勝点3差の17位C大阪と13位甲府が激突したJ1残留争い直接対決は、甲府が62分から73分にかけての電光石火の3得点で、C大阪を3−1と下し、前節に続く逆転勝利を達成。勝点を36に伸ばし、J1残留確定へ大きく前進した。一方のC大阪はカカウのホーム4試合連発弾による先制点も実らず。同日勝利した15位清水との差が4に広がったことで、いよいよ崖っぷちに立たされた。
大勢の桜色のサポーターによる選手バスの出迎えも実施。拍手で、精一杯の声援で、いくつもの大旗で、イレブンを鼓舞。「最高の雰囲気でしたし、気持ちももちろん伝わってきていた」と、チーム一筋12年の酒本憲幸も言うように、J1残留という目標達成のため、試合前から勝利へのムードは高まっていた、C大阪。そして、試合でも、25分に、酒本のプレスをきっかけに、相手のミスパスを誘い、これをカカウがしっかり決めきり、試合の主導権を握った。41分にも杉本健勇のシュートで甲府ゴールを脅かし、そこで奪ったCKから最後は長谷川アーリアジャスールに好機が舞い込み、これはゴールライン上で相手にクリアされたが、チャンスは続いていた。甲府の好機も、盛田剛平のヘッドのみと言ってもいいような形だった。1−0で終えた前半までは、理想的な展開だった。
だが、後半に入ってから、徐々に閉塞的な状態に陥っていくなかで、先に甲府側がクリスティアーノを投入して反撃のスイッチを入れてこられたときに、C大阪は対応できず。その直後の62分、クリスティアーノをファウルで止めたところからの、1つのセットプレーで、完全に流れを甲府に持って行かれた。ハーフウェイライン近く、C大阪からみれば左サイドでの、甲府FK。石原克哉から上がってきたハイクロスに対して、ペナルティーエリアライン近くで盛田の189cmの長身に合わせてきたところへ、C大阪DF藤本康太が競りにいったが、わずかに及ばず。しかも、その盛田のループ気味のヘディングシュートは、GKキム ジンヒョンの頭を越えて、ゴールに吸い込まれてしまった。
この同点弾を受けた衝撃は、C大阪にとって大きかった。甲府の圧力を受け、完全に後手に回ってしまった。69分、クリスティアーノを丸橋祐介がペナルティーエリア内で倒したかに見えたプレーは、ノーファウルの判定だったが、その1分後、今度は阿部拓馬を藤本が止めに行ったところでは、家本政明主審のジャッジはPK。これを甲府の主将、山本英臣に冷静に決められ、勝ち越された。その直後に4試合ぶりの登場となるフォルランを加えるも、甲府の加速した勢いは止められず。その1分後の73分には保坂一成に今季初得点となる追加点を決められ、リードを2点に広げられた。3失点いずれもが、丸橋、扇原貴宏、南野拓実といった、C大阪攻撃の軸が揃っていた左サイドから崩されたのも、皮肉としか言いようがない。
77分に楠神順平を送り込んだC大阪だが、その後も甲府の決定機が続く苦しい展開。フォルランとカカウを前線に並べても、甲府に脅威を与えられず。結局、後半のシュートは、終了間際のフォルランのFKによる1本のみ。それも、甲府GK荻晃太に止められるなど、ホームチームに2点差を跳ね返す力はなかった。23,378人も集まった長居の地にて、未来のかかった大事な試合で、後半は特に持ち味さえ出せず、逆転負けを喫したことは、C大阪にとって、痛恨の極み。試合後のスタンドも甲府サポーターの一角を除いて静まりかえり、ミクストゾーンでのC大阪イレブンもショックで意気消沈。言葉を発することができないままバスに乗り込む選手たちも少なくはなかった。
そのなかでも、なんとか報道陣に対応した選手たちは、「せっかく今日も、たくさんのファン、サポーターが来てくれたなかで、こういう大事な試合を勝てないというのは、やっている選手としても、本当にふがいない」(長谷川)、「(サポーターに)すごく申し訳ない思い」(南野)と反省の弁を述べ、「まだ終わったわけではないから、みんなでもう1回やり直していきたい」(楠神)と必死に前を向いた。残された試合は、わずか3。早ければ次節にもJ2降格条件のJ1での16位以下が確定してしまう状況にもなってしまった。それでも、残留争い中の仙台、大宮との直接対決も残しているC大阪。「望みある限り、J1残留できるように頑張りたい」と酒本。次節までの20日間で、チーム一丸となって立て直すしかない。J1に居続けるべく、桜のプライドにかけて、ここであきらめるわけにはいかない。
一方の甲府は、38歳の盛田、34歳の山本、31歳の保坂と、経験豊富な選手たちが大仕事をやってのけた。また、ジウシーニョが出場停止で不在、マルキーニョス パラナが前半途中で負傷交代を余儀なくされるなど、メンバーが変わるなかでも、「立ち返る場所があるというのは、1つの大きな強み。誰が出ても厳しい守備ができる、1点先制されてもリードしていても、同じように守備ができるというのは、我々の強みだと思う」と荻も述べるように、持ち味の堅守をしっかり発揮。城福浩監督の采配も的中し、後半の攻勢も見事で、甲府らしいサッカーで、アウェイでの大一番を制した。それでも、城福監督は、「我々の立ち位置というものは変わらないと思っているので、残り3試合、今日のような強い精神力を持って臨みたい」と、気を引き締めなおしていた。この試合の勝利を契機に、甲府は一気にJ1残留確定へ突き進みたいものだ。
以上
2014.11.03 Reported by 前田敏勝
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