ギリギリでのJ1昇格プレーオフ圏内を目指す横浜FCと岡山の両チームにとって、勝点3以外は死を意味するゲーム。そういうこの試合の意味を、お互いのチームが徹底的に表現したゲームだった。ともにゴールへの執念をMAXまで見せたが、この執念の戦いで上回ったのは、8試合勝利なしと苦しんでいた岡山だった。
前半のシュート数は、横浜FCが10本、岡山が3本。この数字が示すとおり、前半試合を引っ張ったのは横浜FCのほうだった。苦手の3−6−1の相手に対して、4−3−3(4−1−4−1)のフォーメーションで試合に入ると、3バック攻略の王道であるサイドの奥のスペース、そしてワイドの選手の引っ張り合いで勝利。守備がハマらない岡山に対して、小気味よくパスを繋いでいく。しかし、一方でセットプレーには持ち込めるものの、「ある程度いい感じには繋がっているけど、結果的には良い形にはならなかった」(小池純輝)というように、中を固める岡山の前に本当の決定機は数字ほどは多くなかった。一方で、「試合前に監督から、とにかくボールに行くんだという風に言われた」(田所諒)岡山が徐々に中盤での守備のリズムをつかみ始めた38分、横浜FCがDFラインでクリアの機会をうかがっているところに岡山がプレスを掛けると上田康太がパスカット、田所のフリーランニングで空いたスペースを利用し、押谷祐樹がファインゴールを決める。影山雅永監督は「選手達が押し込まれていた状況からもう一度勇気を持って戦うと言うことに対して非常に大きな得点だった」と振り返ったが、このゴールは岡山に大きな勇気を与えた。
後半、横浜FCは逆転に向けて大きく動く。スタートから松下年宏を黒津勝の近くに近づけリスクを大きく掛けつつ、全体で相手を押し込む4−1−3−2の形に変更。58分の野崎陽介の投入で、その形をさらに強める。このある意味捨て身のシステム変更で、横浜FCは岡山を押し込みボールをゴールに近づけるが、岡山の強い組織と体を張ったプレーに決定機を作らせてもらえない。76分の小野瀬康介の投入で3バックに変更し、最後の執念の采配を見せるが、78分ボールの処理にもたつく松下裕樹から押谷がボールを奪うと、そのままGKとの1対1を制して2点目。試合を決めるゴールとなった。そして、試合はそのまま2−0で終了。試合を通じてのシュート数は横浜FCが17本に対して岡山は6本だったが、「心に火を燃やした」(影山監督)岡山が、球際、ゴール前といった局面の戦いで横浜FCを上回り、この試合の唯一の意味である勝点3を収めた。
横浜FCは、この敗戦でJ1昇格プレーオフ出場への可能性が断たれた。試合を振り返れば、ペースをつかんでいる時間にゴールをしておけば、という典型的な試合だったが、接戦をものにするしぶとさという点で、特に1失点目の後に少し勢いを落としてしまったところが、今シーズンを前半の勝てない時期の弱い部分を見せたようだった。今シーズンの後半に掛けて、本格的ストライカー不在の中で得点のバリエーションを増やして順位を上げてきたが、残り2試合で後半に育んできたサッカーを、王者湘南、そして北九州に出せるか。残りの2試合も全力で戦う必要がある。
対する岡山は、後半の失速をついに止める大きな勝利を果たした。それも、自分達の力で、綿密なトレーニングとハードワークという本来の岡山の強みを取り戻したことに大きな意味があるだろう。シーズンの最後の最後の勝負を決めるのは、まさに影山監督の言葉にある心の炎の強さ。6位までの勝点差は4。残り2試合の連勝に向けて、大きく踏み出せる一勝だった。
ハードワークを90分続けた岡山、勝てなかったが大きくリスクを掛けて早い時間からゴールへの執念を見せた横浜FC。ともに、シーズン終盤の勝負の試合にふさわしい姿勢を見せた好ゲームだった。ラスト2。選手・監督・スタッフが見せる執念から目が離せない。
以上
2014.11.10 Reported by 松尾真一郎
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