長かったリーグ戦も残り5試合。昇格、降格争いはし烈を極めている。大分銀行ドームでは、勝点54で8位の大分が、同じ勝点で7位の岡山を迎える上位対決。互いにプレーオフ圏内の6位との勝点差は1だが、残り試合や上位陣との直接対戦を算段すると、この試合に勝った方がプレーオフ出場権利を手繰り寄せる可能性は高い。逆を言えば、負けはJ1への道を閉ざされることを意味する。生き残りを懸けたデスマッチがいかなる結果を生み出すか、興味深い一戦となりそうだ。
大分は前節の千葉と対戦し、89分に為田大貴が同点弾を叩き出すも、その1分後に追加点を許し1−2で敗れた。今季2度目の連敗を喫したが、試合内容は良く、為田が「今年一番良い状態にある」と語ったのは負け惜しみでもなく本心だろう。選手のコンディションは良く、走り負けせず、球際も強い。ようやくチームの完成形が見えてきたと言っても過言でない。
具体的な例を挙げるなら、ボールの奪いどころが明確であり、その後のショートカウンターからゴールまでの流れを、選手全員が同じ絵を描けている。前線に位置する林容平、末吉隼也がプレスのスイッチャーとなり、ふたりの動きに中盤、最終ラインが連動してボールを奪い取る。守から攻のギアチェンジがスムーズで、守備の勢いをそのまま攻撃に転換できている。ただ、前節に千葉戦でもシュートが2度ポストに当たったように、フィニッシュの精度が足りない。今週の練習では「個をフォーカスした」と田坂和昭監督が語ったように、サッカーの基本である1対1の局面を意識させた。
古巣との対戦となる林は、「個人的な感情よりチームの勝利を優先したい。岡山に対する思いより、期待して僕を獲ってくれた大分への期待に応えたい」と静かに闘志を燃やせば、為田も「残り試合を考えると、この試合は落とせない。絶対に勝つという強い気持ちで挑みたい」と岡山戦でも、大仕事をやってのけそうな雰囲気が漂っていた。
岡山は前節の山形戦との上位対決に1−4で敗れ、6試合勝利なしと足踏みが続いている。失速の要因は、試合後に影山雅永監督が語ったように「パワーを出せない」ことに尽きる。18試合無敗を記録したときのように走力とスピードで相手を圧倒していたパワーが感じられない。それがコンディションの問題なのか、見えないプレッシャーが原因なのかは定かでないが、悪い流れを断ち切らなければ、このままズルズルと順位を下げることになる。
澤口雅彦が復帰し、今夏に加入したウーゴがチームにフィットしてきたのはプラスだが、主力選手に負傷者が増えるようだと、戦いはさらに厳しいものとなるだろう。それだけに昇格を争うライバルとの直接対決は、不屈の魂を再燃焼させるためにキッカケになるはずだ。
前回の対戦では1−1と勝点を分けた両者だが、今節は互いに勝点3を奪いにくる激しい試合となりそうだ。「構えるつもりはない。点の取り合いになるかもしれない」と予想する田坂監督。その思いは影山監督も同じはず。スコアレスドローで痛み分けなんて選手もサポーターも望んでいない。派手な撃ち合いは大歓迎。魂のこもったどつき合いを見届けてほしい。
以上
2014.10.24 Reported by 柚野真也
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