中断が明けて残り3節、大宮は降格圏の16位で迎えた。その初戦となる柏戦を、選手たちは「今シーズン最も重要な試合」(ムルジャ)と位置付ける。15位・清水、14位・仙台とは勝点2差だが、「とにかく自分たちが勝たなくては始まらない」(渋谷洋樹監督)のが、大宮の置かれた状況だ。一方の柏もACL圏内とは勝点3ないし2差で、こちらもモチベーションは高い。お互いに負けられない、勝たなくてはならない一戦となる。
大宮も柏も9月以降の成績は同じ5勝1分3敗だが、大宮が直近の3試合で1分2敗とブレーキがかかった感があるのに対し、柏は4連勝で中断期間に入った。大宮にとっては、このワンクッションは救いになったはずだ。再度チームのやり方を確認するとともに、負傷で戦列を離れていた金澤慎、渡部大輔らも復帰した(ただし北野貴之、福田俊介ら新たな離脱者も出てしまったが……)。特にユース時代からの教え子で、渋谷監督の守備戦術を最も理解するボランチ金澤の復帰は心強い。金澤を軸に、より慎重に入るなら増田誓志、より攻撃的に行くならカルリーニョスと、ゲームプランに合わせてダブルボランチを選択できる。ボランチのゲームを読む目とハードワークが渋谷戦術の生命線だけに、この大一番にどの組み合わせで臨むのかにまず注目したい。
柏にとっては中断で勢いに水を差された感はあるだろうが、その辺りのチームマネジメントもネルシーニョ監督にはお手の物だろう。大宮同様、中断期間中に茨田陽生がケガから復帰し、増嶋竜也が新たにケガしたりといった情報もあるが、長期離脱中の近藤直也を除きほぼベストメンバーがそろいそうだ。
特に大宮が警戒するのが、かつて2005年に大宮に在籍したレアンドロだ。「レアンドロが攻撃の起点で、最後のクロスが入ってくるのもレアンドロ。アシストでも点に絡むし、一発があって、それを仕留める能力というのはすごい。大宮にいたときはまだ19歳で、体も華奢だったけど、成長しましたね」と、渋谷監督もかつての教え子の活躍に目を細めている場合ではない。「クロスを上げさせないことが重要で、特にサイドの守備が重要になってくる」と、徹底的にレアンドロへのボール供給を封じ込めるつもりだ。
ポイントは、システム的にミスマッチとなる3-4-3の柏に対して、いかに大宮が「4-4-2のラインを作ってやっていくか」(金澤)。さらに言えば、サイドハーフがいかに守備で高い位置を取れるかにかかっている。高山薫、橋本和の柏の両ワイドは、走力も正確なクロスもあり、「守備で外を捨てるのは怖い」(泉澤仁)。かといって大宮のサイドハーフがそこに引っ張られて押し込まれると、「自由にボールを持たれてしまうし、自分たちがボールを奪っても攻めに行くのが大変になってしまう」(渡部大輔)。その状況を作らせないためには、「ボールにしっかりプレッシャーをかけることが大事。特に、相手のボランチに対してうちのボランチがしっかり行くこと。そうすれば後ろも周りも決まって、入ってきたボールを奪える」と、渡邉大剛は言う。理想的には、「向こうの3バックがボールを持って、どっちかのサイドにズレたときにサイドハーフがプレッシャーをかけに行って、そこで全体にスイッチを入れて連動すること」(渡邉)で、そこでハメてボールを奪えれば、サイドハーフが高い位置にいるために攻め手が広がる。
大宮としては、勝つために得点を奪わなければならないが、「まず守備ありき」の姿勢は変わらない。良い守備から良い攻撃につなげていく、それが大宮の伝統だ。ムルジャとズラタンの2トップ、家長昭博と泉澤のサイドハーフと、攻撃のタレントはそろっている。ムルジャは言う、「11人全員が守備に参加すること、それが残留争いのキーだ」と。決して専守防衛ということではなく、より良い攻撃のために、11人全員で「攻撃性を持った守備」(ズラタン)を遂行することが、これからの戦いには求められる。
もちろん柏もACL出場をつかむために必死で向かってくるし、4-4-2のブロックを攻略する方法も持っているだろう。順位にも表れている彼我のチームの成熟度は、柏が上なのは間違いない。それでも大宮はチーム全員が、「ここで勝てなかったら終わり」(金澤)といった気持ちで臨む。「ここから先は技術云々よりメンタル。勝ちたい気持ちが強いほうが勝つ」(高橋祥平)。残留とACLをかけた大一番、どちらの気持ちが上回るか。
以上
2014.11.21 Reported by 芥川和久
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