ネルシーニョ監督の柏に、大宮はホームで1度も勝てなかった。アウェイでは3勝1分だが、ホームではヤマザキナビスコカップと天皇杯を含めこれで2分5敗。象徴的な試合が2011年のリーグ戦と2012年の天皇杯で、いずれも前半は圧倒しながらも後半にシステム変更やメンバー交代によって流れを変えられ敗戦した。そして今年のホームでもまた、後半のネルシーニョ・マジックに大宮は屈した。
前半は大宮のペースだった。最終ラインを高く押し上げ、4−4−2の守備ブロックを保ち、シンプルにレアンドロに入れてくる柏の攻撃を食い止めた。サイドハーフが高い位置を保って守備をすることで、攻撃に移ったときにサイドに起点を作りやすく、流れてきたFWやサイドバックも絡んでチャンスを作り出す。17分にセットプレー後のポジションチェンジで生まれた一瞬の隙から、高い最終ラインの裏に走り込んだ太田徹郎に先制ゴールを許すものの、前半終了直前、ペナルティエリア内右に侵入した家長昭博からのクロスを橋本晃司がヘディングで押し込み、大宮としては良い形で前半を終えた。
その勢いで後半に逆転できる――そう思わせる内容であり、渋谷洋樹監督も「点を取りに、前へ前へ」と、ハーフタイムに選手たちを煽った。一方のネルシーニョ監督も、「自分たちのミスで相手にリズムを与えているぞ!」と、激しく檄を飛ばしていた。と同時に、老練な知将は、若い茨田陽生に代えてベテランの栗澤僚一をピッチに送る決断をする。
「高山に入ったときに茨田には横や後ろでサポートするように試合前から話していたが、茨田が前に入りすぎていた。結局彼にボールが入らず、裏のスペースも上手く作り出せず、逆にボールを取られたときに茨田の空けた穴を使われて後手を踏んでいた。それが交代の理由です」(ネルシーニョ監督)
この柏のボランチ交代が、劇的な効果を生む。対峙した大宮のボランチ金澤慎は、「ゲームをコントロールされている感じがあった」と証言する。
「栗澤選手が入って、ボールが落ち着くというか、短いパス交換から長い展開とか、前半にはなかったような形が増えてきた。自分が対峙するので、プレッシャーに行くと、空いたバイタル(エリア)にパスを通されたり、そういうシーンが増えたことで、プレッシャーに行けない場面が少しずつ増えてきた」
そうして49分のドゥドゥの決勝ゴールが生まれる。中盤の底の大谷秀和に対する金澤、バイタルで縦パスを受けた太田に対する片岡洋介、最終ラインの裏に抜けたレアンドロに対する高橋祥平と、「(プレスに)行くタイミングが1つ1つズレていた」(渋谷監督)ために寄せ切れず、それぞれに絶妙のパスを通されて失点した。1つ目のズレは、なかなかプレッシャーに行けない状況に我慢しきれなかったためであり、その後のズレは連鎖的に後手後手となった結果である。
ネルシーニョ監督のねらいは的中した。その後も大宮を柏が攻めたてる。後半のシュートは、柏が8本を数えたのに対し、大宮は1本。前半はあれだけ攻守に組織だっていた大宮だったが、「追いつかなきゃいけない状況で、バランスを崩して攻撃して、ポジションが定まらず」(金澤)、もはや組織はガタガタだった。その状況に業を煮やしたか、カルリーニョスが後半だけで2枚のイエローカードを受けて退場。柏はカウンターから3点目を奪っておかしくない場面も1度や2度ではなかったが、チャンスを生かせず。それでも危なげなく、ゲームを支配したまま試合を終えた。
ただ、試合後の渋谷監督は、ネルシーニョ采配よりも、「私が『前へ前へ』とメンタル的に煽ったことが、逆(効果)になってしまったかもしれない」と、自身のチームマネジメントに敗因を求めた。
「後半の入りで勢いを持たせるために言ったことだが、チェンジサイドすればサイドで起点ができ、そこでクロスを上げて点を取る。4−4−2をしっかり作る。その形がまずできた上でゲームがあるのに、私が『前へ前へ』と言ったことで、選手が何もジャッジせずに前へ行ってしまい、バランスが崩れたのかもしれない」
それも1つの正解だろう。その結果として、攻撃陣と守備陣の間で間延びを生じて、その間を柏に自由に使われることになった。攻撃でも、「外に張っている選手が少なくなって、全体的に中、中で組み立てようとすることが多くなってしまった」(金澤)ことで、前半のようなサイド攻撃が見られなくなった。69分に切り札の泉澤仁を投入すると同時に、ズラタンを右サイドハーフに回して再びサイド攻撃を強化したが、いったん崩れたバランスは容易に修正できなかった。ただ、そこを修正するのも監督の手腕のうちであり、後半の頭から思いきってカードを切ったベテラン監督と、リードされてから流れが悪いままに20分間もカードを切れなかった新米監督と、比べるのは酷かもしれないが、勝敗を分ける差がそこにあったと言わざるを得ない。
柏は勝点3を得たが、鹿島と鳥栖も勝利したためACL圏との差を詰めることはできなかった。しかしこれで5連勝と、今最も勢いに乗っているチームといって過言ではない。残り2節でその目標を果たす可能性は十分にある。
対して大宮は、仙台と清水がそれぞれ引き分けたために残留圏との勝点差は3に開いた。救いは、勝点で並んだ場合に得失点差で上回れる公算が大きいことか。もちろん棺桶に片足突っ込んだ状態に違いないが、他力本願とはいえまだ希望はある。下を向いている暇はない。
以上
2014.11.23 Reported by 芥川和久
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