を迎えてのホーム最終戦(11/29)。少しでも目指してきたサッカーを追求するつもりなのだろう。
一方、9位から10位に後退した神戸は、今節の敗戦を糧に残り2試合で自分たちのサッカーをピッチに刻めるかどうかが焦点になる。次節はアウェイで優勝争いを演じているG大阪との一戦(11/29@万博)、そして最終節はホームでの川崎F戦(12/6@ノエスタ)。クラブ最高順位の9位を上回って今季を終えるために、勝点6を目指すことになる。
以上
2014.11.23 Reported by 白井邦彦
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